フォルクスワーゲン ルポ ▲フォルクスワーゲンのボトムレンジだったルポに追加されたホットグレード「ルポ GTI」。写真はアニバーサリーが販売する2005年式で、車両価格は72万円

今のうちから注目しておきたい「近未来の名車」を探せ

こちらは12月27日発売の雑誌カーセンサーEDGE 2月号に掲載された自動車評論家・永福ランプ(清水草一)さんの人気連載「NEXT EDGE CAR」の、担当編集者から見た「別側面」である。アナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。

なお「NEXT EDGE CAR」というのは、「今現在はまだ名車扱いされていないが、近い将来、中古車マーケットで名車または名品と呼ばれることになるだろうモデルを探そうじゃないか」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。

で、カーセンサーEDGE 2月号の同連載で取り上げた中古車は、2005年式のフォルクスワーゲン ルポ GTI。走行10.6万kmの(それしかないので当然ながら)6MTで、車両価格は72万円。この個体およびルポ GTIという車について、いささかの考察を加えてみよう。

まずはフォルクスワーゲン ルポ GTIという車のそもそもについて。

フォルクスワーゲン ルポは、日本へは2001年に上陸した当時のフォルクスワーゲンのボトムレンジ。本国では1.2L 3気筒ディーゼルエンジンを搭載した「3リッターモデル」(100kmをわずか3Lの燃料で走る)が話題となったが、日本にまず正規輸入されたのは1.4L直4エンジン+4速ATという、なんというかこう普通のグレードだった。

しかし、約2年後の2003年5月、満を持して(?)日本市場に投入されたのが「ルポ GTI」だ。

小さなボディに搭載されたエンジンは、ノーマル比50psアップの1.6L直4DOHC(125ps/6500rpm、15.5kg・m/3000rpm)で、トランスミッションは軽く前述したとおり6MTのみ。
 

フォルクスワーゲン ルポ▲こちらがルポ GTiに搭載された1.6L直4DOHCエンジン

エンジンの高出力化だけでなくボディの軽量化も施され、フロントエンジンフードとドア、フェンダー部分にはアルミ素材を採用。ドアで30%、エンジンフードで40%の軽量化(いずれもベースモデル比)を達成している。だが、強度と衝突安全性はベースモデルと変わらないということだった。

インテリアはスポーツシートを採用した他、各所にレザーをあしらい、いわゆるスポーティなイメージを強く演出している。新車時価格は216万円だった。

2020年12月下旬時点での中古車流通量は全国21台で、相場は車両価格で40万~120万円といったところ。

この「21台」というのは、少ないように感じられるかもしれないが、500台限定の比較的希少で特殊なモデルであったことから考えると、「意外と多いな(というか、少なくはないな)」というのが筆者の印象である。
 

フォルクスワーゲン ルポ▲ホールド性の高いスポーツシートが装着される
フォルクスワーゲン ルポ▲センター出しのマフラーは、社外品ではなくまぎれもない純正品である

「200万円以上」まで上がっても不思議はないのだが?

希少なスポーティモデルであるにも関わらず、相場が40万~120万円ほどというのは、近頃の「ちょっと古い車ブーム」の中にあってはいかにもお安い。

もっとこう「200万~300万円」ぐらいのゾーンまで高騰してしまってもおかしくない“銘柄”だと思うのだが、ルポ GTIの相場はなぜ、この程度のプチ高騰(というほどでもない微妙な値上がり)に収まっているのだろうか。

走りとかがイマイチだから?

もちろんそんなことはない。車両重量わずか1010kgの小さなボディにけっこう強力な1.6L DOHCエンジンを詰め込み、なおかつそれを6MTで操るのだからして、「楽しくないわけがない」というのがこの車である。

乗り心地とかがイマイチだから?

それも特にはなく、フォルクスワーゲン ルポはまあまあ快適な車でもある。もちろんショートホイールベースゆえの限界で、前後に揺れる「ピッチング」はそれなりにあるのだが、「不快でたまらん!」というほどでは決してない。ハーシュネス(路面の突起や段差などを通過する際に生じる振動と音)もしっかり抑えられている。

……もしかしたら、こう見えて実は走りがつまらないから?

それも、ない。まあドイツ車ゆえに(そしてもともと安定志向が強いフォルクスワーゲンゆえに)イタリアやフランスの同種のホットハッチと比べれば、「安定方向」に振られた乗り味ではある。しかし、動きはやはり峻烈であり、そして素直でもある。要するに「楽しい車」なのだ。

やっぱり結論としては「壊れやすいから」ということ?

それも、筆者が知る限りでは特にない。もちろん15年前級の車ゆえ、消耗部品の劣化に伴う不具合は当然ながら発生する可能性はあるが、だからといって「もう壊れまくって嫌になる!」という類の車ではないのが、フォルクスワーゲン ルポ GTIのいいところである。
 

フォルクスワーゲン ルポ▲取材車両の内装はパネルのひび割れもなく綺麗なものだった
フォルクスワーゲン ルポ▲常に触れるシフトノブは若干擦れているもののボロではない

まぁ相場の理由はどうでもいい。気になる人は早めの行動を!

であるならばなぜ、ルポ GTIの相場は高騰しないのか?

答えは「わからない」である。

普通に考えれば、「ちょっと古い車ブーム」に乗って200万円級まで相場が上がっても何ら不思議はない車と思われるのだが、なぜか知らねどフォルクスワーゲン ルポ GTIは、この取材車両のように80万円前後か、あるいはかなり好条件な個体でも「100万円ちょい」ぐらいの車両価格にて探すことができる

その理由は、先ほど申し上げたとおり(筆者には)不明であるわけだが、まあ不明でもいいのかもしれない。

なぜならば、大切なのは、何らかの車種の相場動向をアナリストのように観察することではなく、人生のプレーヤーとして「それを楽しむこと」であるはずだからだ。

であるならば、まだ高騰していないフォルクスワーゲン ルポ GTIの現在の中古車相場は、この種の車を好む各位にとっては「歓迎すべき事態」以上でも以下でもない。

もちろんご興味のない方に無理強いするつもりなど皆無だが、ご興味があるならば、フォルクスワーゲン ルポ GTIという車はそこそこ早めにチェックするべき1台である。

今後、何かの拍子に「やっぱり高騰しちゃいました」なんてことになる可能性がないとは誰も断言できない、希少な佳作であるからだ。
 

フォルクスワーゲン ルポ▲いずれこのエンブレムを装着したルポが遠い存在になる前に検討しておきたい
文/伊達軍曹、写真/大子香山

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伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。