トヨタ クラシック▲トヨタの市販車生産60年を記念して開発されたクラシック。自動車黎明期の雰囲気を現代に蘇らせたモデルです

レトロな雰囲気に溢れるクラシックのベース車両はピックアップトラック!?

パオやフィガロなど、1980年代後半から1990年代前半にかけ日産が相次いで発売した、パイクカーシリーズが空前のヒットを記録したのを覚えている人も多いはず。

パイクカーとは、既存車をベースにデザインを大胆に変更したモデルのこと。その多くは、ノスタルジーさを感じさせるレトロなデザインを採用していました。

最後に登場した日産のパイクカーは、1994年デビューのコンパクトSUV、ラシーン。その後、大メーカーが作るパイクカーブームは収束したかに見えました。

ところが1996年、トヨタがある企画を立て大きな話題に。それがトヨタ市販車生産60年を記念して開発された、トヨタ クラシックというモデルの登場でした。

そんなクラシックの気になる現在の中古車事情をお届けしますが、その前に、そもそもどんなモデルだったのか、振り返ってみましょう。

トヨタ クラシック▲クラシックがモチーフにしたトヨダ AA型乗用車。1936年(昭和11年)に登場したトヨタ初の量産乗用車です

クラシックは、トヨタ初の量産乗用車となった1936年デビューのトヨダ AA型乗用車(当時は豊田自動織機製造所という社名で、その中の自動車部が製造。そのためトヨタではなくトヨダとなっているのです)をモチーフに開発。

開発・生産は、トヨタの特装車部門で救急車や道路パトロールカーなどを製造するトヨタテクノクラフト(現トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)が担当しました。

製造に関わったのは同社の熟練職人。クラシックはわずか100台の限定生産だったこともあり、製造工程の多くが手作業だったといいます。価格は800万円と、当時のトヨタとしてはかなり高額だったのもうなずけます。

トヨタ クラシック▲ボディサイズは全長4885×全幅1735×全高1650mm。駆動方式はFRになります

ボディシルエットやグリル、ライト、バンパーなどはAA型乗用車の雰囲気を忠実に再現。大きく異なるのはドア形状。AA型乗用車が観音開きなのに対し、クラシックはベーシックなヒンジ式の4ドアになります。

ボディカラーは、クラシックな雰囲気を感じさせる黒と濃赤の2トーンカラーで鮮やかな印象に。濃い色を組み合わせたことで、気品も感じさせてくれます。

インテリアは、木目調のインパネやドアトリムと赤い本革シートが高貴な雰囲気。ステアリングは、ナルディのウッドステアリングが採用されました。

トヨタ クラシック▲ナルディのウッドステアリングが意外とスポーティ? トランスミッションは4AT

ところで、冒頭でパイクカー=既存車をベースに、デザインを大胆に変更したモデルと書きましたが、みなさんはクラシックのベースとなったモデルがわかりますか?

クラシックのベースモデルは、1988年から1997年まで製造された5代目ハイラックスのダブルキャブ。なんとピックアップトラックをベースに開発しているんです!

ハイラックスをベースモデルとして選んだ理由は「AA型乗用車と寸法的に似通っていたから」(トヨタ自動車75年史より」とのことですが、トラックの面影が一切ない形でこれだけきれいなボディを作り上げたのは、見事としか言いようがありません。

トヨタ クラシック▲おもしろいのはトランクスペース。フタを開けると階段上の構造に。このあたりはフレーム構造の名残でしょうか。奥行きはかなり長め

搭載エンジンは、ハイラックスにも搭載された2L直4OHVで、最高出力は97ps、最大トルクは16.3kg・mとなります。

中古車流通量はごくわずかだがキレイな個体が目立つクラシック

2020年11月8日現在、トヨタ クラシックの中古車は6台流通。そのうち1台は完全受注生産だったTCピックアップ(クラシックの顔でピックアップトラック形状のままにした激レアモデル)だったので、実質的には5台の中古車が流通していることになります。

24年も前にわずか100台だけ生産されたモデルが、現在どれほど現存しているか不明ですが、5台という数は決して少ないというわけではないでしょう。

走行距離は5万km未満のものが3台、残りは6.5万km、9.6万kmでした。

価格帯は228.7万~320万円。年式を考えると、希少性ゆえのプレミア相場と言えるでしょう。走行距離は価格に大きな影響を及ぼしていないようです。

トヨタ クラシック
トヨタ クラシック▲発売当時のインテリア写真。24年経過した現在でもわりときれいな状態で残っているものがあります

個別の中古車の写真を見てみると、年式なりのヤレはあるものの、全体的にはキレイなものばかり。

とくに、赤いシートが傷んでいる雰囲気があまりないことに驚きます。このような高級モデルがゆえに、丁寧に扱われてきたのでしょう。ただ、10万km近く走っているものは運転席に使用感がありました。

元々の生産台数が少ないため、今後中古車の流通量が増えることは想定しづらく、年式を考えるとむしろ減っていくのは間違いないでしょう。そうなると、今以上のプレミア相場になる可能性も否定できません。

このスタイルに惚れ込んだなら、選択肢があるうちに購入するのがオススメですよ!

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トヨタ クラシック(初代)×全国
文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/トヨタ

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL