日産 リーフ▲総額50万円以下の個体も存在する日産 リーフ。その価格を魅力的に感じる人も多いでしょう。ですが、買っても大丈夫なのか考えてみました

ちょっとした軽自動車並! 総額50万円以下で買える電気自動車の日産 リーフ

100%電気自動車として2010年12月に販売が開始された日産 リーフ。気づけば登場してまもなく10年ということで、時間の流れの早さに驚きを隠せません。

そんな初代リーフの中古車は、総額50万円以下の物件が20台程流通するようになってきました。

新車当時の価格が400万円クラスだった車両としては、異例とも言えるほどの値落ちっぷりです。

時代の最先端の自動車で、力強い走りと高い静粛性をもつ電気自動車が、ちょっとした軽自動車並みの値段で買えてしまうので、気になっている人も多いと思います。

しかし、安い物には何かあるのでは? と、電気自動車に興味はあるものの、手を出しにくいと思う人が多いでしょう。

果たして総額50万円以下のリーフは買って大丈夫なのでしょうか? 掲載されている物件の状態を考慮して、どのように使えるのか考えてみました。
 

日産 リーフ▲時代の最先端ともいえる電気自動車ですが意外と手ごろな価格で手に入ります

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価格の安さはバッテリーが劣化しているから

まず、値落ちの大きな理由について。ずばりそれは駆動用バッテリーの劣化。

現行モデルは、大容量化など改良を繰り返され、劣化の速度はかなり緩やかになったといわれていますが、初期モデルは劣化が進んでいる個体が多いのです。

初代リーフのバッテリーの劣化状態は、メーターに表示されるセグメント数でおおよそ判断することができます。

新車時点では、12セグメント(12メモリ)となっている表示が、バッテリーが劣化するにつれて1セグメントずつ減っていくようになっています。
 

日産 リーフ▲右側の小さいメモリがバッテリーのセグメント数を示しています

駆動用バッテリーの容量の数値化はなかなかに難しく、6セグメントになったから半分の容量になっているとは言い切れません。

ですが、新車時よりも劣化していることは間違いありませんし、航続距離も減少してしまっているのです。

ちなみに、一般的な内燃機関(エンジン)を搭載した車両は、おおむね走行するにつれてエンジンが消耗していくイメージですが、電気自動車のバッテリーはそうとも限りません。

実は、バッテリーに一番負担かかかるのは急速充電を行ったときなのです。

200Vの家庭用充電で充電していた過走行の個体よりも、走行距離は少ないものの日常的に急速充電を使用していた個体の方が、バッテリーの劣化が進んでいる、というのも珍しくない話なのです。

もちろん、内外装やサスペンションなど、エンジンを搭載したモデルと同様の部分は、距離に応じて劣化が進んでいく部分ではありますが、単純に走行距離だけでバッテリーの状態を判断できないのです。
 

日産 リーフ▲サービスエリアやディーラーで見かける急速充電器

万人受けではないが、チョイ乗りで自宅に充電設備を設置できるならあり

では総額50万円以下のリーフはどんなもんなのかチェックしてみると、バッテリー容量が7~9セグメントとなっているものが多く見られます。気になる航続距離は、イメージ的に満充電で60~100km弱程度といったところです。

となると、ファーストカーとしてレジャーなどに使うのはちょっと難しく、万人受けする車ではありません。

ただ、毎日の通勤や買い物、子供の送迎など、決まった短距離しか乗らない、つまり「ちょっとそこまで」的な使い方をする方であれば、まだまだ活用の余地はありそうです。

そしてもうひとつ。自宅に200Vの充電コンセントを設置できるかどうかもポイントになります。

なぜなら、ディーラーなどで急速充電を利用するには、月々4000円(3年長期契約の場合2500円から)の費用がかかる、日産の充電会員であるZESP3に加入しなければなりません。

このプランは、月に無料で充電できる回数に制限があり、1回の充電での航続距離が減少した初代リーフでは、頻繁に充電することになりプラン内では収まりません。

この費用を払うのであれば、そこそこ燃費の良いガソリン車に4000円分燃料を入れた方が、2~3倍ほど走れます。

そのため、総額50万円以下のリーフだと、急速充電器を使うことで割高になってしまうのです。

その点、自宅に充電設備があれば、かかる費用は使用した電気代のみ。リーフの電費が6.0km/kWhだとすると、60km走行するときに消費する電力は6kWhとなります。

日中の1kWh当たりの電気代は、高めに見積もっても30円/kWhほど(深夜割プランなどだと半額ほどになることも)ですから、コストは180円ということになります。

これを実燃費を25km/L程度のガソリン車に置き換えると、ガソリン1Lの価格を現状の全国平均である130円とした場合、60km走るコストは312円ですので、リーフの方が低コストとなります。

充電設備を設置する費用は当然かかります。安くて5万円ほどですが、4年ほどの期間で、電費とガソリン代の差分で元が取れてしまう計算です。

加えて、エンジンを搭載していないため、定期的なオイル交換も不要。メンテナンスのコスト(年に1回交換するとして5000円ほど)も抑えることができるので、実際はもっと早く元を取ることができるでしょう。
 

日産 リーフ▲家庭でできる普通充電は、このコードを使ってコンセントと車体をつなげます
日産 リーフ▲ガソリン車と違いエンジンルームにはインバーターなどが設置されている

選ぶ際は残セグ数を優先! さらに長く乗るなら再生バッテリーへ交換という選択肢も?

総額50万円以下の初代リーフを狙うのであれば、なるべくセグメント数が減少していない個体を狙う、というのがセオリーです。中には9セグメントを残している個体も見つかります。

日々バッテリーは劣化していきますので、永久に乗ることはできませんが、もしそうなったときまだ乗りたいようであれば、バッテリーを交換してしまう手もあります。

しかし、2018年に日産が発表したバッテリー新品交換の費用は、24kWhが65万円、30kWhが80万円、40kWhが82万円と、なかなか気軽にとはいかないお値段です。

ただし、10セグメントまで回復することが約束された再生バッテリー(24kWh)であれば、30万円で交換できます。

また、家庭用の蓄電池的な使用ができるのも魅力のひとつ。一般的な家庭用蓄電池だと、5kWh程度のものでも設置費用も含めると総額で100万円前後の出費となってしまいます。ですが、いくら劣化したとはいえリーフは大容量(新車時は24kWh)のバッテリーを搭載しているのです。

リーフから家庭に電気を供給するにはV2H機器が必要とはなりますが、それを考慮してもいざというときに「走る蓄電池」となる初代リーフは、まだまだ高いポテンシャルを秘めています。

以上、まとめると、決まった距離しか走らない"チョイ乗り"ユーザーで、自宅に"充電設備"を設置できる人であれば、総額50万円以下のリーフという選択はありかもしれません。
 

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文/小鮒康一、写真/篠原晃一、日産
小鮒康一(こぶなこういち)

自動車ライター

小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車は日産 リーフ、初代パルサー、NAロードスター。