総額100万円以下から狙える! 名チューナーの名を冠したホットハッチたち
2020/06/27
コンパクトで小排気量だから運転が楽しくなる名ホットハッチ
かつて自動車メーカーという会社の他に、速さを求めて卓越した技術で市販車をチューニングし、レース界を席巻した人々がいた。
彼らの中にはメーカーが実力を認め、その名を市販車に冠したほど、評価されたエンジニアもいる。
もちろん彼らが手がけた、当時のマシンを今購入するとなれば、結構な予算が必要となる。
しかし今回紹介するのは、メーカーが彼らの業績をたたえ敬意を表して発売した、いずれも小排気量のコンパクトカーだ。
彼らの名前を冠して発売するということは、メーカーが「もし彼らがいたらきっとこれくらいはしてくれるはず」と考え手を加え、その名に恥じない性能を備えたホットハッチだということ。
それゆえ新車時には人気も価格も高かったが、いよいよ総額100万円以下で狙えるようになってきたモデルが登場。
今回は、そんな名チューナーの名が冠されて現代によみがえった特別なホットハッチを紹介しよう。
“魔術師”ゴルディーニの名車を彷彿させるスペシャルモデル
ルノー トゥインゴ ゴルディーニ R.S.(2代目)
チューニングの魔術師と呼ばれたアメデ・ゴルディーニ。
1899年にイタリアで生まれ、1925年にフランスへ移住するとメカニック兼レーシングドライバーとして数々のレースで名声を高めた。
1958年からルノーと契約し、彼の名を広めた8(ユイット)ゴルディーニをはじめ、約20年間に20万台に及ぶルノーの高性能モデルを送り出した、伝説のチューナーだ。
そんなゴルディーニの名を冠したモデルが日本で復活したのは2011年(フランスでは2009年)。
それも大排気量モデルではなく、最も小さなトゥインゴが選ばれた。そのベースとなったのは、車名に「R.S.」と入るように、サーキット仕様シャシー(エンジンや足回りなど)をもつルノースポールだ。
2008年にデビューしたトゥインゴは、当初1.2Lと1.2Lターボ車のみ。
2009年に追加されたルノースポールは、1つ上のクラスのルーテシアに使われている1.6Lエンジンを搭載した。
もちろん最高出力が134psに、最大トルクは160N・mに高められるなど、エンジンには専用チューンが施されている。
また前後トレッドは60mm拡大され、足回りやブレーキも専用品だ。
ゴルディーニ R.S.はこのルノースポールとスペックは同じで、エクステリアやインテリアがゴルディーニ R.S.専用となるスペシャルモデルだ。
2011年の登場時と、2012年のマイナーチェンジ後とも車両本体価格は245万円。
原稿執筆時点(2020年6月25日)で12台見つかり、支払総額約80万円から探すことができる。
▼検索条件
ルノー トゥインゴ(2代目)×ゴルディーニ R.S×全国BMW車のMに対して、ミニのジョン・クーパー・ワークス
ミニ ミニ ジョン・クーパー・ワークス(2代目)/ジョン・クーパー・ワークス クラブマン(初代)
F1やインディ500といったモーターレースの最高峰で幾度も頂点を極めた名コンストラクター(マシンの製造者)が、ジョン・クーパーだ。
彼がF1やインディ500の次に目を付けたのがミニ。
この車のポテンシャルに気づいた彼はメーカーにかけあって「ミニ クーパー」という高性能モデルを開発することに成功する。
そのレースカーでモンテカルロラリーを3度も制覇し、ミニという名を世界に広めることになった。
そんな彼の意思を受け継いだ息子のマイク・クーパーとBMWが手を組み、いわば現代版ミニ クーパーとして開発したのが「ジョン・クーパー・ワークス」だ。
初代BMW製ミニでは当初オプションのチューニングキットのみだったが、モデル末期にこのチューニングキットを最初から装着したモデルがカタログにラインナップされ、今回紹介する2代目以降は正式にジョン・クーパー・ワークスというグレードとなっている。
BMW車の高性能車がMモデルで、ミニの高性能車はジョン・クーパー・ワークスというわけだ。
2007年1月に登場した2代目ミニに、ジョン・クーパー・ワークスが加わったのは翌2008年9月。
クーパーSの1.6Lターボエンジンは、最高出力175ps/最大トルク240N・mから211ps/260N・mへと高められた。
このエンジンは、当時のミニのワンメークレースで使用されるエンジンとまったく同じだという。
0→100km/h 加速6.5 秒、最高速度は238km/hに達する。
2008年の新車時車両本体価格は363万円。
ベースのミニのボディバリエーションが増えるに従い、ジョン・クーパー・ワークスモデルも増えていったが、原稿執筆時点ではミニとクラブマンが支払総額100万円以下から狙えるようになった。
ちなみに2011年9月に登場したクーペは約170万円からとなり、2009年6月に登場したコンバーチブルと2012年1月に登場したロードスターはほとんど台数がない。
また、ニュルブルクリンク北コースでミニ最速記録をたたき出したモデルの市販バージョン(世界2000台限定、うち日本は200台)のジョン・クーパー・ワークスGPは約250万円からとなる。
▼検索条件
ミニ ミニ(2代目)×ジョン・クーパー・ワークス×全国▼検索条件
ミニ ミニクラブマン(初代)×ジョン・クーパー・ワークス×全国ヌオーバ500同様、現代のチンクエチェントにもサソリが潜む
アバルト 500(初代)
数々のレースで勝利をあげてきた名コンストラクターのカール・アバルト。
彼の名を一躍広めたのは、フィアット 600をチューニングして排気量を982ccまでにアップさせたアバルト 1000ベルリーナだろう。
次いで登場したフィアット 500(ヌオーバ500)も彼の手にかかると、排気量は479ccのままだが、最高出力は約1.5倍となり、足回りが固められたアバルト 500ベルリーナとなった。
その後も排気量を拡大したアバルト 595、アバルト 695へと続いていく。
手頃な価格のアバルト 500は、当時多くの若者にレース車両として選ばれた。
そうした販売効果も見込んでだろう、レースでアバルト車が優勝するたびにフィアットはアバルトに報酬を出したという。
1971年にはフィアットの傘下に入り、同社のモータースポーツ部門を担うようになった。
ちなみに、同じくフィアット傘下となったランチアのデルタをベースにWRC(世界ラリー選手権)を席巻するなど、ラリーに度々参戦している。
ヌオーバ500の後継である現行型500が2008年にデビューすると、当然のごとく2009年4月にはアバルト500が登場した。
ノーマルの1.4L 16V スポーツが最高出力100ps/最大トルク131N・mのところ、アバルト500はIHI製ターボを備えて最高出力135ps/最大トルク180N・mにまで高めた。
さらに、インパネにある「SPORT」ボタンを押せばオーバーブースト機能が働き、最大トルクが206N・mにまで向上する。
もちろん足回りががっしり固められた他、トルクトランスファーコントロールという、激しいコーナリング時に内外輪差を解消する機能も備わる。
その後、ヌオーバ500時代同様にアバルト 595や695が登場している。
アバルト 500のデビュー時の車両本体価格は295万円。
原稿執筆時点(2020年6月25日)で63台以上見つかり、最安値はギリギリ支払総額100万円を切っている。
▼検索条件
アバルト 500(初代)×全国ライター
ぴえいる
『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。
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