パワープラグ搭載の日産 e-NV200は、リーフよりも使いやすい“走る蓄電池”だ
2020/06/06
“走る蓄電池”はリーフだけじゃない!
日産の電気自動車といえば、真っ先に頭に浮かぶのはやはりリーフでしょう。
世界で最も売れている量販電気自動車としても知られており、2代目となった現行型モデルはより大容量のバッテリーを搭載し、有事の際は蓄電池としても使える点でも注目されていますよね。
しかし、リーフを蓄電池として使う場合、リーフと家をつなぐ「V2H機器」が必須。バッテリーから電気を取り出して使うことができません。
それどころか、キャンプなどでちょっとした電化製品を使おうと思ってもアクセサリーコンセントさえ用意されておらず、せっかくの電気を使うことができないのです。
そんな、様々なシーンでEVのバッテリーから給電したい! と考える人にオススメしたいのが、今回紹介する日産 e-NV200なのです。
もしかしたらあまり耳馴染みがない車種かもしれませんが、e-NV200は、日産の小型ワンボックスバン/ワゴンのNV200バネットをベースに100パーセント電気自動車化したモデル。
日本での公式発表は2014年でしたが、それよりもずっと前の2011年から世界各地で実証実験を積み重ね、満を持してリリースされた車種だったのです。
※「V2H」とは「Vehicle to Home」の略。電気自動車のバッテリーに蓄えた電気を家で使う仕組みのこと、およびその総称
残念ながら日本での販売は、2019年10月をもってヒッソリと終了してしまいましたが、グローバルではまだまだ現役。
その一番の特徴と言えるのが、パワープラグと呼ばれるAC100V/1500Wのコンセント2個が標準(バンVX系を除く)で備わっているということ。
このパワープラグを使えば、1000Wで最大8時間(初期型)~15時間(後期型)もの長時間にわたり、電化製品を使うことができるのです。
もちろん、出先では帰りのバッテリーは残しておかなければなりませんが、パワープラグが自動停止するバッテリー残量を任意で設定できるので、使いすぎてしまうという心配もありません。
また、ラインナップも商用登録(バン)の2人乗り、5人乗り、乗用登録(ワゴン)の5人乗り、7人乗りと幅広いため、ニーズに合わせて選べるのもうれしいところでしょう。
ちなみに、ベースとなったNV200バネットは5ナンバーサイズ内に収まっていますが、3ナンバーサイズのリーフのコンポーネントを移植したe-NV200は、全幅が3ナンバーサイズとなっています。
そのため、トレッドも広がって安定感のある走りと見た目を実現していますが、商用車モデルは1ナンバー登録となることで、高速道路の料金が上がってしまうというデメリットもあるのでご注意を。
気になる航続距離とバッテリー容量は?
電気自動車でやはり気になるのは、航続距離とバッテリーの容量でしょう。
e-NV200のデビューは2014年で、時期的には初代リーフの前期型と同世代。
ということで、e-NV200に搭載されたバッテリーとモーターは、初代リーフの前期型と同じく24kWhバッテリーでした。
このモーターが発生するトルクは254N・mで、ガソリンエンジンの2.5Lに値する力強さ。
元々1.6Lガソリンエンジンを搭載するNV200バネットと比べても、走りのポテンシャルの高さは言うまでもありません。
その一方で、リーフと同じバッテリーを大きく重たいNV200のボディに搭載したことで、カタログ上の航続距離は185~190kmと少々物足りない印象があるのも事実。
しかし、e-NV200には、初代および2代目のリーフには備わらない装備があったのです!(ワゴン7人乗りを除く)
それが「バッテリークーラー」というもの。
電気自動車のバッテリーであるリチウムイオン電池は、スマホのバッテリーと同じく放電、充電を繰り返すと発熱する特性をもっています。
そしてバッテリーが熱をもった状態だと、劣化が早まるだけでなく、効率も極端に悪化してしまうのです。
それを防ぐために、e-NV200には車内を冷やすエアコンと同じく、冷媒を用いて充電中のバッテリーを冷やすバッテリークーラーが備わっているというワケ。
これは、負荷の高い急速充電を頻繁にするであろう、働く車ならではの配慮と言えるでしょう。
そのため、航続距離が短くて頻繁に急速充電をしても、バッテリーの温度上昇が抑えられ、充電効率のアップとバッテリーへのダメージ軽減が図れるのです。
なお、2017年に2代目リーフが発表されたことで、e-NV200も仕様向上が図られ、2018年12月以降のモデルはなんとバッテリーが40kWhと、約1.7倍に!
そして、カタログ値の航続距離は300kmと大きく向上。
ただし、実質1年も販売されなかった計算になるので、中古車市場でのタマ数はほぼ皆無ですが、じっくり探してみる価値はありそうです。
e-NV200の中古車の相場と流通台数は?
e-NV200、実は新車時の価格はバンで約330万~395万円、ワゴンで約445万~480万円というなかなかの高級車(もちろんもろもろの補助金などが出て実際の支払い額は下がっていましたが)。
しかし、原稿執筆時点(2020年6月4日)の中古車価格は、すべて24kWhバッテリー車になりますが、バンが総額でおよそ150万円以下、ワゴンでも総額でおよそ200万円以下と新車時の半額以下で探すことができます。
ただし、掲載台数はバンが8台、ワゴンが17台と圧倒的なタマ数不足は否めません。
e-NV200は一般ユーザーよりも法人ユーザーが圧倒的に多いといわれているので、今後良質な法人ワンオーナー車が市場に出てくる可能性もありますが、欲しい人は定期的にチェックしておいた方がよさそうです。
もし仕事で使うとか、荷室目いっぱいに遊び道具を満載したいという人であればバンでもいいですが、家族を乗せてお出かけしたいというのであれば、ワゴンが圧倒的にオススメ。
ただし、前述したように7人乗りモデルはバッテリークーラーが備わらないので、どうしても3列シートでないとダメという人以外は5人乗りがいいでしょう。
そもそも、e-NV200ワゴンの3列目シートはかなりミニマムですしね。
モーターの豊かなトルクと蓄電池にもなる頼もしさの反面、やや航続距離が心もとないe-NV200は万人にオススメできる車種ではありません。
しかし、同年式の2Lクラスミニバンと比べて非常に手ごろな価格という点などもあって、バシっとハマる人にはこの上ない1台となってくれそうですね。
果たしてあなたのライフスタイルにはマッチするでしょうか?
▼検索条件
日産 e-NV200(初代)×5人乗り×全国▼検索条件
日産 e-NV200(初代)×7人乗り×全国▼検索条件
日産 e-NV200バン(初代)×2人乗り×全国▼検索条件
日産 e-NV200バン(初代)×5人乗り×全国自動車ライター
小鮒康一(フナタン)
スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車は日産 リーフ、初代パルサー、NAロードスター。
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