三菱 トライトン▲「ブーレイ顔」と呼ばれた当時の三菱のフロントマスクで乗用車的なルックスのトライトン

タイから逆輸入されたトライトン

三菱トライトンは、2006年に日本デビューしたピックアップトラックだった。かつては商用車として人気のあったカテゴリーだが、日本では1BOXカー、軽トラック、ミニバンなどの進化によってか、ピックアップトラック需要が衰退していた中の投入だったので、非常に驚いた。

トライトンは、タイにある三菱の現地法人が生産していた。2005年末からヨーロッパへの輸出を皮切りにオーストラリア、中近東、中南米、アジア諸国と世界約140ヵ国で展開される、三菱の世界戦略車として開発された。

乗用車並みの快適な乗り心地と、直接燃料噴射式コモンレールシステムを採用した新開発ディーゼルエンジンによる力強い走りが売りだった。

だが、日本に導入されたのは3.5L V6ガソリンエンジンだった。組み合わせられたトランスミッションは4速ATのみで、ちょっとガッカリしてしまったことを覚えている。

三菱 トライトン▲弧を描くように切り取られたリアドア&荷台がスタイリッシュなエクステリアは、トラックにありがちな仕事くささがなく新鮮

珍しいダブルキャブ仕様のピックアップトラック

トライトンには4枚のドアと2列のシートをもつ「ダブルキャブ」、2枚ドア&1列シートの「シングルキャブ」、そして2枚ドア&1列シートだがシングルよりもややキャビン後部が広い「クラブキャブ」の3つのボディタイプが用意されていた。

ただ、日本導入モデルはダブルキャブ(5人乗り)のみだった。

全長4995mm×全幅1800mm×全高1780mmと日本車“らしからぬ”大きさは、威風堂々としていた。最高出力こそ178psとそこそこな響きだが、最大トルクは30.1kg-mを発揮する実用派。

サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアはリーフスプリングを採用。イージーセレクト4WDと呼ばれる四輪駆動システムを搭載し、通常は後輪駆動として燃費を稼ぎ、必要に応じて駆動力を前輪に配分するものだった。

最大の特徴であるカーゴベッドは、横幅が1080~1470mm、奥行きが1325mm。ホイールハウスをできる限り小さくすることで、広い床面積を確保している。また、カーゴ内には4ヵ所のカーゴベッドフックが付いており、荷物の固定が可能。

諸外国では“働く車”としての需要が高いピックアップトラックだが、日本でのトライトンは「マリンスポーツやウィンタースポーツなど、アウトドアスポーツを好むお客様」(プレスリリース)へ訴求していたようだ。

三菱 トライトン▲荷台は奥行き1325mm、横幅1470mm(タイヤハウス部は1080mm)

日本ではあまり人気がでなかった

そんなトライトンも絶版となってから9年が経過し、そもそも日本での売れ行きはイマイチだった。

後席より広い荷台であるためボンネットトラックと見なされ、法規上は中型車で毎年車検というデメリットもある。

原稿執筆時点( 2020年3月16日)では、カーセンサーnetに掲載されているものはたったの10台。

平均中古車価格は167万7000円だが、安いものは100万円ほどで狙える。トライトンの中古車価格は年式よりも、単純に走行距離に比例しているように見受けられる。

そもそも働く車として設計されているタフな車ゆえに、あまり走行距離にとらわれることなく、安いものをバンバン使い倒すイメージでいかがだろう?

ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!

三菱 トライトン▲トラックというより乗用車感覚のインパネ
三菱 トライトン▲リアウインドウ(リアドアウインドウではなく、後端のウインドウ)が開閉式。開けて運転してしまえば、車内の換気はもちろん開放感を味わえる
文/古賀貴司(自動車王国)、写真/三菱

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三菱 トライトン(2006年8月~2011年7月生産モデル)×全国
古賀貴司(こがたかし)

自動車ライター

古賀貴司(自動車王国)

自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。