トヨタ FJクルーザー▲北米トヨタからの黒船・FJクルーザー。一部から熱い支持を得ていたが、残念ながら1代限りで販売は終了した。とはいえ中古車で今もなお人気の1台だ

手頃な価格になった中古車として見ると魅力が倍増!?

年間売上高が小国の国家予算並みという、世界的大企業トヨタ。

もちろんここまでの道のりは決して平坦ではなく、当然トライ&エラーを繰り返すことで成長し続けている。

その道のりの中で、日本を代表するようなモデルも多く生まれてきた。

例えば、今もベーシックカーとして絶対的な地位を築いているカローラは、1966年の登場以来モデルチェンジを繰り返し、現行型の12代目まで続く人気長寿モデルだ。

一方で、登場してから1代限りで絶版となってしまった、いわば「エラー」モデルも存在する。

1代で終わった理由は「時代的に早すぎた」とか、逆に「遅かった」とか……。

まあ、それぞれ事情があるのだが、その中身をもう一度吟味してみれば「この価格(中古車)ならいいかも」と思える、エラーで片付けるにはあまりにも惜しいモデルもあるのだ。

今回はその中から、中古車としておいしい時期を迎える2015年式以降の物件も狙える、「エラーとするには惜しい! 残念ながら1代限りで販売を終えた車たち」を紹介したい。

発売当時には気づかなかった魅力を、再発見できるはずだ!

パノラマオープンドアを備えた2Lクラスミニバン
トヨタ アイシス(2004年9月~2017年12月)

トヨタ アイシス▲ステアリングを切った先に障害物があると警告音が鳴る「ステアリング感応式クリアランスソナー」という世界初の技術も用意された。2009年、2012年、2016年と燃費を向上させている(2016年は1.8L車のみ)

現在ではダイハツ タントにしか採用されていないが、助手席側のBピラーがなく、後席スライドドアを開けると幅1890mmという大開口が現れる「パノラマオープンドア」が備わっている。

抜群の乗降性をもつにも関わらず、後継となるミニバンが出ることもなく販売が終了したアイシス。

とはいえ約13年間も作り続けられた長寿モデルだ。

確かに背の高い箱形ミニバンが主流の現在、たとえ開口幅が1890mmあっても車高が1640mmでは同社のノア(1825mm)と比べて見劣りし、室内があまり広く感じられない。

しかし車高ではなく室内高を見れば、アイシスは1315mm。ノアの1400mmやタントの1370mmと比べて、実はさほど差はない。つまり「中は意外と広い」のだ。

また3列目シートは床下格納式で、畳めばフラットなラゲージが広がる。

さらに助手席を前方向に畳み、2列目座面を跳ね上げてシートを下げれば、2列目に荷物を載せやすいなど、使い勝手もいい。

1.8Lと2LにCVTが組みあわされ、4WDも用意された。デビュー時の車両本体価格は178万5000~273万円。

初期型の中古車なら、原稿執筆時点(2020年2月19日)で、支払総額20万円以下から見つけることができる。

2010年式以降&走行距離5万kmで絞っても支払総額約60万円から見つかり、2015年式でも約90万円で狙える。

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人気のライズ&ロッキー同様コンパクトなSUV
トヨタ ラッシュ(2006年1月~2016年3月)

トヨタ ラッシュ▲2013年の一部改良で5速MT車がラインナップから外れたが、4WD車にVSC&TRCが標準装備となった(それまではオプション)。後席を倒せばラゲージ容量が755Lまで拡大。2013年に4WD車はVSC&TRCが標準装備となった(それまではオプション)

正確にはトヨタ製ではなく、ダイハツ ビーゴのトヨタ版のラッシュ。現在のトヨタ ライズ/ダイハツ ロッキーと同じ関係だ。

サイズもライズ&ロッキーとほぼ同じ(全長3995mm×全幅1695mm×1705mm)で、2WDとフルタイム4WDがあるのも同じ。

ライズ&ロッキーの1Lターボより少し大きい1.5Lエンジンを搭載する。

だったらライズ&ロッキーが実質後継モデルじゃない? と思うだろうが、実はFFのライズ&ロッキーと違いラッシュ&ビーゴの2WDはFR。

つまりスズキ ジムニーやトヨタ ランドクルーザーといった本格派と同様、マニアなクロカン四駆ファンの喉元をくすぐるようなFRベースの4WDなのだ。

インパネのスイッチで前後輪を直結すれば、ぬかるみなどから脱出しやすくなる。

ラゲージ容量はラッシュ&ビーゴが380L、ライズ&ロッキーは369L(デッキボード下を含むと4WD車で407L)と遜色ない。シートも撥水加工されている。

組み合わされるトランスミッションは4速ATの他、4WD車には5速MTも用意されていた。

デビュー時の車両本体価格は159万6000~195万3000円。

中古車なら、原稿執筆時点で支払総額40万円以下から狙える。

2010年式以降&走行距離5万kmで絞っても支払総額約70万円から、2015年式で約110万円から見つけられる。

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アメリカ市場向けの貴重な箱形ハッチバックは走りもいい
トヨタ カローラルミオン(2007年10月~2015年12月)

トヨタ カローラルミオン▲2009年、2013年の一部改良で燃費が向上。2013年にはVSC&TRCが標準装備となった(それまではオプション)。ラゲージ容量は307Lと見た目ほど広くはないが、リアシート下など収納スペースがたくさん用意されている

燃費の向上を考えればボディが流線型になるのは分かるけれど、でも角張った車はやっぱりかっこいい! と思う人は多いはず。

現行型スズキ ジムニーがこれだけ売れているのもうなずける。とはいえジムニーは人気車ゆえ今も納車待ち期間がハンパない。

そんな人にこのカローラルミオン、「あれ、結構イケるじゃん!?」と映るのではないだろうか。

そもそもルミオン、かつてトヨタが北米で展開していた「サイオン」ブランドで販売されていたサイオンxBの2代目だ。

サイオンは主にアメリカの若年層向けブランドで、初代xBは、初代bBとして日本でも人気を博した。

カローラの名前がついているけれど、走りに定評のあるオーリスがベースになっている。

全長4210mm×全幅1760mm×全高1630mmと全高の割に幅広で、オーリスの足回りをもつこともあり、安定した乗り心地も魅力のひとつだ。

1.5Lと1.8Lエンジンがあり、どちらもCVTが組み合わされる。4WDも用意された。

デビュー時の車両本体価格は168万~231万円。

原稿執筆時点で支払総額20万円以下から狙える。

2010年式以降&走行距離5万kmで絞っても支払総額約60万円から、2015年式で約80万円からと、お手頃価格で希少な箱形ハッチバックが手に入る。

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“軽”以外のシティコミューターとしての選択肢
トヨタ iQ(2008年11月~2016年3月)

トヨタ IQ▲全長は2985mmだが全幅は1680mmあることもあって、意外と乗り心地がいい。後席は1人なら十分乗れるから、普段は荷物置き場に、たまに人を駅まで送るときに使える。コンパクトボディゆえ世界で初めてリアウインドウにもエアバッグを装備

2001年にスマート フォーツーが日本にやってきて、2007年には2代目にフルモデルチェンジ。

次世代シティコミューターが注目を集める中、トヨタが放ったのが全長3m以下なのに4人乗れるiQだ。

同じく3m以下のフォーツーは文字どおり2名しか乗れないのに対し、緻密なパッケージングで4人乗りを実現した意欲作。

日本だけでなくヨーロッパでも販売された。

タイヤを四隅においやり、燃料タンクをフラットにして床下に収納するなど、涙ぐましい努力で大人3人+子供1人(運転席後ろスペース)を実現。

当初は1LエンジンにCVTの組みあわせのみだったが、2009年に1.3Lモデルが、2010年に1.3Lの6速MT車が追加された。

ちなみにGAZOO Racing tuned by MN(6MT)などスポーツモデルの限定車や、アストンマーティンがiQをベースに仕立てたシグネットなどの派生モデルもある。

「4人乗るならハイト系軽ワゴンの方が広い」ということもあり、結局軽自動車に勝てなかった感がある。

とはいえ今は「おひとりさま」が増加中の時代。黄色ではなく白色ナンバーで走りたいという人にとってはおしゃれな選択肢のひとつではないだろうか。

デビュー時の車両本体価格は140万~160万円。

原稿執筆時点で支払総額20万円以下から、2010年式以降&走行距離5万kmで絞っても支払総額約40万円からと、魅力的な価格で狙える。

2015年式以降は台数が少なく、総額100万円以上となる。

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高級車らしい仕様と先進機能がフタケタ万円で狙える
トヨタ SAI(2009年12月~2017年11月)

トヨタ SAI▲当時は認められていなかったので完全停止はしないが、それでも前方衝突の危険を察知すると自動で減速する機能が用意されていた。他にもアダプティブクルーズコントロールやレーンキーピングアシスト機能も用意された(いずれも一部グレードに標準装備)

プリウスに続く2台目のハイブリッドカーとして登場したのがSAIだ。

プリウスより高級なセダンという位置付けで、当時のプリウス(3代目)が1.8L+モーターなのに対しSAIは2.4L+モーターとなり、システム全体での最高出力は190psだ。

デビュー時のサイズは全長4610mm×全幅1770mm×全高1500mm。

全幅が1.7m超の3ナンバーボディだが、当時のクラウン(13代目)より全長の短い、いわば「小さな高級車」という位置付けだった。

SAI以前にプログレで狙った「小さな高級車」市場を、SAIで再び挑戦したというわけだ。

当然、カーナビゲーションやエアコンなどを手元のコマンドで操作できる機能や、本革シート、電動パワーシートなど高級車らしい装備が充実。

だがSUV人気が高まるのに比例してセダン人気は低迷。

2013年のマイナーチェンジで一気に若々しいスタイルを得たが、結局時代の波には勝てず2017年に生産を終了した。

デビュー時の車両本体価格は338万~426万円。

原稿執筆時点で支払総額60万円以下から、2010年式以降&走行距離5万kmで絞っても支払総額約70万円から探せる。

エクステリアデザインが大きく変わったマイナーチェンジ後のモデルは、2015年式と比較的新しめのものでも約130万円から見つけることができる。

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アメリカ生まれの個性派本格オフローダー
トヨタ FJクルーザー(2010年11月~2018年1月)

トヨタ FJクルーザー▲専用ホームページから様々なパーツを選んで組みあわせることができた。2012年に一部改良で、砂地や岩石路などでステアリング操作のみでゆっくり進むクロールコントロールをオフロードパッケージに標準装備した

フィアット 500やフォルクスワーゲン ニュービートルなどレトロ系が人気を博していた当時、ランドクルーザープラド(120型)をベースに、FJ40型(1960年登場)のランドクルーザーをイメージしたスタイルで開発されたのがFJクルーザーだ。

といっても最初はアメリカで2006年から販売され、日本では2010年に登場した。

4L V6エンジンに5速ATが組み合わされた。

プラドがベースゆえ本格4WDとしての高い走破性を備えていたが、フルタイム4WDのプラドと異なり、ドライバーの意志によって操れるように、あえて後輪駆動/四輪駆動/ローレンジの四輪駆動をレバーで切り替えるパートタイム4WDとした。

オフロードパッケージ付きはデフロックも標準装備しており、さらに走破性が高い。

ドアは両側とも観音開きで開口部が大きいため、乗り降りしやすいだけでなく、荷物の出し入れがしやすい。

シートには防水・撥水タイプが、フロアやラゲージ床には汚れても洗いやすいラバー調素材が採用されるなど、アウトドアで遊ぶ相棒としての機能も充実している。

デビュー時の車両本体価格は314万~332万円。

今も人気が高く、原稿執筆時点で2012年式の10万km超の物件なら支払総額約170万円から、2015年式以降は約270万円からとなる。

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トヨタ FJクルーザー(初代)×全国
文/ぴえいる、写真/トヨタ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はフィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。