トヨタ ヴィッツ ▲コンパクトカーを代表するモデルのトヨタ ヴィッツ(輸出名ヤリス)。2020年1月にターボエンジンを搭載したGRヤリスが発表されたが、実は過去のヴィッツにも過給機搭載のハイパフォーマンスモデルが存在していました

歴代ヴィッツにも過給機搭載モデルが存在していた

2020年2月にトヨタのコンパクトカー・ヴィッツが、今までの輸出名「ヤリス」に名前を変えてフルモデルチェンジしました。

新世代プラットフォームのTNGAを採用し、上質な乗り心地を実現しています。

そして、先日の東京オートサロン2020でベールを脱いだのが、ラリーの最高峰WRCから生まれたハイパフォーマンスモデルのGRヤリス。

インタークーラーターボで武装した1.6Lエンジンは200kW(272ps)を発生するということで、いやが応でも期待が高まってしまいますね!

トヨタ ヤリス ▲WRCを勝ち抜くために一から開発されたというGRヤリス


とはいえ、およそ400万円という車両価格(ハイパフォーマンス版は450万円超)はなかなか簡単に購入できる金額ではありません。

しかし、実は歴代ヴィッツも、ターボやスーパーチャージャーといった過給機付きのモデルがディーラーで販売されていたのです!

ということで、今回は中古で狙える歴代の過給機器ヴィッツを一気に振り返ってみましょう!

“スタタボ”の再来モデル!?
トヨタ ヴィッツ RSターボ(初代)

トヨタ ヤリス ▲2003年に追加されたRSターボ。搭載される1.5L 直4ターボエンジンは最大出力150ps、最大トルク196N・mを発生します


初代ヴィッツは1999年に登場。

それまでのトヨタのボトムラインを担う車種のひとつだった、スターレットの後継車種として登場しました。

登場の翌年には、スポーティグレードの「RS」が追加されましたが、スターレット時代に存在したターボモデルはなく、パワー的に物足りないという声があったのもまた事実。

その声に応えるべく、2003年に追加されたのが「RSターボ」だったのです。

これは1.5Lエンジンを搭載する「ヴィッツRS」をベースに、TRDが開発したインタークーラーターボチャージャーキットをプラスしたもので、上乗せされるパワーはなんと41ps。

増大したパワーに合わせて足回りには強化品が奢られ、オイルクーラーや大容量ラジエーターなども含まれる本格的なもの。

また、オプションとしてフロントLSDやバケットシート、さらにハードなスポーツサスペンションなども用意され、トヨタディーラーで本格的なチューニングカーが買えるほどの内容が用意されていました。

その一方で、エクステリアはフロントの「TURBO」エンブレム以外は通常のRSとほぼ同一ということで、ある意味羊の皮をかぶった狼的な存在となっていたのです。

また、ベースとなった初代RSは3ドアと5ドアが存在していたため、ターボRSにも両方が存在しているというのも見逃せない点と言えるでしょう。

なお、ターボRSはコンプリートカーでしたが、のちに同様のターボキットを通常のヴィッツRSに後付けできる「TRDターボプラン」も用意され、一部のディーラーで購入、装着することができました。

そんな初代ヴィッツのターボモデルの中古車は、モデル末期の2年間のみの販売であったことと、すでに登場から15年以上が経過していることもあってか、執筆時点(2020年2月18日)での掲載台数は7台と少なめ。

ほとんどの個体が総額50万円ほどで狙える価格帯ですが、修復歴アリや10万kmオーバーといった状態で、ある程度目利きができないとオススメしづらい玄人モデルというのも事実でしょう。

ちなみに「ターボRS」で検索するとコンプリートカーしかヒットしないので、「もっと詳細な条件を追加する」から「過給機器設定モデル」にチェックを入れることで後付けターボもヒットするようになります!

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トヨタ ヴィッツ(初代)×過給機あり×全国

「マスターキット」装着モデルは激レア
トヨタ ヴィッツ TRD turbo M(2代目)

トヨタ ヤリス ▲2007年に追加されたTRD turbo M。先代のRSターボとエンジンスペックは同じですが、ベースモデルの運動性能が大きく上がっているため、さらにハイパフォーマンスなモデルになっています


2005年に2代目へとフルモデルチェンジを果たしたヴィッツですが、ターボモデルは2007年8月のマイナーチェンジ時に追加となりました。

パワーは初代モデルと同様、ベースとなったヴィッツRS比+40psとなる150psを発生し、専用のサスペンションが用意されるのも共通。

ただし、車名を「ヴィッツ TRD turbo M」と改め、よりマニア心をくすぐるネーミングとなっています。

専用エンブレム以外はエクステリアがベース車と同等というのも初代と共通するところ。

しかし、2代目では新たに「マスターキット」というセットオプションが追加設定されており、これは3連メーターキット、本革ステアリング、センター出しマフラー&専用ガーニッシュ、スポーツブレーキパッド、17インチタイヤホイールが装着されるもの。

これは“単品販売はしない”と銘打たれたセットアイテムなので、装着車はかなりレアと言えそうです。

2代目となるヴィッツのターボモデルは、初代に比べると年式も新しく、販売期間も(やや)長かったため、執筆時点での掲載台数は15台となっていました。

価格も高いものでは支払総額100万円強というものから、50万円を切るものまで様々。

ただ、初代ターボとは異なり、走行距離が少ないものも存在するため、程度を重視するか価格を重視するかという選択の幅が広いのが特徴です。

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トヨタ ヴィッツ(2代目)×過給機器あり×全国

高い剛性の3ドアボディを採用
トヨタ ヴィッツ GRMN Turbo/GRMN(3代目)

トヨタ ヤリス ▲2013年に200台限定で発売されたGRMN Turboは、最高出力152ps、最大トルク206N・mを発生する1.5L 直4ターボエンジンを搭載しています。さらに2018年には、最高出力212ps、最大トルク250N・mを発揮する1.8L 直4ターボエンジン搭載の最強のヴィッツGRMNが追加されました


ヴィッツという名前では最後のモデルとなった3代目には過給機搭載モデルが2種類存在していました。

最初に登場したのが、2013年に200台限定で販売された「GRMN Turbo」です。

エンジンは初代、2代目と同じく1.5Lの1NZ-FE型にターボチャージャーをプラスしたもので、最高出力は152psでしたが、最大のトピックはエンジンではなくボディです。

なんと日本仕様には存在せず、ボディ剛性の面で有利な3ドアボディをわざわざ英国、豪州向けのラインから拝借し、さらにボディ補強を施したものを採用。

さらにサスペンションだけではなく、ブレーキにも対向4ポットキャリパーを採用し、ストリートからサーキットまで幅広く走りを楽しむことができるモデルとなっていました。

そして2018年6月には、もう1台過給機付きのモデルが発売されました。

ヴィッツとしては最強のスペックを誇る「ヴィッツGRMN」です。

こちらはわずか150台限定となっており、事前に商談申し込みを行い、先着順で商談の権利が与えられるという方式が取られていました。

コチラのモデルも3ドアボディを採用していましたが、エンジンはベース車には存在しない1.8Lエンジンを搭載。

このエンジンはあの名門ロータスがチューニングを施し、スーパーチャージャーをプラスして212psを絞り出していました。

なぜロータスがヴィッツを? と思われる方もいるかもしれませんが、実はロータスはこの2ZR-FE型エンジンの供給を受けており、ヴィッツGRMNと同じくスーパーチャージャーをプラスしてエリーゼに搭載していたのです。

つまり、ロータス エリーゼのエンジンを搭載したヴィッツと言っても過言ではありません。

そんな3代目ヴィッツの過給機モデルは、限定車ということもあって中古車市場にはほとんど流通していません。

前者のGRMN Turboは1台、後者のヴィッツGRMNは2台となっており、極端なプレミアム価格ではないものの、新車時の価格とほぼ同等のプライスタグとなっていました(なお、新車価格はGRMN turboが270万円、ヴィッツGRMNが400万円)。

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トヨタ ヴィッツ(3代目)×過給機あり×全国

ということで、歴代すべてのモデルに存在していた過給機付きヴィッツ。

退屈な車が多いとやゆされることが多いトヨタですが、実はずっとこういったとがったモデルもリリースしており、それがGRヤリスにつながっていたのかと思うと感慨深い気持ちになりますね!

文/小鮒康一(フナタン)、写真/トヨタ
小鮒康一(こぶなこういち)

自動車ライター

小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車はリーフ、初代パルサー、NA・NBロードスター。