シトロエン C3エアクロスSUV ▲2019年10月1日に発売されたシトロエン C3エアクロスSUVの特別仕様車「オリジンズ」。写真はシトロエン厚木が販売する登録済み未使用車で、車両価格は238万円

シトロエンのSUV第2弾で、装備充実の特別仕様車

こちらは、雑誌「カーセンサーEDGE」で8年以上続いている自動車評論家MJブロンディさんの長寿連載「EDGEセカンドライン」のB面である。すなわち、なぜかその取材現場に同席している自動車ライター伊達から見た「同じ車の別側面」だ。

第8回目となる今回は、2019年12月27日発売のカーセンサーEDGE2月号で取材した2019年式シトロエン C3エアクロスSUV オリジンズのB面をお届けする。ちなみにその車両本体は238万円で、走行距離はわずか50km。つまりこれは「登録済み未使用車」ってやつである。

本編に進む前に、まずはシトロエン C3エアクロスSUVという車に関するごく簡単な解説を。

シトロエン C3エアクロスSUVは、先にデビューしたC5エアクロスSUVに続いて2019年7月に投入されたシトロエンのSUV第2弾。

その車台は現行型シトロエン C3のそれをSUV用に最適化したもので、寸法的にはC3より165mm長く、車幅は15mm広く、全高は135mm高い。つまり「C3よりひと回りか1.5回りぐらい大きい」というニュアンスだ。

そのうえでアルミ製のフロントアンダーガードや無塗装のフェンダーアーチ、同じく無塗装のリアバンパーなどを合わせることで「SUV風味」に仕立てている。とはいえ駆動方式は2WDのみなのだが。
 

シトロエン C3エアクロスSUV▲円形のホイールの中に四角いセンターキャップがたたずむという、いかにもシトロエンらしいよく考えると斬新なデザイン。ちなみに純正のハンコック製17インチタイヤはMJブロンディさんによると「なかなかいい感じ」とのこと
 

エンジンはC3やDS3と同じ1.2Lの直3ターボで、トランスミッションはアイシンAW製の6速AT。ちなみに私物として後期型のシトロエン DS3(同じくアイシンAW製6速ATを搭載)を所有しているA面担当のMJブロンディさんによれば、同じトランスミッションでも「C3エアクロスSUVのやつの方が制御が良くなってる」という。

グレードラインナップは、エントリーグレードに相当するのが新車価格263万8000円の「フィール」で、装備が充実しているのが279万1000円の「シャイン」。ちなみにシャインの方にはパノラミックサンルーフやグリップコントロール(ヒルディセントコントロール付き)等々がセットになった「SHINEパッケージオプション」を23万4000円で装着することも可能だ。

で、今回の取材車両は特別仕様車である「ORIGINS(オリジンズ)」。これは上級グレードの「シャイン」をベースに、17インチアロイホイールやグリップコントロール、カラーマルチファンクションディスプレイ、リアロールアップブラインドを追加で装備したもの。さらにはビンテージ感を演出するためのアクセントとして「ブロンズカラー」を各所に配している。新車の車両本体価格は295万4000円。

そして本来は295万4000円であるC3エアクロスSUVオリジンズが、未使用状態とはいえ「中古車ではある」ということで車両価格238万円という超お値打ちプライスになっている……というのが今回の取材車両だ。
 

シトロエン C3エアクロスSUV▲シトロエン C3エアクロスSUVのインパネまわりはこのようなデザイン。個体としてのコンディションは、走行わずか50kmゆえ当然ながら「新車とほぼ同じ」としか表現しようがない

「新車とほぼ同じ」なのにこれだけ安いと、確かにグッとくる

シトロエン C3エアクロスSUVという車の走行性能等については「A面」でMJブロンディさんがレポートしているため、ぜひカーセンサーEDGE2月号の誌面にてご確認いただければと思う。

B面担当としては「ところで登録済み未使用車ってどうなんだ?」という部分に絞って話を進めたい。

いきなり結論から申し上げるが、筆者は「素晴らしい!」と考えている。

何が素晴らしいかといえば、当たり前だがやはりマネー面だ。
 

シトロエン C3エアクロスSUV▲オリジンズの特別装備である「ブロンズステッチ入りファブリックコンビネーションシート(グレー/ブラック/ホワイト)」。素朴だがいちいちしゃれているその絶妙なセンスは「さすがはフランス物!」といった感じか
 

便宜上「諸費用」を除いて車両価格だけで考えると、C3エアクロスSUVオリジンズを完全な新車で買う場合の価格は前述のとおり295万4000円。

そこから多少の値引きはあるかもしれないが、値引き額はせいぜい5万~20万円といったところだろう。ならば、ここはひとつ間を取って(?)仮に「値引きは15万円!」ということで話を進める。あくまで「仮の数字」であることを念押しするが。

で、仮に15万円引きだったとしたら、C3エアクロスSUVオリジンズの実勢本体価格は280万円4000円。さらに端数ぐらいはオマケしてくれるかもしれないので(?)、これまた仮に「280万円」ということにしておこう。

それに対して、今回の走行50km也の登録済み未使用車は238万円。……電卓も必要ないほど簡単な引き算により、「42万円もおトク!」ということが誰にでもわかる。

42万円といえば、ちょっとした企業にお勤めの人の給料1ヵ月分ぐらいであるはず。さらには登録済み未使用車の場合、未使用とはいえ「登録済み」であることは間違いないため、各種税金も販売店がすでに払い込みを済ませている。

……その分もあわせて違うとなれば、なんといっても「世の中しょせんはカネ!」という部分も大であるため、いくつか存在している登録済み未使用車特有のデメリットを押してでも、この物件には注目せざるを得ないのだ。

だが「いくつか存在している登録済み未使用車特有のデメリット」とは、そういえば何だっただろうか?
 

シトロエン C3エアクロスSUV▲ベースである現行型C3と比べると、全長だけでなくホイールベースも延長されているため、C3エアクロスSUVの後席は「まずまず広い」と形容できる

特有のデメリットもあるが、「あなたにハマる1台」はきっとある!

デメリットその1は、この種の車では特に重要なポイントである「ボディカラー」を好き勝手には選べないということだ。

特別仕様車である オリジンズの場合はたまたまこの「ナチュラルホワイト」という1色しかないため関係ないが、例えば同じC3エアクロスSUVでも通常グレードの「シャイン」が欲しい場合は、「本当はスパイシーオレンジが欲しいけど、登録済み未使用車にはサーブル(グレー)しかない……」なんてこともあり得る。その場合は趣味を取るべきかカネを取るべきか、悩むだろう。

デメリットその2は「車検残が微妙に短い」ということ。

ド新車を買う場合はもちろん丸々3年間の車検残があるわけだが、登録済み未使用車はほとんどのケースで「丸々3年間」ではない。今回の取材車両でいうと次回車検は令和4年9月であるため、新車を買う場合と比べて「おおむね3ヵ月短い」ということになる。

まあこの個体はたまたま3ヵ月の違いでしかないため「誤差の範囲」と強弁することもできるが、一般的には新車と比べて車検残が半年以上短い未使用車もある。その場合は「ううむ……」と悩んでしまいそうだ。

またその他、微妙だが小さくはない問題として「ディーラーオプションは付けられるが、メーカーオプションを付けることはできない」というデメリットもある。

例えばスピーカーやドライブレコーダーとかであればいくらでも後から装着できるが、「パノラミックサンルーフを付けたいんですけど?」と言っても無理、ということだ。
 

シトロエン C3エアクロスSUV▲この「ホワイトリアクオーターパネルステッカー」も、地味だがいちおうオリジンズならではの特別装備
 

以上のデメリットを勘案すると、正しい答えは「登録済み未使用車がおトクかどうかなんて一概には言えない」ということになる。

そしてそれは、別の言い方をするならば「1台ずつていねいに見ていけば、自分の価値観やおサイフ事情にマッチする未使用車も(たぶん)必ずどこかにある」ということでもある。

少なくとも今回の取材車両に関しては、ボディ色も内装も装備も筆者の好みであり、車検残が「3ヵ月の違いにすぎない」という部分も気に入った。

これをお読みの貴殿がこの個体を筆者同様に気にいるかどうかはわからない。そのあたりは「人生いろいろ、人の好みや事情もいろいろ」である。

だが確実に言えるのは、「とはいえカーセンサーnetを丹念に見ていけば、貴殿の事情にぴたりとハマる未使用車も、きっとどこかで見つかるはず」ということだ。

それがシトロエン C3エアクロスSUVという車種であるかどうかはわからないが(たぶん違うだろう)、ぜひぜひ「検索条件」を上手に絞ったうえで探していただければ――と願っている。
 

文/伊達軍曹、写真/阿部昌也
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。