絶滅危惧車のトラヴィックは、スバルチューンを施し「走りの良さ」を追求したミニバンだった
2019/09/07
スバルのエンブレムをくっつけただけのOEM車ではない!
スバル トラヴィックは不思議な車だった。
というのも当時、スバルはGMと戦略提携していたころで、GM傘下のオペル ザフィーラを「トラヴィック」としてOEM販売していた。
最大の特徴はザフィーラがヨーロッパ生産だったのに対して、トラヴィックはタイで生産されていたこと。
そして……ザフィーラよりも排気量が400㏄大きいエンジンを搭載しながら、新車時価格は100万円近く安かったのだ。
1.8Lエンジンを搭載するザフィーラ CDXが289万円だったのに対して、トラヴィックのエントリーモデルは199万円という価格設定だった。
トラヴィックの登場から間もなく、ザフィーラが日本において販売終了となったのはやむを得なかったのだろう。
トラヴィックは単にザフィーラのフロントグリルを変えて、スバルのエンブレムをくっつけたというものではない。
シャシー、ボディはザフィーラと共通だったが、細部にはスバルならではのこだわりが数多く込められていた。
エンジンはザフィーラの1.8L(最高出力125ps、最大トルク17.3kg・m)に対して、トラヴィックはGM傘下のサターンが開発したオールアルミ製の2.2L 直4 DOHC(147ps、20.7kg・m)を搭載。
駆動レイアウトは2WD(FF)のみで、トランスミッションは4速ATが組み合わせられた。
足回りはフロントにストラット式、リアにトーションビーム式が奢られた。
形式こそ同じだが、スバルが日本の道路に合ったダンパーチューニングを施していた。
グレードは「ベースグレード」、スポーティ仕様の「Sパッケージ」、豪華仕様の「Lパッケージ」の3タイプ。
Sパッケージでは205/55R16タイヤ&アルミホイール、スポーツサスペンション、エアロパーツなどが装備され、スポーティに仕上げられた。
ちなみにエアロパーツは決してだてではなく、空気抵抗を示すCd値は0.32から0.30になった。
Lパッケージは15インチアルミホイール、ヘッドライトウオッシャー、マルチインフォメーションディスプレイ、ルーフレールなどを標準装備した豪華仕様だった。
ドイツ車っぽさあふれるミニバン
ボディサイズは、ザフィーラと同じ全長4315mm×全幅1740mm×全高1675mm(ルーフレール非装着車は1630mm)、ホイールベース2695mm。
これで7人乗車ができたので、かなりユニークな存在だった。
シートアレンジは2‐3‐2。サードシートはセカンドシート下にきっちり格納できる。サードシートであっても、必要十分なスペースが確保されていたのが頼もしい。
荷室はコンパクトなボディながら折りたたみ自在なシートによって、十分確保されていた。
走りはスバルチューンだったこともあるが、ベースのザフィーラ同様キッチリ、カッチリ、シッカリしたものだった。
ハンドリングはシャープで、どちらかというと硬めな乗り心地の味付けだった。
スバルチューンが施されたとはいえ、ドイツ車っぽさがプンプン漂っていた。
そういう意味では、ファミリーカーでありながらも走ることを意識させる車だったといえよう。
販売期間はたったの3年半……残された個体は少ない
絶版となってからはや15年、もうカーセンサーnetに掲載される物件も数えるほど。
原稿執筆時点(2019年9月2日)ではエントリーモデルは流通しておらず、SパッケージとLパッケージのみが見受けられる。
デビューは2001年だったが、2004年には絶版と短命に終わったことも掲載台数の少なさにつながっているのだろう。
中古車価格は安いものは10万円台から狙えて、もっとも高いものでも80万円弱といったところだ。
ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
▼検索条件
スバル トラヴィック(初代)×全国自動車ライター
古賀貴司(自動車王国)
自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。
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