▲2013年11月に登場したピュアEV「BMW i3」。写真はBMW Premium Selection勝どきが販売する2014年式で、走行1.8万km。支払総額は264.9万円 ▲2013年11月に登場したピュアEV「BMW i3」。写真はBMW Premium Selection勝どきが販売する2014年式で、走行1.8万km。支払総額は264.9万円

基本的には「わざわざ買う理由」が見つからないEVだが

こちらは、雑誌「カーセンサーEDGE」で8年以上続いている自動車評論家MJブロンディさんの長寿連載「EDGEセカンドライン」のB面である。すなわち、なぜかその取材現場に同席している自動車ライター伊達から見た「同じ車の別側面」だ。

第3回目となる今回は、2019年7月27日発売のカーセンサーEDGE 9月号で取材した2014年式BMW i3 レンジエクステンダー装着車(支払総額264.9万円/走行1.8万km)のB面をお届けする。

まったく同じ個体を対象にしているにも関わらず、A面担当のMJブロンディさんとB面担当であるわたくし伊達の意見はたいてい真逆だったりする。だが今回に限っては、たまたまだがほぼ完全な一致を見た。

すなわち「個人的にはEVを買うつもりはない。だがもしも買うとしたら、中古のBMW i3が最有力候補になるだろう」ということだ。

まず「EVを買うつもりはない」という部分について。MJさんは、A面のなかでその理由をこう説明した。

「ウェル・トゥ・ホイール(油田から車輪まで)での環境負荷を考えれば、原発がほぼ止まっている日本ではEVもハイブリッドも大きな差はない。それでいて航続距離が限られ、充電がめんどくさく、電気代だってバカにならないEVを、わざわざ買う理由が見つからない」

これにはわたくしも完全同意しつつ、さらに「恐怖感」という要素を付け加えたい。現状のバッテリー性能および給電インフラの下では「電欠リスク」に対する恐怖感がありすぎるほどあるのだ、個人的には。
 

▲バッテリーの技術に何らかのブレイクスルーが起き、「1000kmぐらいは楽勝で走れます」という時代が来たならば積極的に選びたいEVだが……。ちなみに写真は取材車両の運転席付近。走行1.8万kmの認定中古車だけあって、内装各部のコンディションはかなり良好▲バッテリーの技術に何らかのブレイクスルーが起き、「1000kmぐらいは楽勝で走れます」という時代が来たならば積極的に選びたいEVだが……。ちなみに写真は取材車両の運転席付近。走行1.8万kmの認定中古車だけあって、内装各部のコンディションはかなり良好

「不測の事態」に陥ったときの不安材料が購入を躊躇させる

2014年式BMW i3の場合、実用走行を想定したBMW社内基準によれば、「ECO PROモード」を選択した場合の航続距離は約180km。「ECO PRO+モード」を選んだ場合は約200kmとのこと。

そして今回の取材車両は発電用に0.65Lの2気筒ガソリンエンジンを搭載した「レンジエクステンダー装備車」の前期型であるため、その航続距離は約300km。十分といえば十分な数字である。

だが「数字」はあくまでも数字にすぎない。

もしも2018年1月22日に関東地方を襲った大雪に近い気象に再び襲われ、そのときたまたまi3で高速道路を走っていたとしたら……まずはあの日のように高速道路上に閉じ込められ、そして身動きが取れなくなる。

身動きが取れなくなるだけならまだいいが、そのとき自分が乗っている(と仮定している)のはEVであるため、暖房をつけっぱなしにしておくとバッテリー残量はあっという間に減っていく。あと250kmぐらいは余裕で走れたはずだったとしても。そのためあわてて電源をOFFり、そして一晩中凍え続けることになるのだ。
 

▲取材車両のダッシュボード上に貼られているウッドパネルはメーカーオプションで、素材はユーカリウッド。いかにも「サステイナブルな感じ」が、EVであるBMW i3にはよく似合っている▲取材車両のダッシュボード上に貼られているウッドパネルはメーカーオプションで、素材はユーカリウッド。いかにも「サステイナブルな感じ」が、EVであるBMW i3にはよく似合っている
 

ただ、これについてはエンジン車であっても同じといえば同じだ。閉じ込められた高速道路上でずっとエンジンを回してヒーターをかけておけば、いつしかタンク内のガソリンや軽油は底をつく。

違うのは、エンジン車の場合は「最悪まあなんとかなる」ということだ。

高速道路の非常口から徒歩で一般道に降り、フルサービスのガソリンスタンドを探し、携行缶を購入してそこにガソリンを入れてもらい、再び高速道路上に戻って給油する。かなり大変ではあるが、それでいちおう万事OKではある。

実際は人々がGSに押し寄せて「携行缶は品切れになりました!」なんてことも大いにありそうだが、とにかく「最悪の場合でもどうにかなる(はず)!」といちおうは思えるのが、各種インフラを含めて歴史の蓄積があるエンジン車の強みであり、安心感だ。

現実には上記のような事態にハマる可能性などおそらく0.1%ぐらいのものだろう。だがそれでも、現状の性能のバッテリーを搭載しているピュアEVを買う気にはなかなかなれないのである。心情的に。
 

▲ある意味古くさいとも言えるガソリンや軽油だが、「ある程度どこでも、すぐに、確実に手に入る」という事実がもたらす安心感は、やはりいまだ絶大なものがある▲ある意味古くさいとも言えるガソリンや軽油だが、「ある程度どこでも、すぐに、確実に手に入る」という事実がもたらす安心感は、やはりいまだ絶大なものがある

が、「セカンドカーとしてのEV」なら話はまったく別だ

だが、ここまで述べてきた内容は「もしも我が家のたった1台の車としてBMW i3を選んだなら?」という前提に基づいている。

ファーストかつオンリーな自家用車としてEVを選ぶのは、ここまで述べてきたとおりちょっと怖い。

だがセカンドまたはサードの自家用車としてであれば? ……当然ながら「ぜんぜん怖くない」ということになる。

例として挙げた「大雪による悲惨な事態」が予想される日にどうしても車で外出しなければならないなら、EVは使わず、他に所有しているエンジン車で出かければいいだけの話。それで万事解決である。

個人的には、BMW i3は「我が家の近距離スペシャル」として活用してみたい。

この個体はレンジエクステンダー装着車であるため、長距離系のお出かけにもそれなりに使える。だが「ウルトラ超絶事故渋滞」などでドツボにハマったらどうしよう……という0.1%の可能性と恐怖感がどうしても付きまとうため、あくまで「近場の移動用」として徹底的に用途を限定させるのだ。
 

▲BMW i3のドアはこのような観音開き方式。ちなみに当ページに掲載されているi3の写真はすべて、BMW Puremium Selection勝どきが販売する2014年式BMW i3 レンジエクステンダー装着車です▲BMW i3のドアはこのような観音開き方式。ちなみに当ページに掲載されているi3の写真はすべて、BMW Puremium Selection勝どきが販売する2014年式BMW i3 レンジエクステンダー装着車です
▲ボディサイズは小ぶりだが、後席の居住性はまずまず良好。ブラウンのレザーシートはメーカーオプション▲ボディサイズは小ぶりだが、後席の居住性はまずまず良好。ブラウンのレザーシートはメーカーオプション
 

そのような使い方をするのであれば、BMW i3の中古車は(特にレンジエクステンダー装着車は)なかなか魅力的だ。

これはA面のなかでMJブロンディさんもおっしゃっていたことだが、先代日産 リーフの中古車であれば、これよりもっとお安い「総額100万円前後」でも買える。だが何が悲しくて、100万円もの大金を出して、あんな絶妙なデザインの車に乗らねばならないのだ(※あくまで個人の感想です。すみません)。

しかしBMW i3であれば、デザインも存在感もなかなかイケている。これまた個人の感想にすぎないわけだが、「SF子ぶた」みたいなフェイスを含め、可愛くも知的なたたずまいである。割と最高である。

もちろん、満充電1回あたりの走行可能距離がWLTCモードで466kmになった最新世代のi3の方が、さらに素晴らしい。だがその新車価格は592万円だ。航続距離が増えたとはいえ、「現状のEV」にそこまでの金額を投じるのもちょっとどうかと思う。

そういった意味で、200万円台で買えるようになった中古のi3は「ちょうどいい塩梅の存在感」を放つのだ。

この個体の販売店であるBMW Premium Selection 勝どきの担当者氏も言っていた。「新車のi3は少々苦戦していますが、中古のi3は動きが速いですよ。いろいろと“わかってる”お客様が、EVのデメリットもご承知のうえでパッと買っていかれる感じですね」

……筆者やMJブロンディさんを含め、「車好きが考えることはだいたい同じ」ということなのかもしれない。
 

文/伊達軍曹、写真/大子香山、Photo AC

伊達軍曹(だてぐんそう)

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。