▲「いい年のおっさんが軽自動車なんて……」という見方も世の中にはあるのかもしれないが、今どきそんなことにこだわるのはナンセンス。物事は先入観なしで幅広く検討してみようじゃないか! ▲「いい年のおっさんが軽自動車なんて……」という見方も世の中にはあるのかもしれないが、今どきそんなことにこだわるのはナンセンス。物事は先入観なしで幅広く検討してみようじゃないか!

「娑婆っ気」がどんどん抜けてくるお年頃

若かりし頃とは違う軸を必要とする中高年の車選びについて考えてきたこのシリーズも、いよいよ最終回である。

最後にあたり、これまで胸の内に秘めていたひとつのアイデアを開陳させていただきたい。

それが「理想像」であるとは決して言わないが、中高年の車は現行型のホンダ N-BOXでも割と十分なのではないか? というアイデアだ。

どうしても若干の“俺語り”を含んでしまうが、順を追って理由をご説明しよう。

▲こちらがその現行型ホンダ N-BOX▲こちらがその現行型ホンダ N-BOX

筆者はこの11月末頃に晴れて満51歳となる予定の紛れもない中高年。

しみじみ思うのは「娑婆っ気(しゃばっけ)がかなり抜けてきた」ということだ。

娑婆っ気(正しくは娑婆気)とは、新明解国語辞典第七版によれば「世間の名誉や利欲から離れられない心」のこと。

その心が、40代半ば頃より体内から徐々に抜け始め、50歳となったあたりからは「かなり」と言えるレベルで抜けているのだ。

もはや異性にモテようとはあまり思わないし、着る物も、まあまあの清潔感さえあれば何でもいい。

若い頃は名誉欲のようなものもそれなりに強かったが、最近は「このまま無名の一市民で終わろうとも、自分なりに楽しく健康に暮らせればそれだけで十分幸せだ、勝ち組だ」と心底思っている。

そして自動車に対するスタンスも良きにつけ悪しきにつけ大きく変わった。

すなわち、「車格」と言われている概念を通じて他者を圧倒したり、尊敬の念を集めたいというようなマインドは雲散霧消した。

そして同時に「スピードへの情熱」みたいなものも、まだ決してゼロではないが、まぁあまり残っていない。

▲「カッコ良くて高そうで高性能な車でビュンビュン走ったり、他人から羨ましがられたい!」という欲望が枯渇したわけではないが、以前と比べるとその強度は極端に下がっているように思える(筆者の場合)▲「カッコ良くて高そうで高性能な車でビュンビュン走ったり、他人から羨ましがられたい!」という欲望が枯渇したわけではないが、以前と比べるとその強度は極端に下がっているように思える(筆者の場合)

「かなりデキの良い軽自動車」なら、実はそれで十分という説

前章で俺語りした筆者のケースは、さすがに若干枯れすぎなのかもしれない。

だが50歳前後の男性というのは大なり小なり、これに似た傾向を抱えているのではないかと推測する。

で、もしも昨今の貴殿にそういった傾向がある場合は、下記の見解もひとつの方向性として必然的に湧き上がってくるはずだ。

すなわち、

「車は軽で十分かもしれない」

という見解である。

もちろんそれは「ただの軽自動車」ではなく、「かなりデキの良い軽自動車」に限る。

そうでないことには、これまでの人生で自動車的に酸いも甘いも噛み分けてきた中高年の心を満足させることはできまい。

だが、もしも「かなりデキの良い軽自動車」の高年式・低走行な中古車が「総額160万円以下ぐらいのお手頃予算」で探せるとしたら?

……きわめて冷静に考えてみると、それを買わねばならぬ理由はない。

が、かといってそれをハナから否定する合理的な理由は特にないことにも気づくだろう。

なにせこちとら(ある程度)枯れた中高年である。

公道で飛ばすこともほとんどないし、「高い車」「カッコいい車」で同性からのリスペクトを得たり、異性からの注目を集めたいという欲望も(ゼロではないにしても)さほどない。

で、可能であれば維持費やなんかも安いに越したことはないと思っている。

「……ならばデキの良い軽自動車に乗るという生活も、決して無しではないのかもしれない」

すべての中高年ではなかろうが、一部の者はそう考える可能性も大であるはず。

そしてそう考えたときに推奨株となる「かなりデキの良い軽自動車」が、冒頭付近で挙げた現行型ホンダN-BOX、より具体的に言えば「G Lホンダセンシング」というグレードなのだ。

▲第2世代として2017年9月にデビューした現行ホンダ N-BOX。「日本のファミリーカーの新基準を打ち立てるため」車台は完全な新開発となり、その走行安定性などはクラストップレベルといえる水準に▲第2世代として2017年9月にデビューした現行ホンダ N-BOX。「日本のファミリーカーの新基準を打ち立てるため」車台は完全な新開発となり、その走行安定性などはクラストップレベルといえる水準に

「しょせん軽でしょ?」と馬鹿にしてる人にこそ試乗してほしい

現行型ホンダ N-BOX。登録車と軽自動車を合わせた総合ランキングで見れば、

今、日本で一番売れている車だ。それゆえ詳細すぎる説明は不要だろう。

背が高い箱型の軽自動車である。

エンジンの排気量は当然ながら660cc(正確には658cc)で、ターボ付きとそうでないタイプとがある。

そして通常デザインの他、ちょっとワルなデザインを持ち味とする「N-BOXカスタム」というシリーズも存在している。

で、これが大変に素晴らしい車なのだ。

もちろん「素晴らしい車」だからこそ、日本中でバカ売れしているのだろう。

だがもしもまだお乗りになったことがなく、そして「しょせんは軽だろ?」

みたいな感じで馬鹿にしている人がいたら、ぜひ近所のディーラーなどで試乗してほしい。

たぶん、ブッ飛ぶはずだ。

▲妙に背が高く、いかにも走行性能はイマイチっぽいフォルムでありながら、実際は……▲妙に背が高く、いかにも走行性能はイマイチっぽいフォルムでありながら、実際は……

最初の一瞬こそ背が低めな車に乗りなれている人は違和感を感じるかもしれないが、2分も乗っていれば慣れる。

で、その(箱型の軽自動車としては)空恐ろしいほどの安定感や快適な乗り心地にブッ飛ぶのだ。

良い意味で「なんだこりゃ!」と。

ノンターボグレードの場合は決して速くはないが、ジェントルな運転こそを良しとする中高年的にはぜんぜん十分。

そして四角い車だけに高速道路での風切り音が盛大そうに見えるが、実はそんなこともない。

21世紀の空力技術、恐るべしである。

そして室内も空恐ろしいほど広大だ。後席を後ろにスライドさせれば、後部居住スペースはほとんどリムジン並み。

まぁそうするとラゲージスペースはほとんどなくなってしまうわけだが、それなりの荷物を載せる際は後席をワンタッチで畳んでしまえばいい。

そうすれば、下手をすればワンルームマンションに住む子供や孫の引っ越しすら、この車で手伝えるだろう。

そして、流通している大半の現行N-BOXには安全運転支援システム「ホンダセンシング」が付いている。

多少注意力が散漫になってきた我ら中高年にとっては何かと安心でもある。

▲後席の足元空間は、使い方によっては超大型セダン以上の広さに。座面がはねあがるチップアップ機構や、背もたれを前に倒せばフラットな荷室となるダイブダウン機構も備わっている▲後席の足元空間は、使い方によっては超大型セダン以上の広さに。座面がはねあがるチップアップ機構や、背もたれを前に倒せばフラットな荷室となるダイブダウン機構も備わっている
▲ミリ波レーダーと単眼カメラなどで危険を察知し、衝突回避や車線維持などを行う「ホンダセンシング」を標準装備。あるとないとでは何かと大きく異なる装備だ(特に中高年には)▲ミリ波レーダーと単眼カメラなどで危険を察知し、衝突回避や車線維持などを行う「ホンダセンシング」を標準装備。あるとないとでは何かと大きく異なる装備だ(特に中高年には)

新車はそこそこお高いが、低走行中古車なら総額140万円から

以上のとおり、現行ホンダ N-BOXとはなかなか素晴らしい働きをする軽自動車である。

ビュンビュンかっ飛ぶことには向かないし、いわゆる威張りもまったく利かないが、もしもそこにさしたる価値を求めないなら不満はほとんどない。

強いて言うならば、結局は660ccの軽自動車なので「長距離移動に際してはさすがに普通乗用車よりも疲れやすい」という難点はある。

このあたりは各位の使い方次第というか、ライフスタイルに応じて評価が分かれる部分だろう。

で、そのように素晴らしき実用車であるホンダ N-BOXは今、おいくらで買えるのか?

あ、ちなみにグレードは軽く前述したノンターボの「G Lホンダセンシング」というがちょうどいいのではないかと筆者は思う。

ノンターボゆえやや遅いが、装備類はけっこう充実していて、それでいてリーズナブルな最量販グレードだ。

そしてもちろん好みにもよるが、中高年にはワイルド系の「カスタム」ではなく、通常デザインの方を推したい。

▲もちろん「カスタムの方が好き!」というなら止めないが、いい年の大人には、基本的には通常ラインの方が似合うだろうとは思う▲もちろん「カスタムの方が好き!」というなら止めないが、いい年の大人には、基本的には通常ラインの方が似合うだろうとは思う

で、新車のG Lセンシングを買うとなると、なんだかんだで総額210万~220万円ぐらいにはなる計算。

……いかな「かなりデキの良い軽自動車」とはいえ、「軽に220万円」というのはメンタル的に若干納得しづらい部分もある。

だが中古車ならば?

……走行1万km未満の2017~2018年式G Lホンダセンシングの支払総額が、おおむね140万~160万円で十分イケる状況だ。

貴殿はこの状況をどう考えるだろうか?

そして残された人生の「自動車部分」を、どうお過ごしになりたいと思っているだろうか?

その形や最終的な選択肢は、もちろん人それぞれだろう。

だが筆者は、その選択肢の中に「現行ホンダ N-BOXの高年式・低走行中古車」というのも入れたうえで子細に検討していただきたいとは、確実に思っている。

text/伊達軍曹
photo/ホンダ、BMW

▼検索条件

ホンダ N-BOX(現行型)×総支払額あり×総額160万円未満×総走行距離1万㎞未満×修復歴なし