Q.納車前に天災被害で修理が必要に
この修理代、だれが負担するもの?


 急な用事が入ってしまい、購入した車の納車を先延ばしにしました。数日後、ようやく時間ができたので受け取りに行こうとしたところ、販売店から一本の電話が。なんと、突然の雹(ひょう)で車がボコボコになったとのこと。天災なので修理は有料と言われましたが、納得いきません。この修理代、ボクが払わなくてはいけないのですか?

A.天災であれば販売店に過失はない
買い主が修理代を負担するケース多し


 例えば、整備段階で傷を付けてしまった、移動させている最中に事故を起こしたといったケースは、修理代金は販売店が負担しなくてはならないでしょう。この場合、落ち度があるのは明らかに販売店だからです。

 しかし相談のケースは、いわゆる不可抗力なので販売店側には重過失や悪意もなく、落ち度はないと考えられます。ただし、他の車は屋根付きの場所で保管をして、この車だけをしっかり保管していなかった状況の場合には、善良な管理者としての注意をしていなかったと言うことで、修理代等の損害賠償を請求することが可能かもしれません。

 一方、買い主側は、車を引き渡せる状態であるにもかかわらず、自身の都合で取りに行っていません。これは、民法で言う「受領遅滞」にあたる可能性もありますが、この場合は双方の合意に基づいて引き渡し日を変更したと考えてよいでしょう。

 また、法律上の原則に「債権者主義」という考え方があり、特定物の場合は買った方が危険負担をするといことになっています。中古車も代替がきかない商品=特定物ですから、契約後、納品される前に販売店に落ち度がない事態が発生した場合は、買い主の負担という考え方が強いのです。

 ちなみに、購入前に盗難にあった、火災で焼失したなどの場合も、基本的には買い主の負担。できれば、納車されていなくても、登録が完了した段階で車両保険を含めた任意保険に加入しておくことをオススメします。


illustration/もりいくすお


■ワンポイント法律用語■

受領遅滞(じゅりょうちたい)
契約を結び履行が可能な状態であるにもかかわらず、債務者または債権者が正当な理由もなく期限を過ぎても履行をしないこと。一定の期間を定めて履行を催告して、それでも履行しない場合には契約を解除できる

債権者主義(さいけんしゃしゅぎ)
契約を締結した後に、不可抗力などによって目的物が減失、又は毀損した場合のリスクは債権者が負担するというもの。中古車を購入した場合、目的者(中古車)が消滅、または何かしらの原因で債務価値が下がる可能性がある場合は、そのリスクは販売店ではなく買い主が負う責任がある