輸入車の“天井落ち”いくらで直せる? どう直す?修復専門店に聞いてみた【後編】
2025/09/30

天井落ちの修理に密着
ちょっと古い輸入車を中心に、わりとよく聞く(?)「天井落ち」という現象。
この「天井落ち」に遭遇し、「どうしたらいいんだ……」と困ったカーセンサー編集部・今泉が、数分の検索を経てたどり着いたリペア専門店「ケーワークス」に助けを求めました。
無事に元通りに直るのか? 金額はいくらくらいなのか? どのように修復をするのか? 詳しくリポートします。
修復作業を手伝えるプログラムに参加

ケーワークスのホームーページから問い合わせをし、作業日程を決めて待つこと約1カ月。その間に、張り替える天井のサンプル生地見本が自宅に届き、それを見て新たに張る生地を決めました。
生地の種類によって価格は異なり、今回は1mあたり9000円の生地をチョイス。修復するボルボ XC90(初代)の天井は2.3mで工賃は7万円、合計9万700円でしたが「助手割引」という車のオーナーが修復を手伝えるプランで1万円が割り引かれることに!

ケーワークス
桑原さん
天井リペアの専門店ケーワークスの代表。これまで15年にわたり世界各国、数多の車の落ちた天井を直してきた天井リペアのスペシャリスト。メーカーディーラーから「天井が落ちたらケーワークスさんにすぐ連絡する」と絶大な信頼を得ている。

インタビュアー
カーセンサー編集部 今泉翔太
3列シートのSUVを愛する3児の父。5年前に2007年製のボルボ XC90(初代)を購入。これまで大きなトラブルは冷却ファンモーターの故障のみだったが、このたび天井落ちの憂き目にあう。過去、メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン(初代)でも天井が落ちた経験がある。

天井修復の作業を手伝えるということですが。

はい。お手伝いいただいた方には、代金から1万円を割り引かせてもらっています。だいたい7割くらいのお客さまがこの「助手割引」を選ばれていますね。

そんなに引いてもらえるんですか!

金額が割り引かれることより、愛車の修理に携わるという体験をしたいと選ばれる方が多いですね。作業は午前10時から始めて、お昼休憩挟んで遅くとも午後3時には終わります。通常3時間半から4時間の作業時間ですね。

まあ僕という優秀な助手がいますから、速攻で終わっちゃうでしょうね!

……。
独自の生地を開発

まずは天井を外して、古い内張を剥がし、クリーニングして新しい生地を貼り、再度天井を車に取り付けるっていう流れになります。

事前に生地サンプルを送っていただいていましたよね。

生地は1mあたり8000円のものから用意しています。元々貼られているのは表地にウレタンスポンジが付いているものなんですが、当社で用意しているのはウレタンスポンジの上にもう1枚トリコットっていう薄い生地を貼り合わせた三層構造なんです。これがきれいに仕上げる秘訣でね、私の経験をもとに生地屋さんと一緒に開発したものなんですよ。


生地サンプルはバリエーションがいろいろあって、「カラーを変えるのも一興」なんて桑原さんにオススメされて迷っちゃいましたよ。

どうせ張り替えるならカラーチェンジして気分を変えれば、修繕じゃなくてカスタムですからね。天井を外すついでに断熱材や防音材を入れることもできますよ。

じゃあ持ち込みでこの布貼りたいとかもありですか?

不可能ではないけど、ある程度伸縮性があって、しかも難燃性の素材じゃないと車検に通りませんから実際は難しいですね。車検についていえば、カラーチェンジした場合は特に、品質表示のラベルを保管いただくようにお話ししています。車検で確認されたときに、ちゃんと安全性をクリアした素材であることの証明になるので。

なるほど、ちゃんと専用の生地なんですね。じゃあさっそく、ちゃちゃっとやっちゃいますか!
まずは天井を外す


では、天井を外していきましょう。古くなっていると樹脂パーツが割れてしまうこともあるので、丁寧にやってきます。作業はフリーランスの内装師をやってる娘のみなみと3人で進めます。

フリーランスのみなみ師匠! カッコいい……。

まずはバイザーから外しましょう。僕は運転席、今泉さんは助手席で。
ボルボは総じてプラスチックがもろいんですよ、割れないように慎重に。

うっ、うまく外れない……。

人間が作ったもの、人間が外せないはずがない!

師匠の手元見せてくださいよ。あー、なるほど、強引にはやらないけど力を入れる感じですね。ムズい。


その調子です。じゃあ僕はマップランプユニットを外していくので、助手席側のウエザーストリップを外していってください。(運転席側をやって見せながら)こんな感じで外れます。

わかりました。うわ、師匠の外してるところ、いっぱい配線が出てきましたね! 確かにそこはプロに任せたいな。っていうか、みなみさん、めちゃめちゃ仕事が早い!! 後ろがほぼ外れちゃってますよ。

今泉さんもがんばってください。

オレンジの粉がめっちゃ降ってくる~(泣)。

最も重要なのは古いウレタンを剥がす作業

さーて、天井が外れました。外に出して、きれいにクリーニングします。

ほとんど剥がれちゃってますから、剥がすのは簡単(笑)。しかし、ボロボロのウレタンが汚いなー。


これをきれいに取り除くのが、美しい仕上がりへの重要な作業です。ブラシを使うこともあるんですが、この状態だと濡れ雑巾がよさそうですね。

じゃあゴシゴシしていきまーす。

あるいはこうやって雪だるまを作るようにコロコロしていくのもいいかもしれません。このあたりは、使われている素材とか劣化具合によって感覚で判断します。

職人ぽくてかっこいい……。なんか僕、雑巾でこすっちゃったところがなんか汚く残っちゃいました。

大丈夫です、丁寧にやっていきましょう。古いウレタンをできるだけ残らないようにきれいにしてから、最後は溶剤で拭き上げて仕上げます。


いやあ、ひたすらコロコロ地味な作業だ……。XC90の天井ってこんなに大きかったんだな……。

クリーニングを仕上げたら、お昼休憩です。
刺激の少ない接着剤を使用


ウレタンを全部剥がし終わり、天板がまっさらな状態になりました。次は何を?

いよいよ新しい生地を貼っていきます。天井と生地の両方に接着剤をスプレーガンで均一に吹き付けていきます。


お、接着剤の吹き付けはみなみ師匠ですか! この接着剤ツンとこないんですね。

接着剤はホルムアルデヒドの発散濃度が一番低い「F☆☆☆☆(エフフォースター)」のものを使用しています。

じゃあ施工後に子供を乗せるのも安心ですね。しかし、みなみ師匠の吹き付けは見事ですね! これはさすがに僕はできそうにないな……。

接着剤の吹き付けと生地を載せるところまではプロにお任せください。


この作業もいっちょかみしたい……。

じゃあ、一緒にやりますか。そっちの端を持ってください。布目をまっすぐ合わせて、基本的には均一な厚さに、テンションをかけたいところはちょっと引っ張り気味になるように載せたいので、気をつけて、息を合わせて……。

やっぱり失敗しそうなんで、みなみさんへルプ!

ウレタンに直接接着剤を塗布するとやり直しがきかないんですけど、三層構造の特製の布地ですから、いったん載せちゃってからの微調整も利くので、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。

いやいや、プロにお任せします!

じゃあ、みなみ、そっち側よろしく。


あっという間にあうんの呼吸でばっちりじゃないですか。任せてよかった。

布地を置いたら、しっかり接着するようにこすっていきます。これは一緒にやりましょう。

はい、師匠!

こすり残しがないように、布目を乱さないように、シワを作らないように、内から外へ。


師匠、貼り付け完了です!

きれいにできましたね。では不要な生地をカットしていきましょう。マジックで線を描いていきますから、そこに沿ってカッターで切っていってください。

天井よりひと回り大きく切るんですね?

そうなんです。元々付いていた布地はぴったりのサイズでしたけど、ひと回り大きく切って、裏側に巻き付けるように折り返して接着すれば、仕上がりがきれいだし、耐久性もアップするので。


パーツを取り付ける部分の穴もきれいに仕上がって、天井は完成です。

やったー! 意外と早かったですね。

じゃあ、出来上がった天井を車内に戻しますよ。

そうだ、戻さなくちゃ。うっかり終わった気でいました。

天井置いて帰らないでくださいね(笑)。天井裏に収める配線の整理をして、きちんとテープで固定していきます。ある程度できたら、後は天井をはめながら、収まりを確認しながら進めていきましょう。じゃあ天井のそっち側を持っていただいて。僕はここを……。

お、無言でみなみ師匠が車内でサポート体制に入っている!

はい、傷つけないようにぶつけないように気をつけて……。

入った!


部品を元どおり組み付けていきますよ。

それがなかなか……収まんないもんですね。特にこの電装部品の配線がなんかじゃまをして、中が見えないし、狭いし。結構力いっぱいやってるんですけど、全然ネジが入っていかない……。

じゃあちょっと交代しましょう。おや、こりゃあネジ山なめちゃってるな……。

やばい! 僕やっちゃいました?

ちょっと斜めに押し込んじゃってたみたいですね。大丈夫ですよ、ネジ山切り直す工具もあるので。

助かります! ……え、まさかみなみ師匠ひとりですっかり後ろの方の組付け終わってる!? 忍者みたいですね。

いやあ、一時はどうなるかと思いましたが、無事組み付けも終わって完成しました! やったー!

念のため電装部品とアラート関係がきちんと作動するか確認しましょう。

よーし、問題なしです。今度こそ完成ですね?

はい、張り替えの全工程終了です。お疲れさまでした!


事後にケアすることは「特になし」

我ながら素晴らしい出来栄えですよ! 室内が明るくなって、新しい車に乗ってる気分です。こんなに印象が変わるんですね。もう今すぐここでビールが飲みたい!!

気持ちはよーくわかりますが、宿泊サービスはないので、おうちに帰るまでビールはおあずけで(笑)。

ちなみに明日以降何か気をつけることとかあるんですか?

特に何もありませんよ。接着剤が完全に乾燥するのは3週間後ですが、約95%は1日で固まるタイプのものなので、すでにほぼほぼくっついてます。例えば、ひと晩置いて朝乗り込むときなどに匂いを感じることもあるかもしれませんが、換気すればすぐ気にならなくなると思います。

大変でしたけど、おかげさまで楽しかったです。自分で手を動かすと、愛車に一層愛着が湧きますね。

これからも末永く大事に乗ってくださいね。天井に限らず、内装のリペアやカスタムもやってるので、また何かあったらお声がけください。

桑原師匠、みなみ師匠、今日は1日ありがとうございました!
今回の天井修復にかかった費用
・生地代金:2万700円(9000円×2.3m)
・施工費用:7万円
・助手割引:-1万円
→合計:8万700円


ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。
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