テリー伊藤の想像力をかき立てる「ルノー エクスプレス」。オススメするならどんな人?
2023/06/14
エクスプレスは乗り手のセンスが問われる車
今回は、「Coolman car」で出合ったルノー エクスプレスについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。
~語り:テリー伊藤~
初代ルノー カングーがヒットして、サイズを拡大した2代目カングーでファンをさらに増やしました。その様子を見ていたシトロエンとプジョーもついにベルランゴとリフターを日本に投入しましたね。新しい3代目カングーも含め、フレンチMPVはアウトドアでオシャレな雰囲気を楽しみたい人たちがこぞって選んでいます。
でも乗っている人たちを見ていると、まるで制服のようにアウトドアファッションに身を包んでいます。せっかく素敵な車を選んだのだから、人とは違うスタイルを楽しんだらいいのにと感じますね。
今回出合ったエクスプレスは1985年に登場した、シュペール5(サンク)ベースのフルゴネットバン。カングーの前身モデルです。
とても便利なモデルなのに、発売された当時の日本はソアラをはじめとするハイソカーや、プレリュードやシルビアといったデートカーの全盛期だったので、フルゴネットはほとんど注目されませんでした。
80年代後半から90年代前半はスキーブームでRVやステーションワゴンに注目が集まり、その後はホンダがステップワゴンを発売して大勢で乗れるミニバンがブームに。日本市場に限って言えば、エクスプレスはタイミングが悪かったのかもしれません。
エクスプレスにどう乗るかはセンスが問われますよ。取材時はまだ仕上げが完全に終わってない状態で、これからインテリアをキレイにするという話でした。
実車を見ていると、「チェックのシートが似合いそうだな、カーゴスペースにウッドを貼ると雰囲気が出そうだ」と、妄想がどんどん膨らんでいきます。
でもすべてをかなえようとするとあっという間に100万円以上かかってしまいそうです。約160万円の車を100万円以上かけてカスタムしたら、ものすごく大切にしないといけなくなるし、気軽に手放せなくなりそうです。
それは本意ではありません。どこを切り捨てて、ヤレた感じを残していくか。それを考えるのも楽しいでしょうね。
車はキレイに越したことはないですが、古い車があまりにも完璧に仕上がっていると神経質そうに感じてしまいます。自分らしさを出しつつ、ボロをどこまで許せるか。ここで乗り手の人間性が問われそうです。エクスプレスなら、きっと今どきのMPVとは違った感じで楽しめるはずですよ。
テリー伊藤ならこう乗る!
もしこの車を完璧に仕上げたら、InstagramやYouTubeでキャンプ風景をアップしているオシャレな人たちが飛びつきそうです。
もちろんそれも似合うでしょうが、僕はそういう感じとは全く別の存在、例えばミス日本に出場するような人や、パリッとしたビジネスマンに乗ってもらいたいと思いました。もちろん内外装を完璧に仕上げていない、適度にヤレた状態でね。
例えば、40代の素敵な女性がこの車の助手席に小学生くらいの子供を乗せて走っているのを見たら、みんなビックリしますよ。
「いったいあの人はどういう生活をしているのだろう?」
「住んでいる家の中はどうなっているのだろう?」
「普段、どんな食事を作っているのだろう?」
何もかもまったく想像がつかない。そういう感じがものすごく似合う気がしました。
エクスプレスは形状こそ独特ですが、派手さがあるわけではないので、ともすると街を走っていても見過ごされてしまうかもしれません。でもそんな車にファッション感度の高い人が乗ることで、みんなが存在に気づくはずです。
ファッション感度の高い人が乗るようになったことで多くの人に注目されたモデルといえば、まず思い浮かぶのがミニではないでしょうか。
例えば、ユルい感じに仕上げたエクスプレスをCMで使ったりしたら、一気に流行るでしょうね。若者に人気の俳優が運転して、車の前でコーヒーを飲んでいるシーンが放送されたら、「あれは何だ?」「どこで買えるんだ?」と騒ぎになりそうです。
「僕ならこの車をどう乗る?」という質問ですが、これは僕みたいなおじいさんより、若い子たちに楽しんでほしいですね。その方が車がイキイキすると思います。
きっといろんなアイデアを出して、広い荷室を楽しく使ってくれるでしょう。僕だと「奥行きを生かして大間のマグロを積もう」といった変なことしか思い浮かばないですからね。
あるいは、軽井沢に住んでいるような方も様になりそうです。
今、軽井沢には東京からの移住者がものすごく増えているのです。特に目立つのは50代の女性。僕が軽井沢に行ったときにカフェに入るとそういう人たちがたくさんいるので話を聞いてみたら、若い頃は原宿などで遊んでいたけれど、今の原宿は若い子向けのお店ばかりになってしまったから東京で遊ぶ場所がなくなったと嘆いています。
それでコロナ禍になってリモートワークができるようになったことをきっかけに、東京の家を縮小して軽井沢での暮らしを楽しむようになったのだそうです。
若い頃に最先端の流行を生み出してきたので、もちろん今でもすごくオシャレ。そんな彼女たちならエクスプレスをどう乗りこなすのか。とても興味がありますね。
ルノー エクスプレス
2代目の5(シュペール5)をベースにしたフルゴネット(デリバリーバン)のエクスプレス。キャビンの後ろに大きな箱を載せたようなスタイルが特徴で、カーゴスペースのガラスがふさがれたバン仕様と、ガラスを生かした乗用仕様が用意された。フランスの他に台湾などでも生産され、今回取材したガソリンエンジンのGTLはフランス製のモデルになる。2000年に生産が終了するまで、2度の大きな改良が施されていて、それぞれフェイズ1、フェイズ2、フェイズ3と区別される。
演出家
テリー伊藤(演出家)
1949年、東京・築地生まれ。早稲田実業高等部を経て日本大学経済学部を卒業。2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。現在は演出業のほか、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。テリーさんの半生を綴った「出禁の男 テリー伊藤伝」(イーストプレス)が発売中。TOKYO MXでテリーさんと土屋圭市さんが車のあれこれを語る「テリー土屋のくるまの話」(第1・3・5日曜日/12:30~12:55)が放送中。YouTube公式チャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』も配信中。