テリー伊藤がヒーレー スプライトを見た瞬間、車に心を支配される
2022/06/28
イギリス車は厄介。でもそれでいいのです
今回は、「パルクフェルメ トウキョウ」で出合ったヒーレー スプライトについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。
~語り:テリー伊藤~
今回はクラシックなイギリス車を数多く扱う素敵な店を紹介します。パルクフェルメ トウキョウ。僕の自宅からほど近い場所にあるのに、まったく存在に気づきませんでした。僕もまだまだですね。
店の佇まい、フロアに貼られた木の味わい。これらは一朝一夕で作れるものではありません。オーナーがこだわって作り、そこに多くの車やお客さんとのストーリーがあったからこその雰囲気なのだと感じます。
店内に一歩足を踏み入れた瞬間、僕はこのお店が大好きになりました。
イギリス車の専門店というと、敷居の高さを感じる人も多いでしょう。なぜか。僕はイギリス車が理屈っぽいからだと思っています。
対象的な存在であるアメリカ車は専門店に入るとオールディーズが流れていて、店長はアロハシャツを着て接客している。とにかく陽気です。
車選びも“モテること”が第一条件。今の若者たちがどうかわかりませんが、僕が若い頃はそれしか考えていませんでしたからね。
対するイギリス車は箱庭のようなもので、細部にまでこだわるイメージがあります。そして、車のストーリーを知識として持っていないと乗ってはいけない雰囲気もある。はっきり言って厄介な存在ですよ。“モテ視点”で選ぼうものなら、たちまち店長から怒られてしまいそうです。
僕は若いときに兄貴が乗っていたトライアンフ スピットファイアをこっそり借りて、六本木や銀座でナンパをしていました。でも、一度たりともうまくいったことがありません。
オープンカーはモテそうなイメージがありますが、2人しか乗れないし風を巻き込むから敬遠されるのです。仕方なく1人で走っていると、今度は「気難しそうだな」「自分のことが好きなのだろうな」と思われてしまう。前途多難です。
でもね、僕はそんなイギリス車が大好きです。もう何十年も僕のガレージにはモーガンとミニモークという2台のイギリス車が置いてあります。
僕はダメな男で、すごく気に入って買った車でもすぐ他の車に目移りして買い替えてしまう。何度となく反省してもこの性格だけは直せずにいます。でも、モーガンとミニモークだけは手放せずにうちのガレージにあり続けています。
きっと僕にとってイギリス車は若い頃から身近な存在だったのかもしれないですね。兄貴がスピットファイアに乗っていたこともあるし、10代の頃はミニやモーガンへの憧れが大きかった。そして、トライアンフ TR-3をはじめ、Bow。さんが描く古いイギリス車の絵が大好きでした。
日本では1970年代にスーパーカーブームが訪れました。でも、僕はそことは路線が違う小さなイギリス車で、英国の田園風景の中を走ることを夢見ていたのです。
“カニ目”の愛称で呼ばれるヒーレー スプライトも厄介だと思います。車に対する愛情と、愛情を注ぐ時間、そしてある程度の予算がないと、たとえ所有しても恋は実らない。
お店を訪れるまではカニ目のことなんて気にもしていなかったのに、車を見た瞬間に僕の心の60%以上がカニ目に支配されています。本気で欲しくなってしまいました。だからイギリス車は厄介なのです。
テリー伊藤ならこう乗る!
このリーフグリーンのスプライトは塗装もきれいだし、シートも張り替えてあるので気持ちよく乗れそうです。
僕がこのスプライトを手に入れたら、健康サンダルのような感覚で乗ります。古い車だからといって気取ることはなく、ちょっとそこまで買い物に行くときでもサンダル代わりに乗っていきたい。
でも、スタイルにはこだわりたい。ボディがとてもきれいなので、これを生かしつつ黄色いトノカバーを付けるとかっこよさそうですね。ユニオンジャック柄のトノカバーも似合うと思いますよ。
1980年代にロールスロイス シルバーシャドウに乗ったときは、ファイアーパターンのエクステリア、ヒョウ柄のインテリア、MOONのホイールというヘビメタ仕様にしました。僕の中に今でも記憶に残るカッコいい1台です。
さすがにヒーレーでそこまでやる気はありませんが、人とはちょっと違う形で乗りたいですよね。
古いイギリス車というとどうしても壊れるイメージがあります。でも、それは過去の話。というのも、他の国のクラシックカーと違ってイギリス車は社外品のパーツがたくさん流通していて、その信頼性が高くなっているのだとか。
だからオーバーヒートしました、バッテリー上がりです、ということが本当に少なくなったと言います。もちろんゼロトラブルというわけにはいきませんが、12ヵ月と24ヵ月の点検をしっかりやりオイルなどの消耗品をきちんと交換しさえすれば大丈夫とのことでした。
ただ、エアコンは付いてないので夏はじっとしているしかありませんね。秋までこの愛らしい姿を眺めて楽しみましょう。
ヒーレー スプライト Mk1
ヘッドライトの形状に象徴される特徴的な外観から“カニ目”と呼ばれるスプライトMk1。海外では“フロッグアイ”“バグアイ”とも呼ばれている。1958年から1961年まで製造されたモデルで、搭載エンジンは948ccの水冷直列4気筒OHVで、最高出力は34馬力。駆動方式はFRになる。1961年に登場したMk2は、MG ミジェットとの兄弟車になり、フロントフェイスが大きく変更された。
演出家
テリー伊藤
1949年、東京・築地生まれ。早稲田実業高等部を経て日本大学経済学部を卒業。現在、慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科に在籍。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。現在は演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。最新刊「出禁の男 テリー伊藤伝」(イーストプレス)が発売中。また、TOKYO MXでテリーさんと土屋圭市さんが車のあれこれを語る新番組「テリー土屋のくるまの話」(毎週月曜26:35~)が放送中。YouTube公式チャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』も配信中。