「Mazda Co-Pilot Concept」先行体験試乗レビュー
2021/11/15
プロトタイプを体験試乗
クルマが副操縦士となって、主たる操縦士であるドライバーをサポートする。そんなかたちの自動運転として発表されたマツダ・コ・パイロット・コンセプト。
MAZDA CO-PILOT 1.0は2022年にも市販車に搭載されることになるが、今回はマツダのテストコースにて2025年の導入を目指して開発中のMAZDA CO-PILOT 2.0を実際に試すことができた。
MAZDA3をベースとする試作車は、見てのとおりボディの各部にたくさんのカメラが装着されている。追加分は全部で12個。さらに、室内カメラ1個、高精度地図、ロケーターECUが追加され、ECUもまだ試作モデルという状況だった。
MAZDA CO-PILOT 1.0は既存モデルに搭載されたカメラ、センサー類に追加の必要なく搭載することができる。一方、MAZDA CO-PILOT 2.0は必要な場合には車線変更や非常停止帯への停止を行なうため、自車周辺の状況をより詳しく、正確に知る必要があるし、また当然、実際に停車可能な場所かどうかが判断できるほど詳細な地図も必要になることから、こんな外観になっているのだ。
試したのは、まず居眠り検知である。
運転席に乗り込んで走り出し、しばらくしたところで同乗のエンジニア氏からの指示に従って目を閉じ、上体を内側にもたれさせていく。そうするとクルマは居眠り運転と判断。車内には表示と警告音が鳴り響き、そのまま自動運転モードに入る。
外部にもホーン、ハザード、そしてブレーキランプの高速点滅で異常事態であることが伝えられる。
クルマはそのまま速度を落としながら車線内を走行していき、必要であれば左側の車線にも自動で移る。前走車が居る場合には追従し、追い越しなどは行なわない。そして最終的に路肩もしくは非常停車帯に停止。同時に緊急通報が行なわれ、救出に備えてドアロックが解除される。
本来ならばドライバーが眠気を催しているという予兆の段階でクルマは警告を発する。それで反応がないときに初めて、車両が減速し始めるというかたちだ。今回は体験ということで、そこを飛ばしての試乗となった。
身体の異常検知の場合も、動作はほぼ同様。走行中に意識を失ったと仮定し上体をセンターコンソール側に倒すと、すぐに警告が発され、運転への復帰がなければ安全な場所へと移動し停止させるという制御が始まる。
実際に動いているところが気になる方は、ぜひ動画でも見てほしい。
▼島下泰久と難波賢二のYoutubeチャンネル「Ride Now - Smart Mobility Review」より 試乗動画
実際には居眠り、身体異常の場合のいずれも、上体が倒れたりする前からすでにクルマの側は運転操作、頭部の挙動、そして視線の特定箇所への偏りの有無などのパラメータから予兆を検知している。運転操作とは、いつもの運転と異なり、例えば修正が多かったり操作が荒かったりといったこと。頭部の挙動は、前後左右に揺れていたりということをチェックしている。
そして、視線の特定箇所への偏りというのがマツダ独自の研究ノウハウが生きたところ。人の脳機能が低下すると、意識的に注意が必要なところに向かう視線挙動に異常をきたし、無意識的なエリアに視線が集中しがちになるのだという。つまり、視線挙動から脳機能レベルを推し量ることができるというわけだ。
これによってMAZDA CO-PILOT 2.0は、ヘルプネットボタンが押されなくても介入できるようになった。もちろん自分で、あるいは同乗者の手でヘルプネットボタンが押された場合にもシステムは同じように動作する。加減速、そして旋回時には同乗者を不安にさせないために挙動をスムーズにつなぐよう制御されているといい、実際に一般道を模したワインディングコースで試したときには、非常にスムーズな運転、もとい自動運転ぶりに驚かされたのだった。
実際の運用としては、例えば人里離れた山道でドライバーが意識を失ったとき、すぐ近くに停車して緊急車両の到着を待つよりも、自動的に合流地点が設定され、そこに向かってクルマと緊急車両が走っていくことができれば、より早い対処が可能になるといったことも考えれそう。そんなことまで考えればなおのこと将来性、有用性はとても高いものだと感じられた。
マツダ・コ・パイロット・コンセプトは、運転することを愛するドライバーにとっても嬉しい自動運転技術と言える。それを実現できたのは、まさに人に対する深い理解。実際に体験して、これぞマツダらしい取り組みだと大いに実感させられたのだった。