フォルクスワーゲンタイプII▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

タイプIIの代わりにマツダ ボンゴをキャンピング仕様に

~語り:テリー伊藤~

“ワーゲンバス”こと、フォルクスワーゲン タイプII。僕の中で、永遠のアイドルです。

大学生の頃、高くて買えるわけがないのにタイプⅡに憧れ、「手に入れたらどこに行こう」と妄想していました。

実家がある築地にタイプⅡを持っている人がいて、毎日自転車で見に行っていたのを思い出します。生まれて初めて、生で見たタイプⅡは本当にカッコよかった。

結局僕は我慢ができなくなり、中古車で古いマツダ ボンゴを手に入れて、内装を全部剥がしてタイプIIに乗っている気分を味わいながら日本全国を旅しました。

フォルクスワーゲンタイプII▲ウェストファリアはフォルクスワーゲンのコーチビルダー。タイプIIの中古車にはウェストファリア仕様が多くあります

タイプIIはかわいいルックスをしていますが、冒険心に溢れたモデルです。

僕の中でタイプIIのキャンピング仕様のイメージがある有名人といえば、マイク眞木さん。彼のアメリカンなライフスタイルは本当にカッコよくて、若い頃に憧れました。

フォルクスワーゲンタイプII▲レイトバスの中でも1971年までのものは“アーリーレイト”、1973年以降は“レイトレイト”と区別されます。アーリーレイトとレイトレイトは、フロントのウインカーの位置(アーリーレイトはライトの下、レイトレイトはライトの上にある)で見分けるとわかりやすいですよ

眞木さんは当時アメリカ横断もしていたはずです。LAからニューヨークまで、ルート66を走ってキャンピングカーで横断する。

当時はウッドストックもあったヒッピーの時代です。途中で車を止めてギターを弾いている姿を想像してみてください。カッコ良すぎますよ。

アメリカには行けないけれど、少しでもそこに近づきたい。僕がボンゴで日本中を旅したのはそんな思いからでした。

フォルクスワーゲンタイプII▲アーリーレイトのポップアップルーフは後ろ側が上がり、レイトレイトは前側が上がるという違いがあります
フォルクスワーゲンタイプII▲取材車両のポップアップルーフには大人2人が寝られるスペースが確保されていました。ベッドではなくコットが備えられた仕様もあります

アメリカといえば、キャスターの辛坊治郎さんがついにヨットでの太平洋単独無寄港横断を成功させてサンディエゴに到着しました。素晴らしいことです。何歳になっても冒険心をもっている人は本当にカッコいいし、僕の年になっても憧れの存在ですよ。

今、キャンピングカーが大流行しています。キャンピングカーもどんどん進化していて、ハイエースベースのものなどは本当に快適になりました。

そんな中で、あえてタイプⅡを選ぶ人は侍のよう。漢気を感じます。

フォルクスワーゲンタイプII▲最新設備が充実したキャンピングカーが人気の中で、あえて古い車を選ぶ人は侍です

テリー伊藤ならこう乗る!

由々しき問題だと感じるのは、人気が出すぎてタイプⅠやタイプⅡの相場が跳ね上がっていること。もはや気軽に乗れる車ではなくなってしまいました。

どちらもカジュアルさがカッコよかったのに、気づいたら骨董品扱いです。

でも、今後はますます高くなっていくはずですから、欲しい人は早めに買った方がいいでしょうね。

フォルクスワーゲンタイプII▲助手席を反転させて後ろのソファと向かい合わせにできます

タイプIIのルックスはかわいいですからね。僕のようなおじいさんだけでなく、若い人たちからも人気があるそうです。

でも、若い人たちが僕でもわかる価値観を追いかけているというのは、ちょっと残念だなと感じています。

若い人たちにはもっと奇想天外な、「うわっ、それをカッコよく乗りこなすのか」というものを見せてほしい。

フォルクスワーゲンタイプII▲黄色いチェックで統一したインテリアがとてもオシャレ!

例えば今、若い人たちの間でトヨタのプロボックスが流行していますよね。黒い鉄ホイールを履き、アースカラーに塗り替えてリフトアップする。

あれを見たとき、「そうか、今はこういうファッションが流行っているのか」と驚きました。そして、彼らのセンスを参考にさせてもらった。

逆に、古いワーゲンはハーレーを白バイ風に乗るのと同じ。ある意味、“安全牌”なのかもしれません。

いろいろな情報があるから、感覚ではなく知識で選べるのですよね。自分に自信がないと、ついつい知識に頼ってしまうもの。

フォルクスワーゲンタイプII▲味のあるシンクとコンロ。美味しいコーヒーを入れたいですね

お金をかけなくても、かっこいい世界観を生み出せるのが若者の特権です。古いワーゲンの中古車相場が跳ね上がってしまった今、こちらの世界はおじさんに任せて、もっと独創的な感覚で車を楽しんでもらいたいですね。

僕も過去にタイプIIに乗ろうと思ったことが何度かあって、実際にショップで試乗までしました。でも、結局は「手放す車がない」という理由で購入にいたりませんでした。

僕が今タイプIIを選ぶなら、完璧に仕上げたものではなくあえて錆などが浮いているものを探します。その方が使い込んでいる感じがするし、自然ですよね。

そして、もしまとまった休みが取れたら、若い頃にボンゴでチャレンジした日本一周の旅をしたい。

でも今、ボロボロのタイプIIで旅に出るのは勇気が入ります。突然動かなくなったり、どこかが壊れたりと、それぞれの都道府県でひとつは何かしらエピソードが生まれそうです。

その模様を全部映像に残して、YouTubeにアップするのも面白そうです。

フォルクスワーゲンタイプII▲タイプIIで旅をするのは永遠の憧れ。冒険心に溢れた人に実現してもらいたいです

ただ、本当に日本一周の旅に出ることになったら、直前でビビって最新のSUV、例えばヤリスクロスを選ぶかもしれません。「ハイブリッドだしこっちの方が燃費いいから」と言い訳をしたりしてね。

そう考えると僕は冒険心をもっていないのかもしれない。やはりタイプIIは、冒険心溢れる人に乗ってもらいたいですね。

フォルクスワーゲン タイプII

1950年に登場したワンボックス型のフォルクスワーゲンで、“ワーゲンバス”の愛称で呼ばれることも多い人気モデル。タイプI(ビートル)をベースに開発されているため、リアエンジンリアドライブの形式になる。1967年まで製造されたものを“アーリーバス”、1968年から1979年までのものは“レイトバス”と呼ばれる。今回取材したのは1978年式のレイトレイトで、フォルクスワーゲンのコーチビルダーであるウェストファリアが手がけたキャンピング仕様。

文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/柳田由人

テリー伊藤

演出家

テリー伊藤

1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『爆報!THE フライデー』(TBS系/毎週金曜19:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。新著『老後論~この期に及んでまだ幸せになりたいか?』(竹書房)が発売中。You Tubeチャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』を開設!