劇中車

【連載:図説で愛でる劇中車】
国内外問わず様々な映像作品(アニメも含め!?)に登場したあんな車やこんな車を、イラストレーター遠藤イヅルが愛情たっぷりに図説する不定期連載!

第20回は、1980年代を代表するアメリカのSFアクション映画「ロボコップ」シリーズとその続編、さらに近年のリブート作、そしてTVシリーズまで範囲を広げ、登場した車を取り上げます。
 

ロボコップのパトカー「トーラス」と、印象的な映画オリジナルカー「SUX6000」

トーラス

1987年公開の映画「ロボコップ」第1作。時は近未来、場所はアメリカ・デトロイト。かつて自動車産業が隆盛を極めた街は荒廃し、巨大企業「オムニ社(OCP=オムニ・コンシューマー・プロダクツ)」によって支配されていた。

多発する犯罪撲滅のため、オムニ社は殉職した警官・マーフィの体を使って、サイボーグ警官「ロボコップ」を生み出した……という導入で始まるロボコップ。

警察が舞台なので、映画内では多数のパトカーが出てきますが、基本的には1986年デビューの初代「フォード トーラス」を用いていました。

グリルレスのマスク、なめらかなデザインのトーラスは、近未来の世界観を演出するのに最適。マットブラックのボディカラーも退廃感の表現に効果的で、大きな改造なしで未来都市のパトカーのイメージを作り出していました。

なお、主人公マーフィ=ロボコップも、このトーラスで出動。サイボーグとはいえ、ロボットが車を運転するのって、なんだか妙な感じではありますが……(笑)。

第1作に出てくる車で、忘れてはいけないのが「SUX6000(SUVじゃないよ!)」でしょう。

古き良きアメリカ車のような大きな車体と、未来風の意匠を合体したSUX6000は、劇中のTVCMにも登場。「AN AMERICAN TRADITION 8.2 M.P.G.」というテロップが確認できますが、8.2 M.P.G.とは、マイル・パー・ガロンのこと。計算してみたらリッターあたり約3.5kmにしかなりません。燃費悪い(笑)!

そんな近未来車SUX6000ですが、ベース車は1977年型の「シボレーカトラス シュープリーム」という、古めのアメリカ車だったりするのは、面白いところです。
 

えっ、こんな車種にも? ロボコップが乗った意外な車とは

マスタング

「ロボコップ」には、1990年の「ロボコップ2」、1993年の「ロボコップ3」という続編があり、基本設定は同じ。パトカーも、相変わらずトーラスが活躍します。しかも3作目になると、トーラスも「やられ役」に(涙)。

その「ロボコップ3」では、ロボコップはトーラス以外にも、なんとピンク色の「リンカーン コンチネンタル マークV」に乗って、相手を追いかけたりします。

また、ロボコップには、映画の設定をベースにしたTVシリーズも数本存在し、その中の「ロボコップ ザ・シリーズ」(1994年)では、ロボコップは1994年型「フォード マスタングGT」を使っていました。

なお、映画第1作の際は、出たばかりのトーラスのクリーンなイメージを、「バイオレンス色が強い映画で壊したくない」として、フォードは車両を提供していません。

でも、1990年代に入るともはやロボコップ人気は不動だったので、フォードは、発売直後のマスタングを提供。しかもそれは、高性能版「GT」のプロトタイプだったとのことです。
 

リブート版でも「トーラス」登場! なぜか日本の軽自動車も!?

トーラス

ロボコップの名を冠した作品はこれだけでなく、1989年のアニメ版や2001年に再び製作されたTV版(プライム・ディレクティヴ)がありました。

映画では2014年、設定やストーリーを大きく変えたリブート版のロボコップを公開。ロボコップの乗り物も、バイクがメインになりました。

でも、やはりロボコップのパトカーといえばトーラス。2013年頃のトーラスに、映画の舞台・2028年をイメージした装飾が施されていました。目立った活躍はありませんが……(涙)。

そして、本作最大のナゾ(?)が、劇中に頻繁に登場する日本の軽自動車。

2000年前後の「ホンダ ライフ」「ホンダ バモス」。さらには「スバル R2」が、北米(撮影自体はカナダ)の街を走り回っていること。軽自動車以外にも、「トヨタ WiLL VS」の姿なども確認できます。

これら車種は、海外では販売されていないはずなので、この映画のためにわざわざ輸入したのでしょうか。ライフやWiLL VSのデザインは未来的でもあるので、違和感なく画面内に映っていたことが思い出されます。
 

車好きにも見どころたっぷりなロボコップ

今回の「ロボコップ」は、映画・TVなどシリーズが多く、出てくる車も膨大です。画面のあちこちに映る車を見ているだけでも、車好きは楽しめそうです。

その中から6台を選ぶのはかなり悩みましたが、ひとこと言えるのは、やはりロボコップといえばトーラスである、と言うことです(笑)。

それでは次回の「図説で愛でる劇中車」をお楽しみに!
 

文・絵/遠藤イヅル
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遠藤イヅル(えんどういづる)

イラストレーター/ライター

遠藤イヅル

1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はサーブ900、VWサンタナほか実用的な車ばかり。