▲最近のファッション誌などでよく見る「抜け感」という、わかるようなわからないような言葉。それってそもそもどういう意味? そして車で言うとどんなモデルが相当するの? 勝手に考えてみました! ▲最近のファッション誌などでよく見る「抜け感」という、わかるようなわからないような言葉。それってそもそもどういう意味? そして車で言うとどんなモデルが相当するの? 勝手に考えてみました!

近頃のファッションは「抜け感」が非常に重要?

過日の散髪中、美容師さんがしきりに「抜け」がどうのこうのと言っている。……ついに来たか。長持ちした方だと思うし、鏡で前から見る分にはわからないのだが、わたしの頭頂部の毛髪はずいぶんと抜け落ちているのだろう。上から見ている美容師さんがそう言うのだから、間違いあるまい。

「……わかりました。では先ほどの『ディーン・フジオカみたいにしてくれ』というオーダーは取り消しますので、松本人志みたいな坊主ヘアにしちゃってください」

断腸の思いでそう言った。が、美容師さんは「……は?」という感じでキョトンとしている。その後詳しく聞くと、美容師さんは「抜け毛」ではなく「抜け感」というものについて言及していたらしい。

近頃よく聞く「抜け感」なる言葉。いくつかのファッション系ウェブサイトによれば、「抜け感」とは『カッチリとしたコーディネイトの中に、どこか肩の力を抜いたようなリラックス感を取り入れたニュアンス』のことらしい。で、どうやら最近はそのニュアンスが大流行していて、「抜け感」を上手に取り入れるのが「モテ」の秘訣であるようだ。ううむ、そうだったのか。

▲「抜け感のある髪型」「○○なボトムスで抜け感を演出」みたいなフレーズを雑誌やウェブでしばしば目にするが、実は筆者はその意味をよくわかっていなかった。ていうかわかってない人、筆者以外にも多いのでは? ▲「抜け感のある髪型」「○○なボトムスで抜け感を演出」みたいなフレーズを雑誌やウェブでしばしば目にするが、実は筆者はその意味をよくわかっていなかった。ていうかわかってない人、筆者以外にも多いのでは?

ついに「抜け感」の意味を把握。そして「抜け感CAR」の選定へ

しかし、さらに調べてみると世の中には「こなれ感」という言葉もあるらしい。……それと「抜け感」とは何が違うのか? そして「抜け感」には、前述の意味の他に「カッチリと重たくなりすぎないための肌見せコーディネイト」という意味もあるとのこと。……混乱は深まるばかりである。

しかしながら各種ウェブサイトおよびコンビニで買ったファッション誌複数と丸半日がかりで格闘した結果、ついにわたしは「抜け感」と「こなれ感」の真髄をつかんだ。それは以下のとおりである。

●抜け感=全体的にフォーマル寄りなのだが、一部にあえて「隙」を作っている様(肌見せは、数ある「隙を作る技術」の一つ)

●こなれ感=全体的にカジュアル寄りでリラックス志向なのだが、上品にまとまっている様

……専門家ではないので間違っている可能性もあるが、おおむねの真髄はつかめていると確信している。これが、おそらくは「抜け感」の正体だ。そして「抜け感」がなぜモテにつながるかというと、世の中は何でも「ちょっと隙があるモノ」の方が人気が出やすいからである。

完璧すぎるモノは息が詰まる。ていうか、今やそういった「完璧すぎ」はかえってダサい。かといって「隙だらけ」というのもかなりアレだし……ということで、「上品でフォーマルななかに、ちょっとだけ隙というか可愛げがある状態」すなわち抜け感が、人々のマインドをつかむのである。

物事がここまで解明されたのであれば、お次はこの概念を自分の得意分野である「車」に流用するほかない。つまり「抜け感のある車」に乗ることで、大いなるモテという大いなる野望を実現させるのだ。

善は急げとばかりに、わたしは「抜け感CAR」の選定作業に入った。

▲「足首を見せる=抜け感が出る」という単純な図式ではないが、有効な手法の一つであることは確か。さて、車でそういった「抜け感」を演出したい場合は、何をどうやって選べばいいのだろうか? ▲「足首を見せる=抜け感が出る」という単純な図式ではないが、有効な手法の一つであることは確か。さて、車でそういった「抜け感」を演出したい場合は、何をどうやって選べばいいのだろうか?

「上質さのなかに少々の隙がある車」を探せ!

そして再び半日後。選定作業は終わった。第1のカテゴリーは以下のとおりである。

【カテゴリー1:ちょっとした古さが絶妙な「隙」になる車】

「キメキメのカッコいい車に乗りたい」と思うのが自動車好きの、特に車好き男子の本能かもしれないが、今の時代「キメキメすぎ」はあまりよろしくない。ということで、もともとはかなりキメキメ系の車だったのだが、歳月が経過したことでちょうどいい具合に古びてきた(=絶妙な隙が生まれてきた)車に乗れば、結果としてちょうどいい「抜け感」が発生するはず。例えば、コレである。

▲03年1月から07年9月まで販売された旧型 日産 スカイラインクーペ。中古車相場は30万~100万円付近 ▲03年1月から07年9月まで販売された旧型 日産 スカイラインクーペ。中古車相場は30万~100万円付近

言わずと知れた4代目の日産 スカイライン クーペ。新車として販売されていた00年代半ば頃は超絶イケメンというか、「英語のディベートでも余裕でアメリカ人に勝てる帰国子女」みたいなイメージもあった。しかし販売終了から約10年が経過した今、そのイケメン感とエリート感はほぼそのままに、微妙な古さが加わった。その古さこそが、現在のこの車の絶妙な「隙」である。「抜け感」なのである。

また、初代 アウディ TTも同種の存在と言えよう。

▲自動車デザインの世界に衝撃を与えた初代アウディ TT。新車販売期間は99年10月から06年9月で、ここ最近の中古車相場はおおむね40万~120万円といったところ ▲自動車デザインの世界に衝撃を与えた初代アウディ TT。新車販売期間は99年10月から06年9月で、ここ最近の中古車相場はおおむね40万~120万円といったところ

個性的でありながら、イケメンすぎるほどイケメンなデザイン。しかし販売終了から11年がたった今、そこにはある種の哀愁も漂ってきている。ただしそれこそが若造(?)である現行TTには決して出せない最高の抜け感だ。まるで46歳となった俳優・西島秀俊のような。


【カテゴリー2:ちょい小さめという「サイズ感」が隙になる車】

有名ブランドのデカい車。それはそれで当然ステキだが、しかしそこに「可愛げ=隙」はない。かといってコンパクトカーや軽自動車に乗るつもりもない……という場合は、同じブランドのなかでも「ちょい小さめ」の車種をあえて選ぶと、絶妙な抜け感が生まれるだろう。例えば、コレ。

▲15年2月から販売中のコンパクト・クロスオーバー、マツダ CX-3。昨年10月にマイナーチェンジが実施されたが、それ以前のモデルであれば中古車は170万~250万円付近で探すことができる ▲15年2月から販売中のコンパクト・クロスオーバー、マツダ CX-3。昨年10月にマイナーチェンジが実施されたが、それ以前のモデルであれば中古車は170万~250万円付近で探すことができる

マツダ CX-3だ。「どうせならデカい方のCX-5で」と思うかもしれない。もちろんそれはそれでアリだが、もはややみくもにサイズ感を追う時代でもあるまい。そして、今や「高級ブランド」とも言えそうなオーラを発し始めたマツダのデカいCX-5は、見る人にもよるが「おっきくて怖そうな車……」との感慨も持たれやすい。しかしやや小さめなCX-3であれば、CX-5と同種の最先端フォーマル系デザインでありながら、そこはかとない「可愛げ」も感じられる。そこが「抜けポイント」である。

輸入車でもOKなら、ジープのレネゲードも最高の「抜け感CAR」となるはずだ。本格オフローダーであるジープ ラングラーの硬派な香りを受け継ぎつつも、コンパクトな(といっても日本で使うには十分以上な)サイズとポップなデザイン。絶妙な抜け感である。

▲ジープ レネゲード(現行型)。15年9月に登場した、「アーバンサイズ。アドベンチャークラス」をテーマに掲げたジープ初のスモールSUV。スモールといっても全幅は1805mm。中古車相場は240万~300万円あたりだ ▲ジープ レネゲード(現行型)。15年9月に登場した、「アーバンサイズ。アドベンチャークラス」をテーマに掲げたジープ初のスモールSUV。スモールといっても全幅は1805mm。中古車相場は240万~300万円あたりだ

【カテゴリー3:肌見せ=屋根開けで全体のトーンを調整する】

洋服における「肌見せによる抜け感の創出」と同種の効果は、当然ながら「オープンカー」によって作り出すことが可能だ。例えばコレである。

▲英国日産が開発から生産まで行った、旧型マイクラ(旧型マーチ)ベースのクーペ・カブリオレであるマイクラCプラスC。中古車の流通量はやや少なめだが、40万~120万円付近の車両価格でそれなりに探すことはできる ▲英国日産が開発から生産まで行った、旧型マイクラ(旧型マーチ)ベースのクーペ・カブリオレであるマイクラCプラスC。中古車の流通量はやや少なめだが、40万~120万円付近の車両価格でそれなりに探すことはできる

日産のマイクラCプラスC。……よく考えてみると、同種というか逆であろうか。普通の旧型日産 マーチだと単なる「カジュアル」になってしまうわけだが、マイクラCプラスCに乗って「肌見せ=屋根開け」をすることで、そこはかとない上級感というかハリウッドセレブ感というか、そういったニュアンスが生まれる。そして全体として、ちょうどいい「抜け感CAR」が完成するのだ。

これと同じ理論は、輸入車であるフィアット 500系にも当てはまる。

▲小粋なデザインで人気のフィアット 500に追加されたオープンモデル、フィアット 500C。ピラー(柱)を残してルーフ前端からリアウインドウ下端までソフトトップが開く。中古車相場は90万~220万円ほどと上下に広い ▲小粋なデザインで人気のフィアット 500に追加されたオープンモデル、フィアット 500C。ピラー(柱)を残してルーフ前端からリアウインドウ下端までソフトトップが開く。中古車相場は90万~220万円ほどと上下に広い

固定屋根があるフツーのフィアット 500は「ちょっとおしゃれなカジュアルウェア」といったところだが、同じ500でもルーフが開く「500C」で肌見せをすれば、まるでハリウッド女優のセカンドカーのようなセレブ感が醸成され、これまた全体として見ればちょうどいいバランスとなるだろう。

以上6モデルの「抜け感CAR」。……これが本当に「抜け感」に関する正解なのか、そしてこれらに乗れば本当にモテるのかは、正直わからない(すみません)。

しかし、時代のムードをそれなりにつかんでいる選択ではあるはずだ。気になる方は、ぜひ個別の物件の方もチェックしていただけたら幸いだ。

text/伊達軍曹
photo/アウディ、photoAC、日産自動車、マツダ、フィアット・クライスラー、ジープ