’65 FIAT 500F
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2012/11/22

時代を作るには良いと思ったことを採用する技量が必要
全長3m以下のコンパクトなボディ、空冷2気筒のOHVエンジン、RRのパッケージ、なによりその愛らしいデザインで世界的な大ヒット車に。日本では「ルパン三世」の愛車として登場したことでも広く知られている。登場以後、幾度もマイナーチェンジを行い、最終的には75年まで製造されるロングセラーモデルとなった。
徳大寺 今回の特集はSUVらしいけど、このコーナーでは難しいな。
松本 前のSUVのときは初代ワゴニアでしたね。今回はあえてSUVとは対極の、今日を予感させるマイクロカーを取り上げることにしました。
徳大寺 わかったぞ、ヌォーバチンクエチェント(NOVA500)だろう! あの車は可愛いよな。フィアットは戦前から大衆向けのモデルを考えていたんだ。1930年代といったら車は限られた人の乗り物だったんだけど、フィアットの総帥ジョバンニ・アニエッリは司令塔となって命令を下したんだよ。
松本 だからこそ、今日の大衆車の味方、フィアット社があるわけですね。アニエッリは偉い人ですね。車は自分自身を含めた富裕層のものとはせずに、常に大衆を意識していたんですから。現在でも創業家であるアニエッリ一族に発言権があるのもうなずけますね。
徳大寺 今日、見に行くのは戦後モデルの2代目のほうだね。楽しみだ。
松本 巨匠、そろそろお店に到着しますよ。
徳大寺 お、あれか。しかしキレイな個体だな。
松本 ドアヒンジが前方にありますから1965年以降に作られたモデルですね。いつ見ても可愛くて古さを感じさせないですね。
徳大寺 昔らしく印象的なデザインだしな。このフロントがすぼまっている形がネズミのようだから、イタリア語でネズミを意味する「トッポリーノ」という愛称がつけられたんだよな。
松本 そうでしたね。初代500にはA、B、Cというモデルがあって、僕は以前OHVエンジンを搭載した『B』タイプに乗せてもらったことがあります。確か3速と4速だけにシンクロメッシュが付けられていて、流れに乗ると意外と走りやすかったのをよく覚えています。
徳大寺 誰でも運転ができるように考えられていたんだろうね。たしか初代のトッポリーノもNOVA500も設計者はダンテ・ジアコーサだよ。
松本 ジアコーサはフィアットの航空機エンジンの設計者でした。そのセクションの上司が後にランチアフルビアを設計したアントニオ・フェッシアで、彼に見初められて30歳のジアコーサが設計首脳陣に名を連ねたそうですね。
徳大寺 最近ではエンジニアの世界でもサラリーマン化して、なかなかごぼう抜きの大抜擢なんて聞かないだろう。昔は上司が「こいつは才能あるな」と思えば推薦してドンドン好きなように設計させたんだよ。今はそういう環境を作り出してないな。残念なことだ。
松本 逆に才能ある人が世に出にくい社会になっているわけですからね。そう言った意味ではNOVA500という車に乗ることは天賦の才能を感じて乗ることになりますね。
徳大寺 まぁ、そうだな。トッポリーノの販売実績は悪くはなかったけど、より進歩的なモデルが総帥であるアニエッリから要求されたんだろう。そこでジアコーサが登場してミニマリズムに挑戦したんだよ。
松本 それがNOVA500の兄貴分のセイチェント(600)ですね。
徳大寺 ジアコーサは600でフィアット初のRR(リアエンジンリアドライブ)とパッケージングに自信を高めたんだ。そして直列空冷2気筒ユニットも開発するんだ。効率とメンテナンスフリーを狙ったんだと思うな。しかもアルミを多用したんで軽いんだよ。エンジンマウントなんてバネだからね。凄いだろう!
松本 なんたって車重が600㎏でしかも13~18馬力ですからね。当時のカタログ燃費を見るとリッターあたり22㎞だというから驚きです。もっともペダルのレイアウトは厳しいものがありましたけど、慣れればどうってことないです。そういえばデザインもジアコーサ自身だといわれていますよね。
徳大寺 そうなんだ。ジアコーサがせっせと削ったそうだからね。天才にすべて任せておけば完璧なモデルになるという良い例だろう。もっともミニのアレック・イシゴニスも同じだけどな。
松本 まさに芸術品のような車ですね。
徳大寺 この愛らしいデザインを見ていると本当にそう思うよ。これがイタリアの街中にあふれていたんだから、イタリアは良い国だよ! 情熱は熱いけど決して攻撃的な民族じゃないのがわかるな。親しみが湧くよ。




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