▲天気がいい日にどこかステキで安全な場所に止め、そして屋根を開け放てば、オープンカーは「あなただけの(ある意味)テーマパーク」に早変わりするんです! ▲天気がいい日にどこかステキで安全な場所に止め、そして屋根を開け放てば、オープンカーは「あなただけの(ある意味)テーマパーク」に早変わりするんです!

「固定屋根がない」というだけで車は百人力

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、レジャーとして出かける場所は高額な入場料が必要となるテーマパークではなく、完全無料で陽光などを楽しめる近所のパーク(公園)と心に決め、ニッポンの中流ど真ん中を生きている。

で、陽光を楽しむといえばオープンカーだ。特にこれからの時期のオープンエアドライブは本当に素晴らしい。この秋冬にオープンカーを1台手に入れさえすれば、わざわざ高額なテーマパークに行かずとも、すべての公道上がある意味「無料のテーマパーク」になる。最高ではないか。……実際はガソリン代などがかかるため「無料」ではないが、まぁ細かいことはどうでもいいじゃないか。

しかし問題は「オープンカーは一般的に高い」ということだ。

▲どうしてもやや割高になるのがオープンカーの泣き所。写真はアストンマーティン DBSヴォランテ ▲どうしてもやや割高になるのがオープンカーの泣き所。写真はアストンマーティン DBSヴォランテ

屋根の開閉機構という余計なモノ(?)が付いているためそもそも原価がかさみ、なおかつそう大した量が売れるジャンルでもないためスケールメリットみたいなものもない。それゆえオープンカーは新車も中古車もそれなりに高額となる場合が多い。輸入オープンとなればなおさらだ。

となると、こちとら自慢じゃないがカネはないため秋冬のオープンエアモータリングはあきらめ、近所の公園まで地味に歩いて手作りのおにぎりでも食べるしかないのか……といじけたくなるが(よく考えてみるとそれも悪くないが)、コスパに優れるステキな選択肢がひとつあることを思い出した。

旧型フォルクスワーゲン ゴルフ カブリオである。

▲1999年2月から2003年12月まで販売された旧型フォルクスワーゲン ゴルフ カブリオ。顔つきは「ゴルフ4」と同様だが、車台的にはそのひとつ前の「ゴルフ3」がベース。搭載エンジンは直4の2Lだ ▲1999年2月から2003年12月まで販売された旧型フォルクスワーゲン ゴルフ カブリオ。顔つきは「ゴルフ4」と同様だが、車台的にはそのひとつ前の「ゴルフ3」がベース。搭載エンジンは直4の2Lだ

俗にゴルフ4と呼ばれる3世代前のゴルフハッチバックとほぼ同時期に販売された4シーターオープンで、顔つきもゴルフ4とほぼ同じだが、プラットフォーム的には前身のゴルフ3をベースにしている。しかしこの際そういった細かい話はどうでもいい。なぜならば、ゴルフ4だろうが3だろうがもはや「ちょっと古い車」であることには変わりなく、あえて乱暴に言えばどちらがベースだったとしてもそう大きな差異はないからだ。

それよりも大切なのは、このなかなかステキな輸入4座オープンが、その気になれば総額50万円とか70万円ぐらいで買えてしまうという事実だ。

フォルクスワーゲン ゴルフというのはハッチバックもカブリオレも大変素晴らしい車だが、前述のとおり3とか4の世代はもはや「ちょっと古い」と言うほかない世代であるため、車としての性能(加速力とか回頭性能とかそういったもの)について特に大げさに論じるべきものはない。悪くない車であり、もっと言ってしまえば実直に走る良いワーゲンであると2015年現在の視点でも言えるが、2015年のフォルクスワーゲンはもっともっとよく走るため、そこをウンヌンしても詮ない話なのである。

それよりも注目したいのが「とにかく屋根がない」ことの素晴らしさについてだ。

▲車の出来以上に「屋根がない!」という事実の方が重要。ちなみにこの世代のゴルフ カブリオは写真のようにシート表皮がカラフルな仕様が多く、そこもオープンカーとしては嬉しいところ ▲車の出来以上に「屋根がない!」という事実の方が重要。ちなみにこの世代のゴルフ カブリオは写真のようにシート表皮がカラフルな仕様が多く、そこもオープンカーとしては嬉しいところ

前述のとおり3や4世代のゴルフは今となってはフツーレベルの実用車であるため、取り立てて積極的に試乗したいとは(個人的には)思わないが、「屋根がないゴルフ」であるならば話は別だ。誰か友人が2~3日貸してくれるというなら万難を排して借りに行きたいし、その2~3日は天候さえ悪くなければ日々の雑事や都会に住まう煩わしいみたいなものに正直やや辟易している筆者にとって、最高にリフレッシュできる2~3日になるだろう。「車の屋根がない」ということは、それほどまでに素晴らしいことなのだ。

しかし、ここまで読んだ人が必然的に思うのが「ていうかお前、それって別にゴルフカブリオじゃなくても、オープンカーだったら何でもいいんじゃないの?」ということだろう。

そのとおりである。正直「オープンカーであれば何でもいい」という部分はかなりデカい。

しかしわたしがここでゴルフ4(というか3.5?)のカブリオにこだわっているのにも、当然いくつかの理由はある。まず第1に前述のとおり総額50万~70万円ぐらいで狙えるという手頃さ。第2に4シーターであるため、筆者も以前乗っていた2シーターオープンと比べて何かとつぶしが利き、これ1台での生活も十分成り立つということ。そして第3に、いかに「ちょっと古い」とはいえフォルクスワーゲンのゴルフだけあって、並みの同世代車と比べれば実によく走るという事実。

それゆえの、ゴルフ4カブリオ推しなのだ。

▲シートはスポーティな「セミバケット」といえる形状。インパネ周辺のデザインや素材感も悪くない ▲シートはスポーティな「セミバケット」といえる形状。インパネ周辺のデザインや素材感も悪くない

もはや古めの車であるため、走行距離だけではなく整備履歴のクオリティ(ディーラーや専門工場での定期点検を毎回受けてきたか? そして替えられるべき部品は替えられているか?)と、内外装のクオリティ(乱暴な扱いを受け続けてきた形跡はないか? ホロはちゃんと開閉するか?)を重視して選び、ぜひ、あなただけのステキな「頭上の風景と陽の光、そして風」を手に入れてほしい。

text/伊達軍曹