スバルの“看板”であるボクサーエンジンは今後どうなる?その未来を予想する
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2015/11/04
エンジンの全幅が拡大
水平対向エンジンは生き残れるのか。富士重工では、経営幹部も開発陣も「水平対向エンジンが我が社のカンバン」だと思っているようで、まだしばらくは採用が続きそうだ。しかし、問題も山積みとなっている模様。
スバルの水平対向エンジンは、鋳物のエンジンブロックをチョチョっと削って終わりというものではなく、クランクシャフトを受ける鋼製ベアリングを鋳込んだアルミブロックのほぼすべての面に機械加工が施されている。真ん中にクランクシャフトがあり、その両側にシリンダーが並ぶ独特な構造のため、高い精度で仕上げないとキレイに回らないからだ。
F型の開発段階で横幅の拡大が問題になっていたが、新世代エンジンのFB型ではロングストローク化されたことで幅が徐々に広がり、「これ以上エンジンの横幅を広げると車に積めなくなる」というほど問題が深刻化。実際、ボディ骨格の写真を見るとエンジンルームが前広がりに設計されている。4WD必須のスバルでは前輪より前にエンジンを置き、前輪のドライブシャフトはエンジン直後に配さなければならないため、エンジンの前部が拡大されているのだ。
問題は、FR車にも見受けられる。
低重心が売りのはずの水平対向エンジンが……
4WDの設定がないFR方式の86/BRZでは、エンジンを運転席方向に追いやったレイアウトが用いられているが、その結果としてエンジンルームの横幅ギリギリにエンジンを積むことになった。構造を真横から見ると、エンジンは後ろ下がりで斜めに積まれている。これは、排気系レイアウトやステアリングラックの配置を考慮したためだ。
後ろ下がり、つまり前が上がっているということは「水平対向は低重心」という宣伝文句と矛盾する。実は、水平対向エンジンを使い続けることで、様々な難題が発生しているものの、技術陣の知恵とアイデアでなんとか切り抜けているのが現状なのだ。
プロペラシャフトを廃し、後輪をモーターで駆動
富士重工の開発陣は今、次世代の水平対向エンジンのコンセプトを考えている。最新の機構を使ったOHVヘッドの採用や、ダウンサイジングターボなどが検討されたが、現在は「エンジンの排気量カットとハイブリッド化」が本命となっている。水平対向エンジンを縦置きで前輪の前に配置し、後輪はモーターで駆動する方式を模索中だ。
スバル本来の4WDレイアウトと、86/BRZのFRレイアウトを合体させたようなハイブリッド化である。2015年の東京モーターショーで披露された「VIZIVフューチャーコンセプト」でも同じ方式が用いられ、プロペラシャフトなしで4WDが作り出せることがアピールされた。ハイパフォーマンスモデルを作る際にも、この駆動系を使って後輪のモーター出力をあげれば対応できる。
様々な情報を総合すると、水平対向エンジンはスバルのメインユニットとして活躍を続けることだろう。しかし、かつてWRC(世界ラリー選手権)で暴れまわったようなフルタイム4WDと水平対向エンジンの組み合わせが主流から退くことは確かだろう。