見えないはずの車の動きを予測。日産の予防安全技術から見えてくる未来の社会
カテゴリー: クルマ
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2015/07/24
エントリーモデルにも広がる先進安全技術
各社が共通して取り組んでいる技術開発といえば、安全に関するものだ。もちろん以前からそうだったが、最近の安全技術は自動運転にも繋がる技術として注目度も高い。そんな中、日産の安全技術を体験する機会を得た。今回はそこで感じたことと、「予防安全」についての私見を述べたい。
横須賀市にある日産の施設でまず試したのは、スカイライン(InfinityQ50)を用いたエマージェンシーブレーキ。初めに言ってしまうと、この日いちばんスリルがあったのはこの体験だった。車に搭載されているミリ波レーダーを用いて前方の障害物を検知し、ドライバーへの警報後も衝突の危険がある場合には自動でブレーキが作動する装備だ。
約60km/h以下で衝突回避能力があると謳われているが、今回の試験では80km/hでダミーの障害物に近づいていく。実験とはいえ迫力があり、しかも自分が運転しているわけではないのだから(ドライバーはメーカーの担当者)、運転に慣れている我々でも恐怖を感じる。
忘れてはいけないのは、追突、衝突事故はそれと意識しない間に起こってしまうことだ。他車の接近に気がつかない場合にも自動でブレーキをかけてくれるこうしたシステムは非常に有意義である。
テストコースの路面は通常のアスファルトよりも滑りやすい素材であったが、ひとたびブレーキが作動すると巨人に背中を引っ張られたかのごとく車が停止した。体は思ったほどは前のめりにならない。予測してシートベルトで後方に引っ張るので、しっかりとホールドしてくれる。乗員を衝撃から守るこの動作には、正直目を見張った
もうひとつ感心した技術は前方衝突予測警報である。これは世界初の技術だそうだが、これこそまさにプリクラッシュセーフティ技術といえる。前方の車のさらに1台前方、つまり自車から2台前の車の動きをミリ波レーダーでモニタリングし、減速が必要な場合ドライバーに知らせてくれるシステムだ。
2台前の車が何らかの理由で急ブレーキによって止まろうとした場合、目視ではすぐには分からない。そうした実際には見えないものの情報を教えてくれるのだ。これほどありがたいものはないだろう。特に、高速などで起こりやすい追突事故予防に効果があるのではないだろうか。電子デバイスというものが我々では予測不可能な領域までも検知し手助けしてくれる装置であることを実感する。
最後に、車線逸脱防止支援システムについても触れておこう。例えば、眠くなったりして車線を逸脱しそうになったりすると、片側のタイヤにブレーキをかけることで元の方向へ引き戻してくれるという機能だ。一定速度で直線やゆるいカーブを走行している場合に効果を発揮する。いちばん油断しやすい道路状況だけに、こちらもありがたい装備といえる。
メルセデス・ベンツにも同様の装置があるが、そちらは作動すると驚くほど強力に引き戻される。一方、日産ではいたってマイルドだ。これは、あくまで運転支援という位置づけによるものなのだろう。
日産の先進的なところは、こうした予防安全システムをスカイラインなどの比較的高価格帯の車だけでなく、軽自動車やコンパクトカーなどエントリー向けのモデルにまで広げていることだ。安全運転というのは自分だけの問題にとどまらない。周囲の車が危険な運転をすれば、こちらが事故に巻き込まれる可能性だって存在するし、その逆もまた然りである。安全装備が多くの車種に広がり、周囲をより思いやる安全な社会となることを期待したい。