▲新型マツダ ロードスターは、スポーツサウンドも魅力のひとつ。その音はどのように生み出されているのか聞いてきました ▲新型マツダ ロードスターは、スポーツサウンドも魅力のひとつ。その音はどのように生み出されているのか聞いてきました

音がスポーツカーの問題になっています

死活問題とまでは言わないまでも、スポーツカーにとって深刻な問題になっているのは確か。

「クォーーーーーーン!」

そんな、官能的サウンドが出しにくくなっているのです。

ハイブリッドシステムとの組み合わせは言うまでもなく、排気量がダウンサイジングされ気筒数も減っているのが世界の流れ。となると、エキゾーストサウンドが実にショボイ。中には車内スピーカーから音を流し、実際のエキゾーストサウンドと合成してスポーティに聴かせているスポーツカーもあるくらい。そもそも加速走行騒音など、音は厳しく規制されているのが実情です。これからは静音がスポーツカーのデフォルトなのか……。

そんな嘆きに解決を模索したのが新型ロードスターです。ロードスターは車内快音。ドライブしていて気持ちが良い。その理由は……。

なんと! アレがサウンドを奏でているというのです。アレとは「デフ」。ディファレンシャルギア。

うん、ギアの歯鳴り(ギアとギアが噛み合うノイズ)を聴かせるということなのでしょうか? この疑問にマツダ株式会社のエンジンサウンド担当、服部之総さんはこう答えます。

「いえ、そうではありません。デフからエンジンサウンドを車室内にとりこんでいるのです」

???

「デフは(ミッションやプロペラシャフトを介して)エンジンとつながっています。そのデフをデフマウントでボディに固定しており、マウントをチューニングすることで、意図的にボディを振動させ、ドライバーにエンジン音の“オイシイところ”だけを聴かせるようにしています」

マジなのですか? 本当なのですか? 一般的には、消し去るのに四苦八苦するようなノイズやバイブレーションなのに、究極の廃品活用。逆転の発想に喜びのめまいが……。

「現在の規制下ではエキゾーストマフラーから出た音だけですと、ドライバーには物足らないということになってしまいます。この方法は車室内に向けて振動を出しているので、エキゾーストサウンドのように外への影響がありません」

確かに、ロードスターをドライブすると快いビート感に包まれます。そんな秘密があったとは。

▲このリアデフのマウントを調整することで、2500〜5000回転の中回転域ではエンジンサウンドそのものに加えて、デフも意図的にエンジンの振動を室内に伝える。そうすることで軽快さと力強いビート感を共存させている ▲このリアデフのマウントを調整することで、2500~5000回転の中回転域ではエンジンサウンドそのものに加えて、デフも意図的にエンジンの振動を室内に伝える。そうすることで軽快さと力強いビート感を共存させている

フロントウインドウの厚さまでチューニング?

「実は新型ロードスター、音に関してもかなりこだわっています。例えば、フロントウインドウのガラス。あれはノイズの発生源なのですが、厚さと取り付け方を工夫して、ボワーンとした低周波の音が出ないようにしています」

フロントウインドウの厚さまでチューニング?

「はい。厚くすると音はコントロールしやすいのですが、ご存じのようにロードスターは“グラム作戦”という1g単位での軽量化を実施しています。フロントウインドウは1mm薄くすると1kg減らせるので、ギリギリまで厚みを抑え、あとはガラスの保持方法でチューニングしています」

こもり感のない快音車内はそんなことまでして実現されていたとは。感動を通り越してビックリ! 最後にひと言……。

やりすぎロードスターに乾杯! ドライビングプレジャー万歳!

▲フロントウインドウの厚みが室内音に与える影響も大なのだとか。厚いと音対策はしやすいものの重量増になる。そこでロードスターではウインドウガラスの支持方法を工夫することで音質と軽量化を両立させている ▲フロントウインドウの厚みが室内音に与える影響も大なのだとか。厚いと音対策はしやすいものの重量増になる。そこでロードスターではウインドウガラスの支持方法を工夫することで音質と軽量化を両立させている
▲ちなみに、現在ロードスターは全グレードとも統一エンジン。実はMTとATでは少しだけ音質が違う。AT車のマフラーにはグラスウールを増やして、より雑味のないスッキリとしたサウンドにしている ▲ちなみに、現在ロードスターは全グレードとも統一エンジン。実はMTとATでは少しだけ音質が違う。AT車のマフラーにはグラスウールを増やして、より雑味のないスッキリとしたサウンドにしている
text/ブンタ Photo/篠原晃一、graaab