M・ベンツが77年前のシャシーから「ストリームライナー」を復元!美しい“自動車浪漫”に感動必至!!
2015/05/07

時代に翻弄されたかつてのスーパーカーがよみがえる
どんな会社でも歴史があるものです。特に自動車メーカーは長い歴史の中で、技術の進化に伴い様々な車が生み出されてきました。そうなると当然、紆余曲折を経た中で多くの人に記憶されることなく埋もれてしまった車もございます。その中から今回は、M・ベンツの“とあるモデル”について紹介します。
そのモデルの姿は、動画共有サイト「YouTube」のM・ベンツオフィシャルチャンネルにアップされたドキュメンタリータッチの動画で見ることができます。動画は、倉庫の片隅に埋もれていてたシャシーが発見され……という回想から始まります。シャシーに残っていたボディの一片はアルミで、当時はレーシングカーもしくはスペシャルモデルにしか採用されていなかったそうです。
「ワンオフで作られたスペシャルモデルのようだ」ということでM・ベンツの資料室で確認。何が凄いって、M・ベンツには歴代の市販車やレースカーはおろか、テストカー、コンセプトカー、ワンオフなどすべての資料が保管されているんです。そこで分かったのが、このシャシーをもつ車が540Kをベースに1938年の「ベルリン・ローマ・ラリー」に参戦するはずだった「ストリームライナー」と呼ばれる空力を重視したボディをもつ車両であったこと、です。

M・ベンツのレストア、保存車両の管理などを行うクラシック部門は、ストリームライナーのフルレストアを決行します。当時の設計図を基に、当時に用いられていた技法で、当時想定されていた性能を復活させる、とのこと。過去への敬意というか、徹底ぶりというか、良い意味でオタクな雰囲気からM・ベンツの社風を感じさせます(笑)。例えば、1930年代には十字のネジ(フィリップスクリュー)は存在しなかったため、当時のネジに入れ替えたり……。

シャシーはイタリアのカロッツェリアへ送られ、設計図を基にボディが復元されます。ボディのフレームにはアッシュウッドと呼ばれる柔軟性のある木が用いられ、パネルは昔ながらの手作業によるアルミ鈑金です。
搭載していたエンジンは、コンプレッサー付きの5.4L直8エンジンで最高出力は180ps。幸いにも同型のエンジンはM・ベンツ社内に保存されていたので、それをフルオーバーホールで対処しています。


ただ、1938年ベルリン・ローマ・ラリーは延期されたので、ストリームライナーが日の目を見ることはありませんでした。
さて、ここで湧き上がってくる疑問が、完成したストリームライナーの行方です。保管されていた当時の資料をあさって出てきたのがタイヤメーカー「ダンロップ」の50周年パンフレット。そこに「ストリームライン(流線型)の車」という文言が出てきたのです。そして、納品書(そんなものまですべて保存!?)でストリームライナーがダンロップへ納められたことが確認されます。で、この後が凄いんです……。

ダンロップでストリームライナーを運転していたテストドライバーを突き止め、息子(現在、82歳)がたびたび工場へ遊びに来ていたことを示す写真を発見。昔のことだろうと、ストリームライナーの実物を知る人間を探し当てたのはラッキーなことです。しかも、テストドライバーの孫は現在、ダンロップのタイヤ品質管理責任者という奇遇ぶりです。


設計図上、ストリームライナーの最高速度は185km/hですが、車重は2.4トンもあるんです。ダンロップではクラシックカーのタイヤも当時のまま作り続けていますが、念のためにタイヤのベンチテストも敢行。エンジンも現行モデル用のテスト機器を用いて最高出力が設計どおりか否か確認しています。レバーを引くとコンプレッサーが“ギューン”と作動します。

その後、シャシーはオランダに送られ配線作業を経て、イタリアで完成したボディ、ドイツでフルオーバーホールされたエンジンを組み上げられました。また、空力特性も計測され、Cd値0.362と77年前の車としては立派な数値を叩き出しました。
そして挑む、最高速チャレンジ……。ちょっと長い動画ですが、ドキュメンタリータッチで感動モノです。興味が湧いた方は、お時間があるときにぜひご覧になってください。

【関連リンク】
- M・ベンツが「ストリームライナー」をフルレストアするドキュメンタリー(Mercedes-Benz TV: The Streamliner Case.|YouTube)
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