▲ローバー 75ツアラー。イギリス発の高級ミドルクラスステーションワゴンとして、当時は唯一無二の存在でした ▲ローバー75ツアラー。イギリス発の高級ミドルクラスステーションワゴンとして、当時は唯一無二の存在でした

英国調の高級感を全面に打ち出したデザインは高評価を受けるも…

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2014年9月10日に発見したのは「ローバー 75ツアラー」です。ベースであるセダンモデル「ローバー 75」はBMW傘下のときに誕生した車ですが、ツアラーは旧MGローバー社経営陣率いるフェニックス・コンソーシアム社がオーナーに就いた翌年に投入されました。

BMW傘下時代に誕生したローバー 75は英国車らしい高級感を全面に打ち出したデザインが評価され、日本では第20回インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。特に木目パネルと本革をふんだんに用いたインテリアはイギリス上流階級のリビングルームのようでした。

▲パイピング加工が施された本革シート、本木目パネルの使い方からは、ほとんど家具職人の技芸に感じられます ▲パイピング加工が施された本革シート、本木目パネルの使い方からは、ほとんど家具職人の技芸に感じられます

ステーションワゴンモデルである75ツアラーが投入されたのは2003年。ちょうどその頃、セダンもエクステリアのマイナーチェンジを受けた他、ウッドステアリングやナビを採用するなど装備面の充実が図られました。イギリス本国では異なるエンジンを積んだグレードが複数ラインナップされていましたが、日本で販売されたのはセダンもステーションワゴンも2.5Lエンジンを積んだグレードのコニサーのみでした。

しかし2005年、ローバー社の経営が破たんしたことで状況が一変します。中国の南京汽車がローバー社の知的財産権や資産を買い取りましたが、ローバーの商標はまだBMWが保有していました。そのため優先買い取り権があったジャガー・ランドローバー社が同時期にBMWからローバーの商標を購入しましたが現在は実質、休眠状態になっています。

その間、南京汽車はローバー75をベースにした「ROEWE 750」という車両を発表し、今も作り続けています。しかも輸出先では「ローバー」ではなく「MG」ブランドとしての販売も行っているようです…。

企業買収のドタバタ劇に巻き込まれた「被害者」ともいえるローバー 75ツアラーですが、いつか懐かしまれるような存在になることは間違いありません。

しかも、75ツアラーはサイズや動力性能がほどほどでステーションワゴンとして意外と使い勝手が良いんです。リアシートは折り畳み式ですし、肘掛け部分はトランクスルー。おまけに最近の車には珍しく、リアガラスが開きます。

▲最近、少なくなったリアガラスが開閉するステーションワゴン…これだけでも選ぶ価値があると言えますよ! ▲最近、少なくなったリアガラスが開閉するステーションワゴン…これだけでも選ぶ価値があると言えますよ!

ちなみにジャガーXタイプが登場するまで、イギリスの高級ミドルクラスステーションワゴンというカテゴリーは、この車以外、他に選択肢がありませんでした。そういう意味で、着眼点は素晴らしかったと言えます。

当該中古車、運転席の写真からシートにテカりが見受けられますが、他のシートには見られません。通勤やゴルフなどでドライバーが1人で乗る機会が多かったと考えられます。また、荷室は写真を見ると新車登録10年、走行距離9.5万kmも走った車にしてはさほど経年劣化した様子がなく、良好な状態と言えるでしょう。

英国の高級感あふれる1台、気になる方はお早めに!

■本体価格(税込):89.0万円 ■支払総額(税込):99.0万円
■走行距離:9.5万km ■年式:2004(H16)
■車検:無 ■整備:有 ■保証:有
■地域:大阪

text/古賀貴司(自動車王国)