▲このぐらいの車格になると、人気の白と不人気の赤とでは50万円以上の価格差があるかも? ▲このぐらいの車格になると、人気の白と不人気の赤とでは50万円以上の価格差があるかも?

安いだけじゃなく「パワータイ効果」もあります

よほどお金があり余っていて、自身の名前を付けた育英奨学金基金を作るか、もしくは札束で尻でも拭いてやろうかと考えている人を除き、ほとんどの人間はモノを安く買いたいと考えている。もちろん安物買いの銭失いをするつもりなどないが、「同じモノが違う値段で売られているならば、ぜひ高い方を買いたい」と思う人はあまりいない、という話だ。ということで輸入中古車を買う場合もまったく同様に、安物買いの銭失いをするつもりはないが、「同じモノが違う値段で売られているならば、安い方を買いたい」と思うのが人情である。

しかし、中古車というのは新車と違って「同じモノ」というのが存在しない。年式やグレード、走行距離などの各種条件が似ているものはよくあるし、ごくまれにそれらがまったく同一という偶然もあるだろう。しかしそうだとしても、それらは「同じモノ」ではない。同じに見えても、それまでの使われ方つまり履歴が異なれば、その2台は「まったく違う車」なのだ。そこに、中古車の高い・安いを論じる際の無理というか困難がある。

が、無理や困難を承知のうえで「同じようなモノが違う値段で売られているならば、安い方を買いたい」という人情に対する一つの答えを提示するならば、それは「赤い車をお買いなさい」ということになる。

▲日本ではあまり好まれない「赤い中型車以上」。それだけに、中古車として狙う場合は絶好の大穴となり得る ▲日本ではあまり好まれない「赤い中型車以上」。それだけに、中古車として狙う場合は絶好の大穴となり得る

浅学非才ゆえ諸外国の状況は知らないが、ここ日本では赤い車は妙に人気がなく、それゆえ妙に安い。コンパクトカーの場合は赤もそれなりに売れているようだが、Dセグメント(ベンツのCクラスとかBMW3シリーズあたりの車格)になると、赤い車はてんでお話にならない。それゆえ、中古車価格は圧倒的に安い。だからこそ、「赤でもいいよ。ていうか、むしろ好きだよ」という人にとっては絶好の狙い目となるのだ。

では、赤い車とは果たしてどのくらい安いのか? 前述のとおり中古車の高い・安いを論じるのはなかなか無理と困難があるのだが、なるべく具体的かつ客観的な例で考えてみよう。まずは筆者自身が赤い車を売却した際の実例だ。数年前、わたしはポルシェ911カレラ2という車に乗っていて、それはガーズレッドというボディカラーだった。簡単に言えば百恵ちゃんが歌ったところの「真っ赤なポルシェ」である。古いたとえで恐縮だし、百恵ちゃんのアレは964ではなく930だったが。

いずれにせよ真っ赤なポルシェは今やあまり人気がなく、圧倒的な一番人気は「グランプリホワイト」、つまり白だ。で、筆者は諸事情あってガーズレッドのカレラ2を某専門店に引き取ってもらったのだが、その際に店主が言っていたのが「グランプリホワイトだったらあと10万円は付けられるんですけどねえ…」という言葉だった。ということは空冷ポルシェ911の場合、人気の白と不人気の赤との間では、まったく同一のコンディションでも売価にして10万円の開きがある……と判断することができるだろう。

また、近年の人気モデルである走行0.5万km前後の2013年式BMW320dブルーパフォーマンスの場合、カーセンサーnet掲載データを筆者が調べた限りでは、黒のそれは平均価格424万円で、白は418万円。対する赤の平均価格は358万円であった(※2014年9月2日現在)。もちろん、新車に近いこれらの中古車の場合はオプション装備の差でも価格が大きく変わるため、一概に「赤だから爆安!」ということはできないが、それでも「赤はやっぱり安い」という傾向を見て取ることはできるだろう。

▲同じ現行BMW3シリーズでも、赤は、人気の黒や白と比べると類似条件の場合で50万円近く安い? ▲同じ現行BMW3シリーズでも、赤は、人気の黒や白と比べると類似条件の場合で50万円近く安い?

ということで、「同じモノが違う値段で売られているならば、安い方を買いたい」というごく普通の感情をお持ちの方は、ぜひ「赤のDセグメント以上」に注目していただきたい、というのが本稿の結論である。「いい年こいて赤かぁ……」というためらいもあろうかとは思うが、経験から言わせていただくと、赤い車には結構な「パワータイ効果」があるゆえ、恐れることなく積極的に突撃していただきたいと思うのだ。

パワータイとはご承知のとおり赤いネクタイのことだ。赤いネクタイというのは見る者にパワーと情熱を感じさせるため、政治家などはここぞというときに必ず着用する。若き日のケネディ元米大国統領も、老練なニクソン元大統領を相手の選挙戦で「白いシャツに赤いタイで勝利した」ともいわれているほど、赤という色が持つパワーは侮りがたい。周囲に対して自分の活力をアピールできるだけでなく、知らず知らずのうちに自らの心をも鼓舞するのが「赤」なのだ。

そんな色の車が自宅車庫にあり、なおかつそれに乗って出かけることの多い日々はきっと、あなたの毎日を知らず知らずのうちにパワフルなものへと変えるだろう。若干オカルトっぽく聞こえるかもしれないが、本当にそうなんですよ。ということで今回のわたくしからのオススメは「赤のDセグメント以上」だ。

▲見て、そして乗っているだけでなんとなく活力が湧いてくる可能性も高い「赤」、ほんとオススメですよ! ▲見て、そして乗っているだけでなんとなく活力が湧いてくる可能性も高い「赤」、ほんとオススメですよ!
text/伊達軍曹