【オンリーワンを探せ】5LV8エンジンのFRポルシェをMTで味わう
2013/05/14
原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2013年5月7日に発見したのは「ポルシェ 928 GT」です。928シリーズは、ポルシェのフラッグシップとして1977年にデビュー。販売が終了する1995年まで一度もフルモデルチェンジは行われず、ワンモデルとしてはポルシェ史上最も長く生産された車です。今回取り上げる928 GTは日本では1990年~1992年に販売されていたものです。
新たな技術が導入され続け現在も進化し続けている911ですが、30年以上前からポルシェ社幹部は限界を感じていたといわれています。その上、アメリカでシボレー コルヴェアをはじめRR車(リアエンジン後輪駆動)の安全性が取り沙汰され、RR車の販売規制が行われそうだったこともあり、911に替わるポルシェ車を導入しようとしたのが928開発のきっかけだそうです。
911に勝るスポーツ性能を持ち、快適装備を備えた高級嗜好のグランドツアラーとして928は誕生しました。最大の特徴は、高速コーナリング中、オーバーステア傾向になりやすいリアサスペンションの各パーツの配置を可変させる「ヴァイザッハアクスル」を採用したことでしょう。
フロントにエンジンを配置しリアにトランスミッションを搭載する「トランスアクスルレイアウト」のFR(フロントエンジン後輪駆動)を採用。しかしエンジン位置は中央寄りで、ミッドシップに近い構造でした。
エンジンはすべて水冷V8で、年式が新しくなるにつれ4.5L、4.7L、5L、5.4Lと排気量を拡大。928 GTは排気量5Lのエンジンを搭載し最高出力330ps、最高速度275km/hを誇っています。22年前の車であることを考えれば、ものすごい高性能なスポーツカーだったんです。
928 GTはMTモデルのみでした。ほぼ同時期の928 S4はM・ベンツ製の4速ATを搭載し高級車らしいトルクを楽しめたのですが、「もっとスポーツカーっぽさを味わいたい」というドライバーに向け、パワフルな5LV8エンジンをMTで操る醍醐味を味わえる928 GTを提供したのでしょう。ちなみに、GTのデビューまでS4はATとMTを選ぶことができました。
当該物件はハーフレザーという今では珍しい仕様で、個人的には大好きです。絶版になってから18年が経過していますが、今でもデザインは斬新。911のデザインが歴史に裏打ちされた普遍性なら、928は唯我独尊でオリジナリティがあふれています。これ以上古く見えることはありませんし、見かける台数も少なくなりましたから個性派な選択肢となるでしょう。総額395万円は決して安い値段ではありませんが、ネオクラシックとして程度が良好な928は価値を上げ始めているのでしょうね。
Text/古賀貴司(自動車王国)