【オンリーワンを探せ】 日本車に個性がないとは言わせない画期的な1台
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2012/10/30
原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2012年10月25日に発見したのは「スバル アルシオーネ 2.7VX」です。80年代後半の車は、発売から20年以上たって流通台数が減り、ネオクラシックとしての価値が少しずつ見い出されつつあります。この車に関してはデビュー当時から衝撃的で、今後も滅多に出回ることはないでしょう。われながら結構な“掘り出し物”です! しかもワンオーナーでずっと愛され続けてきた車両のようです。
アルシオーネは1985年2月のアメリカ・デトロイトショーで「XT」として発表されました。当時の国産車では珍しく海外でのデビューが先という、スバルのアメリカ市場における意気込みが感じられた車です。ただ…、デビュー後間もなく「プラザ合意(為替レートの安定化に対する同意)」が決まり、販売はかなりの苦戦を強いられたようです。というのも“リーズナブルなスタイリッシュ・クーペ”としてデビューしたにもかかわらず、プラザ合意以降、円高により価格面での魅力が半減してしまったからです。4気筒モデルとしてデビューしたのですが価格引き上げに伴い、苦肉の策で投入されたのが今回発見した6気筒モデル「アルシオーネ 2.7VX」です。
この車、スバル(富士重工)が元航空機メーカーとして出発した威信を感じられるものでした。平べったい直線基調のデザインですが、低重心の水平対向エンジンで、フロントがグッと下がっています。ドアハンドルは航空機のように空気抵抗低減を目論みボディと一体型になっています。泥除けのガードも実は空気抵抗を考慮してのもの。事実、デビュー時のCd値は0.29と今でも優れた部類に入ります。室内が“(飛行機の)コックピット感”あふれるのも、スバルならではのこだわりだったのでしょう。今見ても斬新です!
「日本の自動車技術240選」にも選ばれたオートレベライザ機構と減衰力可変機構を組み合わせたエアサスペンションは、当時、相当な注目を集めたものです。今では“当たり前”に感じられる技術が27年前に採用されていたと考えれば画期的な車でした。123.9万円という価格は車歴を考えると安くありませんが、スバルが誇る航空機技術のコンセプトをふんだんに盛り込んだアルシオーネは希少価値がある、と断言できます。
Text/古賀貴司(自動車王国)