▲駿河湾由比港名産の桜えびやしらすを存分に味わえることで有名な(?)由比PAに行ってきました ▲駿河湾由比港名産の桜えびやしらすを存分に味わえることで有名な(?)由比PAに行ってきました

スムーズに走りたいなら新東名。だがシブいメシを堪能したいなら旧東名だ!?

静岡県西部から東部の御殿場あたりまで車で走る場合、従来からある海沿いの東名高速を行くよりも山側の「新東名」を選んだ方が何かとスムーズではある。新東名はそもそもの設計速度が高く、また舗装も良いため、走るのが非常に楽ちんであるからだ。

だが「下町の井之頭五郎」を自称する筆者は、ほぼ常に海側の東名高速をあえて利用している。理由は、単純に「海が見たい」というロマンチシズムがまずひとつ。そしてもうひとつ、海沿いの東名高速上り線には「由比PA(上り)」があるからだ。ここの桜えび系メニューがやたらと美味いのである。

東名高速の清水JCTを越えてしばらく走ったのちに現れるトンネルを抜けると、眼前はいきなり海。駿河湾である。で、その向こうには富士山。「うむ、絶景かな絶景かな!」などとひとりごちているとすぐに、由比PA(上り)は左手に現れる。非常に小さな、そして地味なPAだ。

▲東名高速清水JCTから8kmほど走ると到着する由比PA(上り)。地元産の桜えびと釜揚げしらすが名物で、建物2階の展望スペースからは雄大な駿河湾と、海に向かって左手に富士山を望むことができる ▲東名高速清水JCTから8kmほど走ると到着する由比PA(上り)。地元産の桜えびと釜揚げしらすが名物で、建物2階の展望スペースからは雄大な駿河湾と、海に向かって左手に富士山を望むことができる

本線からピットレーン(?)へ低速で進入し、そして奥側にある小型車用駐車スペースに愛車を止める。で、そのあとは建物屋上にある展望場に上って駿河湾と富士山が織りなす雄大な景色を見るのもステキだが、食いしん坊な筆者としてはソッコーでスナックコーナーへ行き券売機に小銭を投入し、何らかの桜えび系メニューをオーダーするのがルーティンである。

この日、まず頼んだのは「えび丸定食そば(870円)」。自慢の桜えび天が載ったそばと「えび丸ごはん(桜えびの炊き込みご飯)」、そして田楽がセットになっているものだ。窓の向こうに富士山が見える席に陣取り、待つこと約3分。無粋なポケットサイズの呼び出しマシンではなく「○○をお待ちのお客様ぁ~!」というマダムのステキな肉声により、くだんの定食が出来上がったことを知る。

▲見るからにクリスピーな桜えび天そばを中心としたセットメニューである「えび丸定食そば」。同内容・同価格でそばがうどんになる「えび丸定食うどん」もある ▲見るからにクリスピーな桜えび天そばを中心としたセットメニューである「えび丸定食そば」。同内容・同価格でそばがうどんになる「えび丸定食うどん」もある

で、いただく。まずはクリスピー極まりない桜えび天を熱々のそばのだしに軽くジュッとつけ、豪快にかじろうではないか。……うむ、美味い! さすがは名産地である駿河湾は由比港産の桜えびを「これでもか!」というほどふんだんに使用した桜えび天、味も香りも歯ごたえもほぼパーフェクトである。少なくともPAで食べることのできる桜えび天としては群を抜いている。

桜えびのうま味が炸裂する最強炊き込みご飯は自宅でも賞味可能!

しかし実はそれ以上に大絶賛したいのが、そばに添えられている「えび丸ごはん」、つまりは桜えびの炊き込みご飯だ。

▲普通サイズの茶碗に盛られたえび丸ごはん。これがまためっぽう美味いのだ! ▲普通サイズの茶碗に盛られたえび丸ごはん。これがまためっぽう美味いのだ!

マンガ『美味しんぼ』の海原雄山ではないので詳しいメカニズムはわからないが、由比港産素干し桜えびのうま味が、白米および醤油、かつおだしなどと炊き込まれることで活性化するのだろうか、天ぷらにしたとき以上の芳しい香りと強烈なうま味が大炸裂し、それがごはん全体に染みわたっているのだ。……筆者は銀座にある某企業に勤務していた数年間で「美食を極めた」と自負している者だが、海沿いのさびれたPAでいただくこの炊き込みご飯は、夜の銀座に匹敵する、いやもしかしたらそれ以上のモノであると、ここに断言したい。

大満足しての食後、ショッピングコーナーを軽くひやかすと、この地の名物である生桜えびや生しらすなどが冷凍ケースに多数陳列されている。そのどれもに食指が動くが、筆者が大注目したのは常温コーナーにさりげなく陳列されていた「駿河湾由比港桜えびご飯の素(771円)」だ。

▲「食堂で出しているえび丸ごはんの素です」とある。……こ、これは買うしかない! ▲「食堂で出しているえび丸ごはんの素です」とある。……こ、これは買うしかない!

添えられている手書きPOPを見ると「由比の食堂で出しているえび丸ごはんの素です」と書いてある。……ということは、コレを買って帰れば先ほどのあの偉大な味を自宅でも味わえるということか? す、素晴らしいじゃないか! しかしわたしは念には念を入れて係のマダムに確認した。この「素」は本当に先ほど食べたアレと同じものなのか、と。

するとマダムいわく「はい、同じですよ! 桜えびの量は食堂でお出しする方がちょっとだけ多いんですけど、調味液も桜えびもまったく同じなんです!」と。うむ~、それはもう買うしかないでしょう……。

ということで金771円にてそちらを購入し、翌朝さっそく「駿河湾由比港桜えびご飯の素」を使って炊き込みご飯を作ってみた。食堂では薄い小口切りにした青ネギが載っていたが、自宅にはそれがなかったため、かいわれ大根にて代用。で、そのお味は……完璧に同じである! 由比PAで体験したあの芳しい香りと強烈なうま味が自宅でも大炸裂し、それがごはん全体に染みわたっているのだ。……最高である!

▲「素」を使って筆者が作った炊き込みご飯。素人調理ゆえやや色ムラが生じているが、味は由比PAで食べたのと本当にまったく同じで大感激。というか好みの水加減に調整できる分、自宅バージョンの方がもしかしたら美味いかも? ▲「素」を使って筆者が作った炊き込みご飯。素人調理ゆえやや色ムラが生じているが、味は由比PAで食べたのと本当にまったく同じで大感激。というか好みの水加減に調整できる分、自宅バージョンの方がもしかしたら美味いかも?

走りやすい新東名も、そこにある最新モードの大規模SAも悪くない。ステキである。しかし筆者個人としてはこういったインディーズ路線を行く小規模PAこそ愛したいし、そこで静かにひとり、美味いメシを食いたいと思っている。そして願わくば由比PA(上り)のような名店が変に改修されることなく、このままのスタイルを貫いてくれますように……と、心の底から祈っているのだ。

【東名高速 由比PA(上り線)フードコート】
営業時間:午前8時~午後8時
定休日:なし
※2016年1月12日時点の情報です。上記は変更される可能性があります。ご了承ください

text、photo/伊達軍曹