kinto▲工場出荷時しか選択できないもの、そもそも交換ができなかったものをアップグレードできるようにした新サービスの「KINTO FACTORY」

ディーラーオプションでは対応できない部分をアップグレード

トヨタが手がける「KINTO」。多くの人はKINTOと聞くと、サブスクで車に乗るサービスを思い浮かべるだろう。実は“KINTO”の名前が付くサービスにはもうひとつある。それが「KINTO FACTORY」だ。

KINTO FACTORYは「お客様のカーライフに幸せを提供」をコンセプトに2022年1月からスタートしたサービスで、トヨタ・レクサス・GRの車に搭載された「機能」や「装備」をアップグレードできるというものだ。

例えば、先進運転支援機能。普通なら新車購入時に搭載されたものを手放すまで、さらに言えば廃車になるまで使うことになるが、KINTO FACTORYでは新たな機能を追加できるようになる。

他にもメーカー純正品でインテリアの仕様を変えたり、ステアリングをウレタンから本革に変更したり、ドレスアップ品を選んだりすることができるのだ。
 

KINTO ▲カタログモデルにはない仕様を選んで特別感を楽しむこともできる(写真はメーターデザインをアップグレードしたもの)

これまでもディーラーオプションで車をカスタムしたり仕様向上させることはできたが、比較的簡単に交換できるものに限られていた。

しかし、KINTO FACTORYのサービスが画期的なのは工場出荷時しか仕様を選べないものを変更できたり、制御プログラムの書き換えで仕様向上させることができる点だろう。
 

人気グレードのホイールを選んだり、スライドドアの開閉スピードを速くしたりできる

では具体的にはどんなことができるか? 一部、紹介していこう。

■30系アルファード/ヴェルファイアにブラインドスポットモニター/リヤクロストラフィックアラートを装着
価格:99,000円(税込)

下記の安全装備を、未搭載車に搭載することができる。

ブラインドスポットモニター:走行時に隣接する車線の最大約60m後方から接近する車両を検知してドアミラー内のLEDインジケーターに表示する
リヤクロストラフィックアラート:バックで駐車場などから出る際に左右から接近する車両をブザーで知らせる

■30系アルファード/ヴェルファイアのパワースライドドア速度アップ
価格:14,300~19,300円(税込)

パワースライドドアの開閉速度を、制御ソフトウエアの書き換えにより速度アップ。両側対応はもちろん、運転席側のみ、助手席側のみも選択することができる。
 

▲動画の手前(運転席側)が速度アップしたパワースライドドアで、奥(助手席側)が標準のパワースライドドア。開閉速度がかなり違うのがわかるだろう

■30系アルファード/ヴェルファイアを両側パワースライドドア化
価格:132,000円(税込)

助手席側のみパワースライドドアになっている車について、運転席側もパワースライドドア化。単に電動開閉が可能になるだけでなく、スマートキーを携帯していればワンタッチで施錠&ドアオープンできる機能や、挟み込み防止機能、イージークローザーも備わる。

■クラウン(クロスオーバー)のホイールをアップグレード
価格:250,690~259,490円(税込)

上級グレードのCROSSOVER RSに標準装備されている「切削光輝+ブラック塗装21インチアルミホイール」や、クラウン専門店「THE CROWN」限定で取り扱っている特別仕様車CROSSOVER RS ザ リミテッド マット メタルが履く「マットブラック塗装アルミホイール」へ変更することができる。
 

KINTO ▲上級グレードのアルミホイールを装着可能!

■クラウン(クロスオーバー)のメーターデザインをアップグレード
価格:9,900円(税込)

標準装備のメーターデザインであるカジュアル・スマート・タフ・スポーティに加え、レトロ感を楽しめる「クラシックギア」、シンプルな高級感を追求した「メタリック」を追加表示できるようソフトウエアをアップグレード。
 

KINTO ▲12.3インチTFTカラーメーター+マルチインフォメーションディスプレイのデフォルト4デザインに加え、トヨタアップグレードセレクション限定の2デザインを追加できる

■クラウン(クロスオーバー)の内装をアップグレード
価格:59,400円(税込)

クラウン(クロスオーバー)のインテリアは艶なし塗装の素材が使われているが、それをクラウン(スポーツ)で人気のある艶のあるダークグレーメタル素材に変更できる。変更箇所はシフトパネル・ドアスイッチベース・カップホルダー・インサイドドアハンドル・コンソールエンドになる。

■RAV4のヘッドランプデザインをアップグレード
価格:148,500円(税込)

2021年の一部改良時に採用された、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車のバイビームLEDヘッドランプにアップグレードできる。
 

RAV4 ▲2021年の一部改良前のヘッドランプはこちら。これを……
RAV4 ▲このような、最新のものと同じものに交換することができる

■NXのイルミネーションアップグレード
価格:66,000円(税込)

レクサス NXは好みの色で車内をムーディーに照らす間接照明(イルミネーション)が用意される。2024年2月の一部改良でイルミネーションに使われるLEDが変更され明るさが増したが、一部改良前のモデルで最新モデルと同等(従来比の3倍)の明るさにアップグレードできる。発売と同時にオーダーが殺到したという、人気メニューだ。
 

KINTO ▲発売と同時に施工依頼が殺到したため一時受付を停止していたが、現在は再開している

■ISのパフォーマンスアップグレード
価格:132,000円(税込)

スポーツセダンのレクサス ISのパフォーマンスを高めるアップグレード。フロントとリアのバンパーリンフォース、フロントとリアのサスペンションメンバー、フロントのスタビリンクを締結しているボルトをタフフランジタイプへ交換して締結剛性を高め、ステアリングを操作する際の応答性と安定性の向上を実現する。 一部のボルトは締結時にタイヤを地面につけた状態で行う「1G締め」が取り入れられる。アップグレードにはレクサスのメーカー保証が付き、施工したオーナーには特別なプレートが発行される。
 

KINTO ▲奥が標準のボルトで、手前がパフォーマンスアップグレードで使用されるボルト。施工前後での違いは一目瞭然だという

■レクサス車のシートベルトをカラー化

運転席と助手席のシートベルトをカラー化できるプラン。用意される色はアイボリー、フレアレッド、ターコイズブルーなど全8色。2025年初旬から中旬頃にRX/RZからスタートし、順次他の車種にも展開される予定だ。
 

KINTO ▲レクサス車のシートベルトを全8色から自由に選ぶことができる
KINTO ▲カラーシートベルトはスポーティでラグジュアリーなモデルに似合う

中古車選びの常識が変わる可能性もある!

上で紹介した内容以外にも、ウレタンステアリングから本革ステアリングへの交換、ホイールキャップ交換、後付けで1500Wのアクセサリーコンセントやハンズフリーパワーバックドアの設置、インテリアカラーのアップグレードなど、車種により様々なメニューが用意されている。

どの車にどんなメニューが用意されているか、自分の車が対応しているかはKINTO FACTORYのWEBサイトで確認が可能だ。
 

 

これらのサービスは中古車探しの考え方を根底から変えるかもしれない。

というのも、新車と違って中古車は工場で製造する際に装着する装備や機能は後付けできないのが常識。

例えば、先代・30系アルファードの「両側パワースライドドア」という条件で中古車を探すとしよう。その場合、「片側パワースライドドア」の物件は、他の条件が良かったとしても外さざるを得ない。

しかし、KINTO FACTORYで両側パワースライドドア化できるのなら、必ずしも両側パワースライドドア装備物件を探さなくても良くなる。後から付ければいいのだから。

さらに、車は長く乗り続けると本革ステアリングや本革シートが擦れてしまったり、新しい先進運転支援機能が登場したりするもの。気に入った車なのでこれからも乗り続けたいが、機能が古くなったり装備が傷んだために買い替えを検討するということもあった。

KINTO FACTORYのアップグレードに対応しているものなら、こういった悩みも解決。お気に入りの車に長く乗り続けることも可能になりそうだ。
 

プリウス ▲アップグレードサービスは現行モデルだけでなく先代プリウス、先代アルファード/ヴェルファイア、先代クラウンなどにも展開されている

これらのアップグレードは車側が対応している必要があり、アップグレードできる内容も車種により異なる。2024年11月時点では、トヨタ車が22車種、レクサス車が11車種、GR車が3車種対応している。

今後、対応車種やアップグレード内容のバリエーションが増えれば、ますます中古車の選び方に影響を与えるはずだ。

KINTO FACTORYのアップグレードサービスに対応した拠点は、2024年11月時点で18都道府県に24店舗。KINTOの担当者によると、取り扱い販売店は順次拡大していくという。また、現在住んでいる県内に取り扱い販売店がなくても、他県への持ち込みで施工可能だ。

トヨタ車、レクサス車、GR車に乗っている人は、自分の車がKINTO FACTORYのアップグレードサービスに対応しているか、自分の車にはどんなアップグレードができるのかをWEBサイトでチェックしてみてほしい。
 

KINTO FACTORY

※記事内の情報は2024年11月22日時点のものです。
 

文/高橋満 写真/KINTO FACTORY、トヨタ

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESELとスズキ ジムニー