近年の新型車に続々と採用される「USB-C」端子は、どんなメリットがあるのか【いまどき・これからの車学】
2022/10/07
USB-Cは車の接続用端子の標準となる
9月16日に発売されたAppleのiPhone14シリーズ。すべてにおいて進化したといわれている新型iPhoneだが、一方で多くのデジタルギークをがっかりさせた。それが、接続用端子(以下ポートと表記)が「Lightning(ライトニング)」と呼ばれる独自仕様のままだったことだ。
世界基準とまでいわれる「USB Type-C(以下USB-Cと表記)」がなぜ採用されなかったのか。これについて語り出すとスペースがいくらあっても足りないので割愛するが、iPhoneに採用されない「USB-C」は今後、車における重要かつデフォルトになるコネクター規格となる。
USB-Cは従来のUSB-AやUSB-Bとは違い、上下対称なので向きを間違えることなく使えることは多くの人が体験済みだろう。
しかしUSB-Cは、ポート側の設計により多くのデータを転送することが可能。電源供給に関しても従来のUSB-Aに比べて急速充電能力に優れるなど、その中身は異なる。
今後の車の進化に対応できる仕様となるのがUSB-C
昨今、スマートフォンを車に接続して利用する場合
(1)ケーブル接続による音楽再生
(2)スマホの充電
(3)Apple CarPlayやAndroid Autoなどのテレマティクス接続
以上の3つが主な使い方だ。
これらに関してケーブル接続が絶対に必要なのか? と問われると「車種による」という条件は付くが、実はワイヤレスですべて対応できてしまう。
(1)はまずBluetooth接続で対応
(2)は「Qi(チー)」規格による「置くだけ充電」で対応
(3)ワイヤレスCarPlay/Android Auto接続もある。
(3)に関して言えば、まだまだ対応車種は少ないが、(1)は昨今のほとんどの車に採用されているし、(2)は純正品の他、市販品も増えてきている。
こうなると今回の企画自体に疑問符が付いてしまいそうだが、では、なぜ「USB-C」を取り上げたのかというと、実はUSB-Cは将来想定される車での使い方に対応できるように規格されているからだ。
冒頭に述べたようにUSB-Cには従来以上の給電能力が備えられている。
これらは「PD(パワーデリバリー)」呼ばれるが、スマートフォンの5G化が進むと、後席でも端末充電はもちろんコンテンツを楽しむ時間が増える。その結果、消費電力はますます増えていくことになる。
実際、昨今の新型車にはUSBポートが多く装着されており、これらによる電力の消費により、車側にも安定した電力の供給能力が求められるのだ。
その点、USB-CのPD規格は常に進化しており、最新の仕様である「USB PD EPR」の場合、最大で240Wの供給が可能だという。もちろん現在は240Wの電力供給に対応した車両は存在していない(コストも含め条件が厳しい)。
ただ、一方で車両の電動化によるオルタネーターなどの電気システムの強化はインフォテインメント系への電力供給にも影響するはずで、この点でもUSB-Cの進化はまだこれから、という見方ができる。
利便性の点でQiやワイヤレス接続がなくなることはないだろう。しかし、USB-Cにはハイスピードのデータ転送技術や車両側とケーブル側が対応(オルタネートモードなど)することで、高画質な動画をケーブル1本で楽しむことができるようになるなど、違う意味での進化が期待できる。
現在のUSB-Cポートすべてがこれに対応しているわけではないし、アップデートで改善するか? と問われると正直難しい部分も多い。
それでも、車の購入時にはどんな接続ポートが付いていて(可能であれば)出力はどのくらいなのか、を調べておくことで損をすることはないだろう。
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メルセデス・ベンツ Aクラス(現行型4代目)× 全国▼検索条件
トヨタ シエンタ(現行型3代目)× 全国カーコメンテーター、ITSエヴァンジェリスト
高山正寛
カーセンサー創刊直後から新車とカーAV記事を担当。途中5年間エンターテインメント業界に身を置いた後、1999年に独立。ITS Evangelist(カーナビ伝道師)の肩書で純正・市販・スマホアプリなどを日々テストし普及活動を行う。新車・中古車のバイヤーズ系と組織、人材面からのマーケティングを専門家と連携して行っている。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。認定CDRアナリスト&CDRテクニシャン。愛車はトヨタ プリウスPHV(ZVW52)とフィアット 500C