エレメント▲自動車・中古車に関する調査・研究を通じ業界の発展を目指すリクルート自動車総研が、調査データと独自の考察をお届け。今回のテーマは「車に対する価値観・イメージ」。不人気車とされたモデルが中古車市場で支持されるケースも(写真はホンダ エレメント)

若い世代は車をファッション的にとらえる

「 中古車購入実態調査」では、世代別に中古車に対するイメージを聞いています。

その中で世代による傾向が顕著なのが、車を「ファッションの一部」とみなしたり、「誰とも被らない車がいい」という回答で、若い世代ほど多くなっています。

これらを総合すると、車を自己表現の一部としてとらえる傾向が強いと言えるでしょう。

リクルート自動車総研グラフ

過日、すでに廃止されてしまったブランドの車に乗る若者に話を聞く機会がありました。「珍しい車ですが、何か特別な思い入れでも?」と尋ねると、「特にないです。でも、見たことないエンブレムだし、デザインが素敵で他人と被らないところが良くて」と答えてくれました。

データやこの若者の話から察するに、彼らにとって車とは、気分に合わせて個性的に着飾る「一番大きなアウター」のようなものなのかもしれません。

エレメント ▲ホンダ エレメントは2003年の発売後、わずか2年あまりで終売となったモデル。現代のモデルとは一線を画すデザインが人気で、中古車相場はジワリ上昇中

ヒエラルキーが崩れて“個性車”が選ばれる時代に?

少し前は誰もが憧れる車がありました。例えば、日産 GT-Rやホンダ NSXといったスポーツカー。

そのようなモデルは同一車種でも、チューンナップされたスポーツグレードや出力の大きなエンジンを搭載したものは人気が高く、中にはカラーまで人気が決まっていて、中古車の金額に反映されるほど明確な序列が。

現在も特定のモデルやグレードで、このヒエラルキーは残っていますが、以前に比べて薄まっているように感じます。

ハリアー ▲国内のみならず海外でも高い人気を誇る日産 スカイラインGT-R(R34型)。中古車平均価格は2年で約2倍に高騰している。近年のモデルでこのように人気が集中することはあまりない

先述の若者の愛車は、このヒエラルキー上では「不人気車」の一言で片付けられてしまいそうな車ですが、本人はそこに立派な価値を発見していたのです。

若い世代を中心に、嗜好や時間の過ごし方が多様化しているといわれますが、車選びの世界も、今後さらなる多様化が進むかもしれません。

240エステート ▲新車販売されていたのが20年前かつ、現在では王道ではない「ステーションワゴン」というカテゴリーながら、若者を中心に人気のボルボ 240エステート(初代)

ともすれば、同一車種に人気が集まりにくいので、「車離れ」と感じやすいのかもしれません。

ですが、離れながら自分らしく、価値を見いだして多様に楽しんでいる若者の車文化。不人気車を個性車に変えちゃうなんてむしろ立派な車好きですよね!

文/西村泰宏、写真/ホンダ、ボルボ、日産
西村泰宏(にしむらやすひろ)

リクルート自動車総研所長

西村泰宏

カーセンサー統括編集長 兼 リクルート自動車総研所長。自動車メディアを車好きだけでなく、車を購入するすべての人のエンターテインメントに変革すべく日々の仕事に従事している。