MAZDA CO-PILOT CONCEPT ▲マツダが発表した、次世代のADAS(エイダス:先進運転支援システム)である「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」のテスト風景

中古車における安全装備はどう選べば良いのか?

前回、この連載で「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」について取り上げた。カメラやセンサー類を活用し、人為的な運転ミスによる事故を極力未然に抑えることができる機能を先進運転支援システム(以下ADAS(エーダス)と表記)と呼び、現在販売されている最新車種におけるその進化は驚くべきものだ。一方、すでに法制化により乗用車に標準装備化されているABS(アンチロックブレーキ)やESC(横滑り防止装置)も含め、中古車を購入する場合、これらを総称とした「安全装備」は何を規準に選べば良いのか、選択の難しさという問題が浮上する。

その前に前提として伝えておきたいのは「安全装備が付いていないからこの車(中古車)はダメだ」というわけでは決してない。車は社会における重要なインフラであると同時に、文化としての側面ももっている。実際これまでも時代に合わせて文化を育んできたわけで、その部分は肯定できるし各ドライバーが責任をもって所有・運転することで交通社会は形成される。

それでも、運転初心者や昨今の高齢化問題を受ければ、安全装備を搭載した車両は積極的に選びたい。前述した乗用車におけるABSやESC(横滑り防止装置)に続き、ADASの項目に含まれる「衝突被害軽減ブレーキ」も、国産の新型車は2021年11月から義務化(継続生産車は2025年12月まで延長措置)されることで、必然的に中古車におけるADASの搭載率も向上していくことになる。


“BMW ▲BMWの場合、高性能3眼カメラ&レーダー、高性能プロセッサーによる最先端の運転支援機能を3シリーズ(写真)以上に装着。一定の条件で、高速道路渋滞時にステアリングから手を離せるハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能を備える

中古車の流通台数は、その発生ベースとなる新車販売と密接に関係することは今更言うまでもないが、昨今の半導体不足による新車販売の落ち込みは若干のタイムラグを経て中古車の発生量にも必ず影響してくる(現実にはすでにそういうモデルも存在する)。3月末に決算を迎える販売会社も多いことから、これまでは4月以降に下取り車を中心に良質な中古車の流通量が増加していたが、新車販売が落ち込んだ今年は非常に難しい。筆者は毎日のようにカーセンサー.netを見て「お気に入り」を常にフルストックし、狙い目車種を登録しているが、「これだ!」と思う物件の動き(つまり売れてしまう)は本当に早い。
 

最低でもこれはチェックマークに入れておきたい

ADASを含めた安全装備は多種多様で、これをすべて満たす車はそれほど多くはない。おまけに多くの機能が英字3文字(例、ACC=アダプティブ・クルーズ・コントロール:自動車専用道路などで前走車との車間距離を検知して決められた速度を維持し調整する機能)に略されており、それだけでも用語などを統一してほしいと感じるユーザーも多いはずだ。
 

“カーセンサーEDGE.net” ▲カーセンサー.netで中古車を検索する際の詳細条件選択画面。基本情報に安全装備などのチェック項目が並んでいる

原稿執筆時点(2022年2月上旬)の「カーセンサー.net」には、全国で47万2257台の中古車物件が掲載されていた。ここから安全装備に注目した絞り込みを行ってみた。

まず「修復歴車」を除き、

①ABS(アンチロックブレーキシステム)
②横滑り防止装置
③衝突被害軽減ブレーキ
④アクセル踏み間違い誤発進防止装置
⑤運転席エアバッグ
⑥助手席エアバッグ
⑦サイドエアバッグ
⑧カーテンエアバッグ

をセレクトする。

カーナビやバックカメラなど後付け対応ができるものは今回選択からは外している。

しかし、これら①~⑧すべて満たすと流通台数は「2万149台」と大きく減少する(それでも先月調査よりは約2000台増)。

もちろん、これで好みの物件が見つかれば問題はないのだが、少し選択を緩めることで選択肢は増やすことができる。

特に③や④に関しては最近の新型車に多い安全装備なので、これを対象から外してみると「11万142台」と物件は約5倍に増える。さらに⑦と⑧(セットの場合も多い)を外してみると物件数は「27万6544台」まで一気に跳ね上がる。ここがギリギリのところだろう。

あらかじめ誤解のないように言っておくが、「安全装備は付いていれば付いている方が良い」ことは基本的に間違っていない。

ただし、システムが複雑化されたことで本来なら起きないエラーが発生する可能性も否定しない。しかし、労働災害の統計から導き出された有名な「ハインリッヒの法則」による「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある」という考えも事実だ。ゆえに多くの自動車メーカーは事故ゼロを目指し、全方位における安全運転支援を開発し実装し続けているのだ。

そして現在、カーセンサーnetに掲載されている中古車物件の半分以上がADASを含めた安全装備を搭載しているようになったことは交通社会の安全面でいえば非常に喜ばしいことなのだ。
 

ホンダ N-BOX ▲軽スーパーハイトワゴン、N-BOXの場合、先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」を標準装備する
ホンダセンシング ▲ホンダセンシングの衝突軽減ブレーキ、作動イメージ
ホンダ N-BOX ▲昨今は軽自動車でもフルエアバッグの搭載は当たり前になりつつある

余談だが、昨年末に筆者の知り合いから軽自動車のスーパーハイトワゴンの購入相談を受けたのだが、ADAS(本人には優しく安全装備と伝えた)については全く理解していなかった。その知り合いのように、毎日車に乗っている人でも最近の安全装備事情には少し疎い人も少なくないのだろう。当初の予算で選んだ物件は④、⑦、⑧の他、ACCが搭載されていなかったのだが、結局予算オーバーしても①~⑧すべて+ACCなどをフル搭載した中古車を購入した。販売会社の営業も上手かったのかもしれないが、本人も子供を載せる機会が増えているので、安全装備の大切さは今更ながら重要と感じたそうだ。

これらは一例だが、今後はADASを含めた安全装備を搭載する中古車が増えていく。機能を理解することで賢く安全な車を選ぶことができることは覚えておいて損はないはずだ。

文/高山正寛 写真/マツダ、BMW ジャパン、本田技研工業

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“高山正寛

カーコメンテーター、ITSエヴァンジェリスト

高山正寛

カーセンサー創刊直後から新車とカーAV記事を担当。途中5年間エンターテインメント業界に身を置いた後、1999年に独立。ITS Evangelist(カーナビ伝道師)の肩書で純正・市販・スマホアプリなどを日々テストし普及活動を行う。新車・中古車のバイヤーズ系と組織、人材面からのマーケティングを専門家と連携して行っている。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。BOSCH認定CDRアナリスト。愛車はトヨタ プリウスPHV(ZVW35)とフィアット 500C