「CO-PILOT CONCEPT」からも見えてきた、マツダの考える自動運転とは?【いまどき・これからの車学】
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2022/01/19
CO-PILOT(副操縦士)が安全運転をサポートするという考え
マツダは昨年11月に次世代のADAS(エイダス:先進運転支援システム)である「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」を発表した。
リアルワールドで考えるとまだまだだが、一種のトレンドとして取り上げられる機会も多い「自動運転」。そもそも自動運転は、人間がすべき「認知」「判断」「操作」を車両側に段階ごとに委ねることが基本的な概念だが、マツダの場合は自動運転ではなく、あくまでもADAS(先進運転支援システム)。「CO-PILOT=副操縦士」と名付けられたシステムが人間の状態を見守ることにより、万が一車両の操作ができなくなったときに運転に介入することで、安全な場所に車両を停止させ警察や救急への対応(連絡)を行うものだ。
このシステム、まずは「MAZDA CO-PILOT CONCEPT 1.0」として2022年に導入予定の新型車への搭載が決まっている。具体的に行える機能としては、ドライバーの異常を検知すると車線を維持した状態で減速停止(一般道)、さらに高速道路走行時には路肩への待避やハザード&ストップランプ/ホーンにより外部に異常があったことを伝えるもの。
さらに、2025年には今回の目玉である「2.0」へのアップデートを予定しているという。ドライバーに対してもいわゆる“先読み”となる予兆検知(脳科学の領域も取り入れる)を行うことで、一般道での待避能力の性能向上を図る。そして何よりも、1.0でできなかった高速道路での車線変更を伴う路肩への待避、さらには非常停止帯までの待避機能も加わるという。
人生いろいろ、ADASにもいろいろ、マツダは他社と少しだけ方向性が違う?
ここまで書いても「別にこれまでのADASとどこが違うのか?」と思う人もいるだろう。ただマツダの場合は「人が主体」という考えが根底にあることが大きい。要は車を運転するのはあくまでも人であって、だからこそ移動や操る歓びを得ることができる、という考え。そのうえでADASはどうあるべきか、という解答がこの「CO-PILOT」なのである。
今回、驚いたのは1.0ではなく、将来を見据えた2.0のコンセプトモデルを一般公道で試乗する機会に恵まれたことだ。試乗といっても安全面におけるリスク回避のために運転席にはマツダのエンジニア、取材者は助手席に乗り、後席に座るエンジニアの解説を受けながら各機能を体感する形式だ。
試乗車のベースは市販されているMAZDA3で、これまでのADAS機能にプラスして12台のカメラや制御用のPC(ECU)などを搭載していた。
同システムのセールスポイントのひとつが、センターディスプレイ内に搭載するカメラがドライバーの異常(今回は居眠りや突然の意識喪失など)を感知してシステムを作動させることだが、まだ公道でこれ自体はもろもろの都合で行えない。ゆえにエンジニアがスイッチを押す形にはなったが、「ドライバーの異常を検知しました」というメッセージ表示と音声に続き、ここからは車両側が周辺の交通状況をセンシングしながら自動で路肩に停止させ、最終的にはヘルプネットを使って警察や救急へ連絡する。
ここで感じたことは、この一連の動きがイメージしたよりスムーズであること。もちろん一般道とはいえ、交通状況は日々変化する。それでも白線認識や路肩への停車時にドアが開けやすいように路肩と車両の間を70cm確保、また停車時にはドアロックを自動解除するなど、救出のしやすさまで考えられている。
今回3つのテストを体験したが、車線変更や停止時の自車位置が非常に正確だった。一番驚いたのは、システム上に「3D高精度マップ」が組み込まれていた点だ。今後は5G通信とともに自動運転のカギとなる重要な技術だが、将来搭載された際の価格上昇はさておき、GPSやカメラ類だけでは実現できない部分をしっかり支える技術として、信頼性の面でも期待できる。
そして最も重要なのが、システム名が表すように「CO-PILOT」が常にドライバーの運転を見守っている点である。これは「HMI仮想運転技術」と呼ばれるものだが、前述したセンサー類とAIにより、車両側は常に仮想的な運転をシミュレートしている。言い換えれば、システム側が常に自動運転を行っているようなイメージだ。
「CO-PILOT」はドライバーの操作や車両の動きが一致しないと判断したときに、初めてシステムが介入するわけだが、冒頭に述べたようにそれまではドライバーは何も感じることはない。あくまでもドライバーを軸に据えている点が他社とは方向性が異なるのだ。このあたりはロードスターを筆頭に「Be a driver.」を掲げるマツダならではの強い意思表示とも感じ取れた。