【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】カーセンサー中古車購入実態調査2020について(中編)


お暑うございます。フェルディナント・ヤマグチでございます。

リクルート自動車総研が行った「カーセンサー中古車購入実態調査2020」によると、コロナ禍が始まる前と後ではクルマの選び方に顕著な変化が見られたそうです。

そりゃそうですよね。働き方が大きく変わり、気軽に酒も飲めなくなり、産業構造が根底から変わってしまったのですから、クルマの選び方だって変わろうというものです。

中でも大きな変化は、「大勢で出かけるためのもの」から「個の時間を楽しむためのもの」と考える人が増えたこと。集団から個へ。もともとあった潮流が加速した感じもするのですが、その影響かどうか、その辺を走るだけでも楽しいスポーツカーの相場が軒並み高騰しているのだそうです。

今回は『中古車の購入を検討し始めてから購入に至るまでの時間』をお題目に話を進めていこうと思います。

ここにもコロナの前後で大きな変化が出ているようです。

早速データを見ながら、西村編集長と話をしていきましょう。



コロナ禍を機に中古車購入に至るまでの時間が短くなった!?

編集担当・大津
大津

今回も事前にお送りした「カーセンサー中古車購入実態調査2020」のデータを見ながらお二人にお話ししていただこうと思います。

カーセンサー・西村編集長
西村

今回の調査結果で我々が注視している結果のひとつが、中古車を買うまでの時間が短くなっていることです。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

それが具体的にどういうことか、読者諸兄にもわかりやすく教えてもらえますか?

西村
西村

前回も散々話したとおり、2020年はコロナ禍という現代人がかつて経験したことのない未曾有の事態が起こりました。世の中の先行きが不透明になり、世界中がロックダウン(日本は緊急事態宣言)されて人々が外出すらできなくなった。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

人々がクルマを買いにいけなくなっただけでなく、クルマやそこに必要な部品を作る人も仕事に出られなくなりました。都市封鎖ならぬ地方封鎖と言えるかも。

西村
西村

日本、中でも都市部は公共交通機関が発達しています。ところが、コロナウイルスという目に見えないものとの戦いが始まり、不特定多数が乗る公共交通機関に乗るのが怖いという理由から、とりあえずクルマが欲しいという需要が高まりました。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

アシグルマ、ゲタグルマと呼ばれるものでもいいからとりあえず1台手に入れようという需要ですね。

西村
西村

そうです。前編でお話しした購入単価の減少は、まさにこういう需要が増えたからでしょう。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

そういう人はクルマの細かな装備の違いや色の違いなどにこだわらず、すぐ手に入るものを買う。だから、「検討から購入までの時間が短くなった」ということですか。とにかく安く、とにかく早く! 安い、早い、うまい。うまいは無いか(笑)。

西村
西村

牛丼屋さんみたいですね(笑)。でもおっしゃるとおりです。とにかく安く即決できるものが欲しいと。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

そういう人はお店に行ったその日に即決ですか?

西村
西村

コロナ前とコロナ後では検討期間が10日以上短くなっています。具体的にいうと2019年が51.3日だったのに対し、2020年は40.4日になりました。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

それでも思ったより長いですね。てっきりお店に訪れてすぐ買う人が増えたのかと思いました。

西村
西村

これは、お店に行ったりカーセンサーを見始めてからではなく、「クルマが欲しいな」と思ってからの期間ですからね。具体的に動き出すまでにある程度の時間がかかる人も多いと思います。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

なるほど。クルマは高い買い物だから、家族に相談したりする期間もありますからね。

西村
西村

10日間も短縮されるというのはかなり大きなことですよ。週末1回、タイミングによっては週末2回分短縮されることですから。週末に車を見に行くことを考えると、多くのお店に足を運んでみるのをやめているということになります。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

つまり、カーセンサーで事前にいろいろなクルマを見比べて、ピンポイントでお店に足を運んでいると。

西村
西村

初めての緊急事態宣言下となった昨年のゴールデンウイークで人々が販売店に行きづらくなったとき、僕らはまず「オンライン相談」を導入しました。ネットのテレビ通話で商談ができる仕組みです。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

中古車屋さんとカスタマーが直接話をできるシステムですか?

西村
西村

そうです。仕組みとしては元々LINEやzoomなどを使えばできるものですが、そのためには個人情報をお互い教え合う必要があります。僕とフェルさんならLINEで話せばいいけれど、カスタマーとしてはまだ買うかわからないのに個人情報をお店に教えるのは抵抗がありますよね。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

それはそうですよね。私なら絶対に教えませんよ。後でセールスの連絡がじゃんじゃん来たりしたら面倒ですもの。

西村
西村

そこでカーセンサーの中に、相談をしたいときだけオンラインでつながれる箱を作ったんです。それを使うことで、個人情報を販売店に伝えずに相談ができるというものです。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

へぇ。そういうことか。

デジタルツールを活用して購入期間を短くする流れが加速中

西村
西村

これまでは、事前に掲載写真などをチェックして詳細は販売店で確認するというのが一般的でした。でも、このシステムを使うと、何店舗も回らなくても詳しいことをお店に聞くことができるようしました。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

つまり、購入までの時間が短くなったのはカーセンサーのおかげ、という部分もあるのですか?

西村
西村

この調査では、検討期間を10日間も短縮するほどの大きな影響はまだ与えられていないと思います。
ただ、同じようなシステムはディーラーなどでも取り入れています。世の中的にはデジタルツールを活用しながら、購入までの時間を短くするという方向にシフトしているのではないでしょうか。

オンライン商談 ▲スマホやパソコンがあれば、お店に行かなくても質問や相談をすることができる(画像はオンライン相談イメージ画像)
フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

今、カーセンサーnetの物件ページを見ているのですが、オンライン相談はどこからできるのですか?

西村
西村

検索条件の中に「オンライン相談可」というチェックボックスがあります。現在は販売店の方でその仕組みを導入するかを選択することになっているので、すべての販売店でオンライン相談ができるわけではありません。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

なるほど。こりゃよくできてるなー。

西村
西村

あとコロナ前から始めたこととしては、画像を回転させて内外装を360度確認できるサービスがあります。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

これはコロナ前からやっていますよね?

西村
西村

カスタマーの心理としては特定の角度からしか写真を撮影していないと、「見えているところはキレイだけれど、写っていないところはどうなの?」と感じることもあるようです。360度確認できるというのは、商品の状態を隅々まで確認するだけでなく、包み隠さず見せるという販売店のスタンスを表すこととも言えますね。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

エンドユーザーからすれば、どこでも好きな場所を自由に見られるということは商品に自信を持っているはずだと。

西村
西村

なので、どんなパーツが付いているかなど細部を確認したいクルマ好きももちろんですが、詳しくない人からの支持が高くなっています。

大津
大津

私もまだカーセンサーに配属されて日が浅いので、360度画像があるものをついつい見ちゃいます。

西村
西村

コロナが落ち着くと、コロナ前の状態に戻る部分も出てくると思います。でも、スピーディに購入したいという流れは変わらないのではないかと感じています。早く手に入るなら、それに越したことはないでしょうから。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

クルマ好きからすれば、販売店に実車を見に行くこと自体が楽しみのひとつなのですが、クルマにそれほど興味がない人には面倒でしかないですものね。将来的にはネットショッピングのように一度もお店に行かず、実車も一度も見ずに買うという流れになるかもしれませんね。

西村
西村

いや、100パーセントの移行はないかもしれません。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

そうですか? その方が断然ラクじゃないですか。

西村
西村

あくまで中古車は一物一価の商品です。同じ状態のものは2つとないので、最終的に現物を確認したうえで買うことを業界全体では推奨しています。これは、どれだけ新しいデジタルサービスが生まれても変わらないでしょう。見なくても大丈夫、と安心して買える世界をつくっていきたいですが。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

なるほど。新車を買うのとは訳が違いますものね。
一方で、コロナ禍では何度も販売店に足を運ぶのはリスクが高い。そこで、オンライン上である程度細部まで確認して希望のクルマを絞って行き、最後に実車を見て契約する。まさに、ユーザーコンビニエンスです。販売店からしても来店されるよりはるかに効率がいい。そうなると、第三者の目線でクルマの状態を査定してくれるサービスが必要になってきますね。売る側はどんなポンコツでも「極上車」って言うのでしょうから(笑)。

大津
大津

カーセンサーでは「カーセンサー認定」という形で行っています。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

それは誰が査定するのですか? カーセンサーの人が見に行くの?

大津
大津

カーセンサーが提携しているAISの検査員が1台ずつレーティングしています。

西村
西村

僕らは中古車購入という体験を通して、カスタマーに不安や嫌な思いをしてほしくない。でも、メディアは情報を提供しますが、あくまで第三者です。第三者だからこそ、不安などを取り除くために貢献できることは何かを考えて生まれたのが現在のサービスです。

フェルディナント・ヤマグチ
フェルディナント・ヤマグチ

なるほど。お客が中古車を買ううえで何が一番怖いかというと、やっぱり壊れることだと思います。昔だったら販売店によっては「だって中古ですから」と平気で言うこともあったでしょう。そういう不安を取り除くための仕組みづくりを続けてきたのですね。興味深い。

(中古車購入実態調査編も佳境に入ってきました。次回、後編へ続きます!)
 

文/フェルディナント・ヤマグチ 編集協力/高橋満(ブリッジマン)
フェルディナント・ヤマグチ

コラムニスト

フェルディナント・ヤマグチ

カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。