「Honda マンスリーオーナー」という車のサブスクがコスパ良すぎる!中の人にどうなってるのか聞いてみた
2020/11/20
なんかこのサブスク、めっちゃお得じゃない?
「月々29,800円でホンダ N-BOXの認定中古車が保有できる」
このフレーズどう思いますか? 僕は「めっちゃ安い!!」って思っちゃいました(ホンダの回し者とかじゃないです!)。
だって同じくN-BOXのレンタカーを半日借りたら6~7,000円ほどかかるわけで、毎週末に1日乗ってたらほぼイーブン。それが荷物詰みっぱなしOKで、家の目の前から乗れて、いつでも好きな時に使えるんだから、そりゃ安い!
これ、実際にホンダが提供する「Honda マンスリーオーナー」という車のサブスクサービスなんです。車種ごとに決まった月額料金を支払うことで車を保有できて、いつ解約してもOKというもの。価格は最安がN-BOXで29,800円~。それ以外にもホンダの人気車種を提供していて、しかもすべてメーカーの認定中古車とのこと。
2020年1月に埼玉県内の店舗で試験的にスタートしたところ、人気殺到。車がサイトにアップされる毎週月曜には即、申し込みが入ってしまい予約待ちという状況が続いていたそう。
そして、その人気に応えるべく9月からホンダはこのサービスの段階的な全国展開を開始! 年内には全国8ヵ所のホンダディーラーで取り扱いが始まる予定です。
とまぁそんなサービスなのですが、「ぶっちゃけ安すぎじゃね?」「新車を売りたいハズのメーカーが何でこんなことするの?」と疑問がふつふつと湧いてきまして、ホンダさんにインタビューを申し込んでみました! 今回はその模様をお届けします。
そもそも車のサブスクとは
その前に、サブスクとは何ぞや? というのを簡単に。
(ご存じの方は読み飛ばしちゃってください!)
まず車の乗り方は現在、大きく分けて以下の3つに分けられると考えています。
① 所有(新車購入 or 中古車購入)
② 保有(リース or サブスク)
③ 利用(レンタカー or カーシェア)
この中で②のサブスクに「Honda マンスリーオーナー」も含まれます。車のサブスクとは、自動車メーカーや中古車販売会社を中心にサービス展開していて、ここ2~3年で増えてきたジャンル。個人向けリースとの違いは曖昧ですが、コミコミの月額料金の中に任意保険まで含まれているのがおおまかな違いと言えそうです。
ただ、この車のサブスク、3年や5年の契約で途中解約はできない、あるいは違約金が発生するケースがほとんど。動画配信サービスなどでイメージするような、1ヵ月単位で契約していつでも解約できる「いわゆるサブスク」とはちょっと実態が異なってます。
そんな中、Honda マンスリーオーナーの特徴は以下の3点。
・1ヵ月単位から借りられて、違約金なしでいつでも解約できる
・月々約3万円から
・車はすべてメーカーの認定中古車
ん~~~。なんだか宣伝みたいですが、こう並べてみると確かに魅力的じゃないですか?
だからこそ「なんでそんなことできたの?」がやっぱり気になる! そこでホンダの中の人に率直に疑問をぶつけてみました!
本田技研工業株式会社 営業企画部
井上さん
2020年1月にHonda マンスリーオーナーの企画立ち上げをされたご本人。
インタビュアー
高橋亮介
カーセンサー編集部員。最近、営業から異動してきた。MT車を動かす機会はやんわりと回避しているゆとり世代。もりそばがあるのに平然とざるそばを頼めちゃう人には畏敬の念を抱いている。
まずはホンダ車に触れもらうことが目標
早速なんですけど、なんでこんなにユーザーメリットばかりのサービスを実現できたんですか?
ウチの場合は新車をどう売るか? 中古車をどう売るか? ではなく『まずホンダ車に触れてほしい』というのがありました。しかもそれを若者を対象にやりたかった。
じゃあゴールは、車を買ってもらうことじゃないんですね?
そうですね。ただ、期間を11ヵ月までにしているのは一応それ以上なら買っちゃった方がお得だからです。なので「所有」と「利用」の中間というサービスですね。
11ヵ月後は、もちろん引き続きマンスリーオーナーで別の車を利用してもいいし、使用頻度が減るならカーシェアにしてもいいし。結果的に若い人がホンダ車に接点をもってくれてればいいと思ってます。
若い人にホンダ車との接点をもってもらうことが目的だと。
実は調査の結果、ホンダディーラーのお客様の平均年齢が、他メーカーも含めた全国平均に比べてかなり高齢化してきているということが分かったんです。これを何とかしなければならないと。
あとは心情的な話ですが…… 「若者の車離れ」って言うじゃないですか。あのフレーズがすごい悔しくて。
ホンダってそんなに年齢層が高いイメージなかったですが……。
僕らも、ウチは軽やスモールカーが多いからメーカーの中では若いお客様が多いかと思ってました。年齢層が高いことは安全装備などの強みをより一層発揮できるという意味ではポジティブな面もあるんですが、将来的なことを考えるとやはり若いお客様を増やしていかなきゃいけないなと。
そうしたときに、若い人にとってディーラーってちょっとハードルが高いところあるかなと思ってます。頼んでもないのにコーヒーが出てきたり、純粋にサービスのつもりなんですけど、かえってプレッシャーに感じて行きにくい人もいるのかなって。
それで『まずホンダ車に触れてほしい』と。
カーシェアやサブスクは有料ですけど、そのぶん気を使わず好きに乗って体験できますから。実際、マンスリーオーナー利用者へのアンケートでも、4割の方が購入前の試乗のためと答えられています。
カスタマー目線からの逆算
月々29,800円からというのは、絶妙な値付けですよね。
実は先行して、2017年にEveryGo(エブリゴー)というホンダ車のカーシェアを始めたんですが、月5回とか利用する人がいるんです。もうそれだったら所有した方がいいんじゃない?と思ってたんです。
そういう人って、ほとんど週1・2回の土日の利用なんですよ。土日って当然予約が集中するので、カーシェアでなかなか借りられないという悩みがあったと思うんです。
あるあるですね。
そこへ『あなたの家の目の前がステーションになります。しかもいつでも好きな時に予約なしで使えます。どうですか?』という提案がしたかったんです。
そのためには、そもそもお得感や安く使いたいと思ってるはずだから、じゃあ新車じゃなくて中古車を使おうとか。そういう手順で価格含めてサービスの輪郭を整えていきました。
カーシェアのユーザー目線で価格も決めていったんですね。車の価値から逆算しての価格設定じゃないということですが、このサービスでの収益性はいかがでしょうか?
そこはホンダマンスリーオーナーだけの店舗をレンタカー屋のように構えていないことから分かっていただけるかなと(笑)。
ウチはもともとあるディーラーの場所でやっているから追加の固定費はかからないですし、もともと新車や中古車を扱うビジネスもやっているからこそ、長い目でお客様との接点が増えることがなにより大事という考え方で成り立つと言えますね。
いち自動車メーカーだけでは解決できない課題
なるほど。それでいうと他のメーカーも同じかと思うんですけど、ホンダだからできた理由って何かありますか?
実はあんまり分かってなくて、強いて言うなら系列のレンタカー会社もなかったので、『所有と利用の中間』という領域をフラットに考えられたのかもしれません。
じゃあ他のメーカーもマネできますか?
できると思います! それに、お客様の高齢化とか若者の車離れって、もはやいち自動車メーカーだけの課題じゃないじゃないですか。各社様々工夫している中で、ウチはウチにできることを考えてこの形のサービスになって、幸いにも好評いただいているというだけのことなので。
やっぱり「若者の車ばなれ」って言われるの悔しいじゃないですか。僕らメーカーからしたら。
そういえば、N-BOXやフィットだけじゃなく、ホンダ S660もラインナップしてますね。2シーターの軽オープンって…… このビジネス的にはちょっとトンがり過ぎてません!?
ハハハハハハハ。そこ入れちゃうのは、ホンダらしさかもです(笑)。
徹底したユーザー目線と、情熱
どのメーカーにもできるし、やればいいという井上さん。「ホンダならではの秘訣!」があるのかと思いきや、ただ単純にカスタマー目線で考えた結果、こういうサービスになっていました。
そして「若者の車離れと言われるのが悔しい!」と繰り返されていたのが印象的で、そこに井上さんの強い動機を垣間見た気がします。
車が欲しかったりカーシェアをよく利用する人はもちろんなのですが、なんだかこれからビジネスを立ち上げようとしている人にとっても参考になりそうだなぁーと、ビジネス素人ながら勝手に思ったのでした!
※2020年10月時点の取材を記事化しています
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