▲最後のモデルとなったホンダ・5代目プレリュード。2.2L VTEC、左右駆動力配分機構ATTSが搭載された「Type S」はおとなしい見た目に反したスポーティなモデルだった ▲最後のモデルとなったホンダ・5代目プレリュード。2.2L VTEC、左右駆動力配分機構ATTSが搭載された「Type S」はおとなしい見た目に反したスポーティなモデルだった

必死になっても仕方ない! と開き直った平成8年

【平成メモリアル】企画も、ついに23年前まできたよ。

平成8年(1996年)、私なんかはそんなに昔じゃない気がしちゃう。

TVアニメ版「るろうに剣心」のテーマ曲は? と尋ねられれば、今でも即座にJUDY AND MARYの『そばかす』と答えられるのです。

さて、この頃の日本といえばバブル崩壊のインパクトも若干薄らいで、この不景気ずっと続くんじゃ……と勘づき始めた、そんな時代。

若い女子のファッションもジュリアナに代表されるワンレンボディコンから一転して、PUFFYみたいなのが流行始めた。

あれ何系っていうの? 脱力系っつーか、ワーカー系っつーか、なんちゅうか本中華。

コギャル、ルーズソックスも一大ムーブメントに。

なんだか社会全体がゆるーくなっていったのです。

▲まだポケベル全盛の時代! 若い女子を中心に利用者が増えた。「ポケベルが鳴らなくて」というドラマ&ヒット曲も ▲まだポケベル全盛の時代! 若い女子を中心に利用者が増えた。「ポケベルが鳴らなくて」というドラマ&ヒット曲も

ポケベルから車までコンパクトなサイズが人気に

そして、ポケットに入れられるものが大流行。

ポケベルは過去最多の利用者数に。たまごっちも爆発的に売れました。

ゲームボーイ用ソフトの「ポケットモンスター」も大人気。

屋外に持ち運んで使える手軽さ、気軽さ、コンパクトさがウケる世相だったのかもしれません。

一方、車といえば、セダン、クーペ、ハードトップがマジョリティだった最後の時代、という感じ。

かつて一世を風靡したホンダ プレリュードはトップ画像の5代目を最後に、インテグラと統合。

他にもトヨタ チェイサー、日産 レパード、三菱 ギャランなど、この年に登場したモデルを最後に長い歴史の幕を閉じた車種がたくさんありました。

▲人気漫画「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」 の影響で、第2次ミニ四駆ブームも到来 ▲人気漫画「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」 の影響で、第2次ミニ四駆ブームも到来

今出したら再評価されるかも

▲1959年から続いてきた歴史も、この10代目で最後となった日産 ブルーバード。ちなみに「SSS」はスーパースポーツセダンの略 ▲1959年から続いてきた歴史も、この10代目で最後となった日産 ブルーバード。ちなみに「SSS」はスーパースポーツセダンの略

それではまいりましょう、平成8年に登場した車の私的トップ3はコチラ!

まずは10代目にしてラストモデルとなった日産 ブルーバードU14型系です。

なぜ、この車を取り上げたかといえば、現在のネット上にほとんど情報がないから。

え、そんな理由? って感じですが、なかなかないよ、これだけネット上に情報が氾濫している現代において。

9代目や、後継となるシルフィの試乗記は結構見つかるのに、なぜか10代目だけが全然ない。

ロストジェネレーションなのでございます。

この頃、すでにワタクシ、この業界で働いていましたが、メーカーの広報用車両に乗った記憶もありません。

ただ一時期、社有車の代車としてやって来たことがありまして、悪くないじゃん、と思ったのを記憶しています。

だって中身はプリメーラだもんね、良くて当たり前。

先代とは違って直線基調になったスタイリングもシュッとした印象で良かった。

もし今探すなら、2リッター「SSS」のアテーサ(可変トルク配分機構付き4WD)・5MTか、190psのNEO VVL(可変バルブタイミング)になった「SSS-Z」(こちらはFF・CVTのみの設定)。

きっと今乗っても楽しいと思うけど、人気なかったから中古車市場にもないだろうなー。

なんだか楽しそう! なイメージ作りで大成功

▲ツートンカラーの明るい塗色などカジュアルなイメージを打ち出して大成功したトヨタ イプサム(初代)。シャシーのベースとなったのはコロナプレミオ ▲ツートンカラーの明るい塗色などカジュアルなイメージを打ち出して大成功したトヨタ イプサム(初代)。シャシーのベースとなったのはコロナプレミオ

続いて2位は……そうねえ、迷うところだけど、トヨタ イプサムにしておきましょう。

RVブームが来ていたといっても、まだ本格四駆やステーションワゴン、ワンボックスが中心で、ミニバンが少なかった時代。

1994年に発売されたホンダ オデッセイが大ヒットしたのを見たトヨタが、こりゃウチも早急に出さにゃ、となって登場したのがイプサムでした。

オデッセイが当初から高級路線だったのに対して、こちらはあえてヤングファミリー向けのカジュアル路線で勝負。

CMに起用されたのは、ビビアン・スーちゃん(なつかしー)と「イプー」なるCGキャラでした。

正直、車自体の完成度としては乗用車をベースに開発されたもので今ひとつでしたが、ミニバンをファミリーカーの主流へと一気に押し上げた、という歴史的功績を称えてのランクインです。

▲コンパクトな車体に3列シートのパッケージは当時斬新だった ▲コンパクトな車体に3列シートのパッケージは当時斬新だった

ちっちゃくたって使い勝手の良い車内

▲ブ厚いバンパーなど外観でも若者ウケを狙ったホンダ S-MX。純正でローダウンモデルも設定されたdata-credit= ▲ブ厚いバンパーなど外観でも若者ウケを狙ったホンダ S-MX。純正でローダウンモデルも設定された

そして1996年のトップは、ホンダ S-MXに決定!

同年、先に登場したステップワゴンのショート版ともいえる、この車。

何が斬新だったかって、そのパッケージなのです。

ベンチタイプのシートにコラムシフト、平たい形状の座面&シートバックは1-2列目をつなげたフルフラットにすることもできる。

その広さはなんとセミダブルベッド並み!

ラゲージ側に頭を向けて寝そべると、なぜかソコにはティッシュボックスを入れるのにちょうどいい大きさのトレーが……。

いや失礼しました。とにかくいろんな意味で使い勝手の良い車だったのです。

こんな車が僕の学生時代にあったらナー。

▲後席シートバックは後ろに倒してフルフラットにすることも、前に倒して荷室容量を増やすことも簡単にできた▲後席シートバックは後ろに倒してフルフラットにすることも、前に倒して荷室容量を増やすことも簡単にできた

というわけで、今回も独断と偏見で決めてしまった平成8年登場車種のトップ3。

車が単なる移動手段、ドライビングを楽しむためのもの、といった従来の価値観から、車内にいること自体を楽しむべきものへと大きく変化していった時期でした。

text/田端邦彦
photo/ホンダ、日産、トヨタ、Aadobe Stock、photoAC