▲コンパクトSUVの先駆けとなった初代RAV4。乗用車的な乗り味が好評だった ▲コンパクトSUVの先駆けとなった初代RAV4。乗用車的な乗り味が好評だった

暗いムードの中にも一筋の光明が

「同情するなら金をくれ!」というドラマのフレーズが大流行した平成6年(1994年)。

『おしん』のように歯を食いしばって耐え忍ぶのが昭和スタイルなら、ストレートなもの言いで自分の主張をちゃんと通すのが平成スタイル。

そんな主人公(安達祐実ちゃん)の姿が、新しい時代の訪れを感じさせました。

昭和の余韻もなくなり、バブルの魔法もすっかり解けて、やっべ、そろそろ本気出さねば、となっていった頃ですね。

というわけで今回の【平成メモリアル】は、平成6年編。

平成もついにラストイヤーへと突入! 25年前の思い出にズームイン!
 

▲昨年話題になった関西国際空港がオープンしたのも、この年 ▲昨年話題になった関西国際空港がオープンしたのも、この年

1年に首相が2度も変わったり、松本サリン事件が起きたりと、社会全体に不穏な空気が漂っていた1994年。

価格破壊、デフレなんて単語も飛び交うようになり、いよいよ本格的な不況時代の始まりとなりました。

一方でイチロー選手が、史上初のシーズン210本安打を記録。

プロ野球が大いに盛り上がったり、セガサターンやプレイステーションが発売されたり、21年振りに出生数が大幅に増えたり、と明るい話題も。

日本人って宅麻伸、いやたくましい!

▲モータースポーツ界ではセナがレース中の事故で亡くなるという大ニュースが ▲モータースポーツ界ではセナがレース中の事故で亡くなるという大ニュースが

アウトドア・ブームとともにSUVが大人気に

その頃の私はといえば、キャンパスライフを大満喫。

友達に初めての彼女ができて、初デートで行った映画が「平成狸合戦ぽんぽこ」だったことは忘れもしません。

合コンで出会ったチアリーダーの女の子を愛車で寮まで送っていったら、体育会系のおっかない人たちが待ち構えててアセッたことも。

さてさて、そんな1994年の車事情といえば、空前のSUVブーム到来。

トヨタからはRAV4、日産からミストラルやラシーン、三菱からデリカスペースギアやパジェロミニが登場し、ブームをけん引しました。

ミニバンやステーションワゴンも堅調。

そうした車でオートキャンプに出かけるっていうのが、当時最もトレンディな休日の過ごし方でしたね。

▲ATだけどマニュアル的に変速できるINVECS-Ⅱを初採用した、三菱FTOも1994年のデビュー ▲ATだけどマニュアル的に変速できるINVECS-Ⅱを初採用した、三菱FTOも1994年のデビュー

ホンダ流を貫いて大成功

▲コラムシフト採用でウォークスルーを実現したパッケージも好評だった初代オデッセイ ▲コラムシフト採用でウォークスルーを実現したパッケージも好評だった初代オデッセイ

それでは平成6年に登場した車の私的ベスト3を発表します。

第3位は、ホンダから満を持して発売されたミニバンのオデッセイ。

世間でRV(レクリエーショナル・ビークルの略。SUVやミニバンのことね)がいくら流行っても、「うちは背の高い車なんか作らないよ!」とかたくなだったホンダが、ついに時代に要請されて発売したところ、これが大ヒット。

ライバルのようなスライドドアを採用せず、乗用車のようなヒンジドアを採用、車高も低めとしたのはホンダ最後の抵抗というところでしたが、それが個性となって高評価されました。

1994年の日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞であります。

当時、ホンダの生産工場にはこれほど大きな車を流せるラインが存在しなかったため、建物の一部を削って通路を確保した……という逸話もあります。


キムタク効果も確かにありました

▲初代RAV4の、四駆なのに丸っこいフォルムは当時斬新だった ▲初代RAV4の、四駆なのに丸っこいフォルムは当時斬新だった

続いて第2位。今ではすっかり人気カテゴリーのひとつになった、コンパクトSUV。

でも歴史は決して古くなく、この1台から始まりました。

トヨタのRAV4です。

“コンパクトな四駆”という意味では、スズキ エスクードやダイハツ ロッキー、その前のタフト(と兄弟車のトヨタ ブリザード)なんかの方が早いのですが、現代主流となっているモノコック構造&四輪独立サスペンションといった構造をいち早く採用した、ナウいSUVの元祖がRAV4でした。

革新的な構造に加え、キムタクのCM効果もあって大ヒット。

それまで四駆が眼中になかった層を取り込むことに成功しました。

一方でギア式のフルタイム4WDシステムを搭載するなど、意外に本格派なところもあってマニアも出現。

同時期に開発されたトヨタの自衛隊向け車両・高機動車との共通点が指摘されたりしてましたが、実際の開発チームは全然別です。

パジェロがまんまミニバンに変身

▲ワンボックスのエンジンといえば前席下に搭載するのが常識だった時代、いち早くフロントエンジンを採用したデリカ スペースギア ▲ワンボックスのエンジンといえば前席下に搭載するのが常識だった時代、いち早くフロントエンジンを採用したデリカ スペースギア

最後にご紹介する第1位は、最近、ビッグマイナーで注目された三菱 デリカD:5のお父さん、デリカ スペースギア。

いわゆるワンボックスなんですが、それ以前の商用車的な雰囲気のやつとは全然違ってた。

エスティマにも負けないラウンドフォルムで、エンジンは乗用車やSUVと同じくフロントに搭載(当時のワンボックスは座席下にエンジンを搭載するキャブオーバー型がほとんどだった)。

おまけに四駆性能はベースとなった2代目パジェロ譲りで、オフロードもちゃんと走れる。

それで3列シートとなれば、売れないはずないですよね。

その名前が後世に受け継がれることなく1代で終わってしまいましたが、D:5にバトンタッチする2007年まで、なんと13年間もの期間、製造されることとなりました。
 


担当編集さんには「設計とかのことじゃなくて時代背景メインで」と言われているのですが、今回は私の好きな分野である四駆が多かったので、つい……。

まあメカニズムに見るべきところがある車なので、勘弁してください!

この頃になると、今でも普通に乗りたい、今だからこそ乗りたくなる凝ったメカニズムの車が多いね。

ということで、今年も【平成メモリアル】企画をよろしくお願いしまーす!
 

text/田端邦彦
photo/トヨタ、ホンダ、三菱、WILLIAMS、photo AC