▲逃げ場のない車の中。一度ケンカが始まると、いや~な空気が延々と続くことにもなりかねない…… ▲逃げ場のない車の中。一度ケンカが始まると、いや~な空気が延々と続くことにもなりかねない……

車の中では、ちょっとしたことが“起爆剤”になりがち

いよいよゴールデンウイーク到来。行楽や帰省で車を使う機会も増えるだろう。しかし、憂うつなのはあの長い渋滞。そして、渋滞のイライラが原因で、同乗者とケンカになることも……。

あくまで個人的な意見だが、渋滞にはまると街中で行列に並んでいるときよりも、なぜかケンカになりやすい気がする。しかも、なかなか仲直りができない。そこにはいったい、どんな心理が隠されているのか。心理学者の内藤誼人先生に話を聞いた。

「車の中でケンカが多くなるのは、八つ当たりの心理です。自分では気づいていないかもしれませんが、運転中は絶えず緊張しており、ちょっとしたことでもイライラの原因になります。怒りの沸点が低くなっているので、普段なら怒らないことでもいら立ちがちです。渋滞は、まさに“起爆剤”になっているんです」

さらに、車内で発生したケンカでたちが悪いのは「怒りのエスカレーション」が発生しやすいのだとか。ん、「怒りのエスカレーション」ってなんだ?

「自分が渋滞などでムッとした感情を抱くと、相手がその感情に対してムッとする。その態度を感じて、また自分がムッとする。このように怒りのレベルが徐々に高まっていくことを言います。車内は逃げ場がないので、怒りのエスカレーションが発生しやすいんです」

そうならないために参考になるのが、アイスホッケーのルール「タイムアウト」だそう。

「反則を働いたプレーヤーが一定時間リンクの外に出されるペナルティなのですが、心理学では、しばらく時間を置くことをタイムアウトと言います。頭を冷やす時間ですね」

ケンカのいや~な空気を一変させるには?

もし車内でケンカになったら、密室空間なら逃れる意味でも、パーキングエリアなどで休憩をして頭を冷やす時間をつくるのが効果的というわけだ。

▲トイレ休憩でも食事でもいいので、いったん車から出て、仕切り直すことで空気が変わることも ▲トイレ休憩でも食事でもいいので、いったん車から出て、仕切り直すことで空気が変わることも

しかし、本来はそもそもケンカが発生しなければいいわけで……。

「それなら、糖分を摂取する、好きなBGMを聴く、ラベンダーやシナモンのアロマを嗅ぐなど、リラックス効果がある行動を取ることで、怒りの感情を事前に抑えるのがオススメですね」

ゴールデンウイークの渋滞でイライラする気持ちはわかるが、もしケンカになってしまったら、楽しいお休みも台無し。「タイムアウト」と「リラックス効果」をうまく使って、ケンカのないドライブを心がけよう。

【取材協力(敬称略)】
内藤誼人(ないとう・よしひと):心理学者、アンギルド代表、立正大学客員教授。心理学を応用した実践的なノウハウに着目した著書多数。近著に『同性にモテる技術』 (中公新書ラクレ)、『人はなぜ、「そっち」を選んでしまうのか』(青春出版社)など

text/コージー林田