フェルディナント・ヤマグチのオートモビルカウンシル2022会場探訪
2022/05/17
みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。
時事放談では、新たなスタイルでクラシックカーの魅力を紹介しているオートモビルカウンシルの実行委員会代表・関雅文さんに、興味深いイベントをスタートさせたきっかけや、イベントの意義などを伺いました。
- 【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】オートモビルカウンシル オーガナイザーに聞く、イベントが目指す姿とは?(前編)
- 【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】オートモビルカウンシル オーガナイザーに聞く、イベントが目指す姿とは?(後編)
自分で乗るクルマは比較的新しいモデルを選びがちですが、関さんの話を聞いてビンテージモデルの奥深い世界に対しても、ムクムクと興味が湧いてまいりました。
そこで今回は私がオートモビルカウンシルの会場をユルッと探訪。気になったクルマを3台紹介いたします。
1960年代の珍しいメルセデス・ベンツのバス。これはかわいい!
まず目にとまったのは、会場のほぼ中央に展示されていたメルセデス・ベンツのバスです。これは1963年式の319バスというモデル。一般的にメルセデス・ベンツは高級ブランドというイメージだと思いますが、実はバン、バス、大型トラックなども製造するフルラインナップメーカーです。
しかし、こんなに昔からマイクロバスを製造していたのは知りませんでした。
今回はビンテージメルセデスのスペシャルショップとして有名なシルバースターさんのご厚意で、運転席に座らせていただくことができました。
シルバースター・岸本さん(以下、岸本) 本来は2ナンバー登録(普通乗合車)なのですが、座席を外したうえで構造変更して3ナンバー登録できるようにしていますので、普通免許で大丈夫です。
岸本 大丈夫ですよ。
岸本 このクルマは国内にあったものです。うちのお客さまが乗っていたのですが、その方が小学生の時に、このバスを社用車として使っていた会社が近所にあったそうです。それを見て「大人になったら絶対にこのバスを手に入れよう」と思っていたのだとか。
岸本 その方が40代の時にたまたま中古車屋さんに並んでいるのを見つけたそうです。その時はまだ2ナンバー登録の車だったのでわざわざ大型免許を取得したとのことでした。
岸本 その方は5年ほど乗られたのですが、やはり維持が大変でずっと倉庫にしまわれていたそうです。
岸本 いえ、これはオリジナルのエンジンが載っています。その方は別のクルマで弊社とお付き合いがあったので、「これ、直せたりする?」と写真を見せてもらって。その時、私も初めて見たので、がぜん興味が湧いて「すぐに取りに行きます」となりました。
岸本 保管していた倉庫が乾燥していたので、いい状態で残っていたのが幸運でした。
岸本 オールドメルセデスを専門でやっているので部品などはすべて把握できました。半年くらいかけて整備したのが10年以上前の話ですね。最近、前オーナーがご高齢になられて手放すということになりました。私もこのクルマには思い入れがあるので、でしたら私が買い戻しますとお伝えして、今回展示しています。
岸本 1650万円になります。
岸本 おそらく日本に輸入された後にインフラとして使われていたものだと思います。乗り合いバスですね。役割を終えたら廃車にされていたので、ほとんど現存していないのでしょう。この個体も運行管理上だと思うのですが、日本製のメーターに交換されています。
進駐軍の将校が乗っていたというジャガーを発見!
先ほどのメルセデス・ベンツもおもしろい話がありましたが、会場にすごい逸話をもったクルマが展示されていると耳にしました。なんでも歴代オーナーにすごい方が名を連ねているとか。
オートダイレクト・角田さん(以下、角田) はじめまして。これは推測の話になってしまうのですが、進駐軍の将校が日本に持ってきた個体といわれています。
角田 ありません。将校はイギリスから日本に直で持ってきたと思われます。
角田 ジャガーなのに左ハンドルになっているのは、アメリカ軍向けのクルマだったからではないか。そう思われます。
角田 さらにそれが巡って、この雑誌に紹介されているように10年後には慶應大学の学生が乗られていたということがわかっています。
角田 これはミッレミリアに出ることを前提にフルレストアしています。レストア時はオリジナルの状態を忠実に守りながらやることも多いですが、これは現代流にアップデートすることをコンセプトにしました。
角田 例えば、フロントまわり。もともとはバンパーモールがあったのですがあえて外してレーシーな雰囲気にしました。
角田 フロントのウインドウシールドも普通はボディにリベット留めされていますが、これは台座を溶接してそこに取り付けています。シートも新しいものに張り替えています。シートの横にあるポンプはランバーサポートになります。
角田 快適に乗れますよ。ボディも傷んだ部分は作り直しています。幌はレストアを機に全部外してしまいました。
角田 一応、助手席にはトノカバーを付けられるようにしています。
20年以上前に乗っていたモデルと再開。中古車相場の上昇に驚く!
これまでの2台はかなりビンテージなモデルで、価格も1000万円を大きく超えるものでした。最後はもう少し安いモデルを見てみることに。
普通の人も手に入れられるモデルが展示されているのもオートモビルカウンシルの醍醐味ですから。
スピニングガレージ・田中さん(以下、田中) こんにちは。フェルさんがクラシックラインに乗られていたのはいつごろなんですか?
田中 それは一生持っていなければいけなかったやつですね(笑)。
田中 これは13万kmくらい走っています。
田中 このクルマはオートモビルカウンシルに出展するために全塗装、幌の張替え、シートの張り替え、ホイールリフレッシュ、その他の整備を行っています。
田中 気合いを入れて手を入れたので、ぜひどなたか乗ってください(笑)。
田中 そうですね。かなりお問い合わせをいただく車種になります。やっぱり存在感がありますよね。
田中 もちろんです。座ってみてください。
田中 はい。ずっとゴルフIIでやっています。
田中 ゴルフIIにはカブリオレの設定がありませんでした。ゴルフIIの時代もカブリオレはゴルフIのものが引き続き販売されていたんです。なので私たちはゴルフII専門店ですが、クラシックラインも扱っています。
田中 24年になりました。
田中 いえ、全然違う仕事をしていました。ゴルフIIが好きでお店を始めて、24年たってしまった感じですね。整備士の資格もお店を始めてから取りに行ったんです。
田中 そうですね。状況は変わりました。でも今のところクルマの数はそこそこあるのでやっていけています。あとはお客さまの中でクルマが循環しているというのもあります。うちは1000人以上お客さまがいるので。
田中 いらっしゃいますよ。僕たちはゴルフIIの販売もしますが、ゴルフII専門の整備工場でもあると思っています。ゴルフIIが好きで、ゴルフIIに乗ってくれる人がいれば、僕らもゴルフIIだけでやっていけると思って頑張っています。
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。