TGR GR86/BRZカップ▲トヨタとスバルが共同開発した国産スポーツカーの86/BRZ。過度なパワーや速さではなく、バランスよく設計することで走る楽しさを求めた車だ。そのワンメイクレース「TGR GR86/BRZカップ」は、手軽なコストで運転技量を磨く最適な場と言えるだろう

サーキット仕様車は積載車いらずで気軽さが魅力

ワンメイクレースとは、参加者全員が同一のマシンを使うレース形式のこと。コストが抑えられ、マシンによる差がつきにくく、運転技量を磨くのに適していることから、レース入門カテゴリーとして国内でも長年親しまれてきた。国産車による代表的なワンメイクレースといえば、2000年に始まったトヨタ ヴィッツカップやマツダ ロードスターによるパーティレースなどがある。

ヴィッツカップは、2021年からヴィッツがモデルチェンジを機にヤリスへと車名変更したことをうけ、ヤリスカップへとタイトル名を変更しているが、レース入門カテゴリーという位置づけは変わらない。ちなみに、より身近な軽自動車によるワンメイクレースとしては、ホンダ N-ONE による「N-ONE OWNER’S CUP」が2014年から開催されている。
 

N-ONE OWNER’S CUP▲N-ONE OWNER’S CUPは、現在全国7ヵ所のサーキットで行われている。参戦車両の最大出力は64psとおとなしいものの、車両重量840kgの軽さが軽快な走りを見せる

そうした中で、手頃な国産FRスポーツカーであるトヨタ 86と初代スバル BRZが誕生したことを受け、2013年に始まったワンメイクレースが「TGR 86/BRZレース」だ。2021年まで9年間にわたって開催され、今シーズンよりベースマシンが2代目へとモデルチェンジしたことをうけて、新型GR86と新型スバルBRZによる「TGR GR86/BRZカップ」へと名称変更されている。

参加車両は、「GR86 Cup Car Basic」および「SUBARU BRZ Cup Car Basic」で、全国のトヨタ販売店およびスバル販売店で購入できる。これらは、エアコンなど必要最低限の機能は備えているものの、シートやアルミホイールといった交換を前提としたパーツは、簡素版を装備しコストを抑え、一方でエンジンオイルクーラーやロールケージなどレースに必要な専用パーツを備えた仕様となる。

新車の車両価格は、GR86が333万4000円、BRZが333万8500円。これらのワンメイクマシンの特長は、まず価格が手頃であること、そしてナンバー付きの車両であること。積載車などを用意する必要はなく、自宅から自走でサーキットへ行ける気軽さという魅力だ。

「TGR GR86/BRZカップ」は“プロフェッショナルシリーズ”と“クラブマンシリーズ”の2シリーズ制を採用。“プロフェッショナルシリーズ”には、SUPER GTなどに参戦する現役のトップドライバーも多数参加。一方で“クラブマンシリーズ”は、アマチュアドライバーによって競われる。性能差の少ないワンメイクレースだからこそ、プロドライバーとの差がわかりやすく、ドライビングの基礎を学ぶにはうってつけの場と言える。

2022年のレースカレンダーは、7月の富士スピードウェイを皮切りに、8月のスポーツランドSUGO、9月の十勝スピードウェイ、10月の鈴鹿サーキット、11月の岡山国際サーキットと、全国5大会が予定されている。
 

GR86 Cup Car Basic▲トヨタ GR86のサーキット仕様であるGR86 Cup Car Basic。オーディオやエアコン、盗難防止装置などが装備されているため、レース時以外の日常使いもこなせる

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トヨタ GR86 × 全国
BRZ Cup Car Basic▲2代目スバル BRZのサーキット仕様であるBRZ Cup Car Basic。スペックはGR86/BRZともに、2.4L水平対向4気筒エンジと6速MTを搭載する。駆動方式はFRで、最大出力は235psとなっている

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スバル BRZ(2代目) × 全国
GR86 Cup Car Basic▲サーキット仕様車に標準装備される6点式+サイドバーのロールケージ。JAF国内競技車両規則の「スピードB」と「スピードSA」に適合している
GR86 Cup Car Basic▲厳しいサーキット走行に耐えるための専用エンジンオイルクーラーも標準装備する

いきなり最新型の新車を購入するのはちょっと…、という人向けに競技用車両の個人間売買サイト「TGR TRADE」が開設されているので参考にしてみるのもいいだろう。全国の各サーキットでは、先代の86/BRZレース車両(ZN6/ZC6)など旧型車で参加できるレースも準備されているので、中古車を購入して地元のコースで腕を磨くという手もある。

もちろん競技用車両でなくても、普通の86/BRZを購入して、走行会などに参加することから始めてみるのもいい。いずれにせよいまの時代、運転がうまくなりたい、アクセルを思い切り踏みたいという人は、ぜひサーキットに行くべきだろう。
 

文/藤野太一、写真/トヨタ自動車、本田技研工業、スバル

先代モデルの中古車事情をチェック!

トヨタ 86▲2012年に登場したトヨタ 86。2016年にマイナーチェンジが行われ、エクステリアデザインなどに変更が加えられている。中古車流通量は1600台弱と豊富だ

トヨタ 86は、2Lの自然吸気エンジンを搭載し最大出力200psを発揮。新型GR86同様、過給機による過度なパワーを求めず、軽量かつ低重心なバランスを重視したモデルだ。

中古相場は、前期型で走行距離にこだわらなければ車両本体価格100万円前後から、2016年以降の後期型なら150万円前後から狙うことができる。MT車率は55%。AT車でも十分楽しめるがMT車の方が人気、相場とも高めの傾向にある。

走行距離5万km未満のMT車という条件でも、予算総額200万円前後あれば比較的選ぶことができるため、腕を磨くマシンとしては最注目モデルのひとつと言えるだろう。
 

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トヨタ 86 × 全国
初代スバル BRZ▲回頭性能の優れるFRパッケージに、スバルが誇る水平対向エンジンを搭載。超低重心化による優れたコーナーリング性能こそが最大の武器だ。中古車流通量は480台前後

初代スバル BRZは86同様、水平対向2Lの自然吸気エンジンを搭載する。見た目はそっくりだが86とは異なるフィーリングが与えられている。流通台数は86の3分の1程度だ。

MT車比率は68%と86よりMT車が多い傾向にある。中古相場は、車両本体価格110万円前後から揃っており、MT車にこだわるなら予算総額は150万円くらいからが下限となる。また、走行距離5万kmのMT車という条件でも予算総額200万円ほどで購入することができる。

86は流通している台数がBRZに比べてかなり多い。他人とかぶることのない少数派を好む人であれば、BRZで決まりだろう。
 

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スバル BRZ(初代) × 全国
文/編集部、写真/トヨタ自動車、スバル