日産▲「ニッサン インテリジェント モビリティ」の将来を示すコンセプトカーを公開する日産ブース

第46回東京モーターショー2019において、日産はEVコンセププトカーを世界初公開。しかも、2台のコンセプトカーのうち1台は、当日のプレスブリーフィングで初お披露目するというビッグサプライズも用意していた。

展示車は市販車も合わせ、計14モデル。

ニッサン アリア コンセプト

ニッサン アリア コンセプト▲彗星ブルーと名付けられたブルーが落ち着きと上質さを表現
ニッサン アリア コンセプト▲ボディの幅いっぱいに広がるテールランプで力強さを表現

プレスブリーフィングでサプライズ公開されたのが、電気自動車(EV)のクロスオーバーコンセプトカー「ニッサン アリア コンセプト」だ。

日産は2017年の東京モーターショーで公開したコンセプトモデル、そして後述するもう1台のコンセプトモデルには日産が開発する先進技術「ニッサン インテリジェント モビリティ」の頭文字を取った「IM」という文字を付けている。

しかし、今回公開されたニッサン アリア コンセプトには、具体的な車名を連想させるネーミングに。

また、外板の形状も市販車に近い形で成形されていることから、「ニッサン アリア コンセプト」はかなり近い将来に正式発表されるモデルだと予想される。

新型スカイラインに初搭載されたプロパイロット2.0が搭載されることで、高速道路の本線に合流してナビ連動ルート走行を開始すると、追い越しなどを含めた走行支援や同一車線内でのハンズオフドライブが可能。

そして、新世代のヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)とコネクテッドカー技術を採用したことで、これまでにないドライブ体験が可能になるという。

例えば、スマホで設定した目的地と車載ナビが連動し、乗車前はスマホ、乗車中は車載ナビ、降車後は再びスマホによって最終目的地までシームレスに移動できるように。

ドライバーが乗りこむと、バーチャル パーソナル アシスタント(VPA)がナビゲーションを開始。ドライバーが情報検索しなくてもVPAが自動的に必要な情報を取得。さらに、友人のスマホとビデオチャット機能をリンクして、友人がいる正確な位置を車載モニターに表示することも可能に。

目的地に到着したら、車の外からスマホや専用デバイスを使って外から自動駐車させられる、プロパイロット リモートパーキングも搭載される。

パワートレーンは、前後に高出力電動モーターを配置したツインモーター四輪制御システムを採用。高次元の発進、加速性能が実現できたという。

また、モータートルクやステアリング、ブレーキなどの統合制御でぬかるみや滑りやすい路面でも優れたトラクション性能を発揮する。この制御は、GT-RのアテーサE-TSやエクストレイルのインテリジェント4×4の開発で得たノウハウを使用している。

エクステリアデザインは、「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」をコンセプトに、スリーク、シームレス、シックというキーワードで、ダイナミックでありながらEVらしいシャープな雰囲気を表現。

日産車を象徴するVモーショングリルに相当するシグネチャーが発光すると、中に組み込まれた幾何学模様がかすかに浮かび上がる。

低いシルエットでブラックアウトされたルーフラインに沿って、カッパーという新しいカラーが配置された。この色にはホイールにも配置され、ニッサン アリア コンセプトのプレミアム性を高めている。

この色は夜明けとともに昇る太陽をイメージしたもの。新時代の夜明けとともに、日本の伝統的な工芸品に用いられる銅をイメージしたという。

インテリアは、日常生活の中で技術が精巧な日本の職人技と自然に融合した「シームレス」さを表現。

バッテリーを最適配置したことで実現した、フラットフロアの室内は広く開放的に。

運転席に座ると目の前には物理的なスイッチがスタートボタン、12.3インチディスプレイ操作用ノブ、エアコン操作ボタンしかない。そして、システムを起動させるとインパネにハプティック(触覚)操作ボタンが表示されるようになっている。

シートは超極薄フレームを採用したことで、広々とした室内空間を生み出すことに貢献。もちろん、乗員が快適に移動できるサポート性を確保している。シートにはパーコレーションレザー、インパネやドアハンドルにはブラックの合皮を使用。シートの革の下からは、カッパーファブリックがのぞくようになっている。

インテリア全体にコントラストをもたせることで、室内全体がエレガントな印象になっているのが特徴だ。

このモデルが、日産の新たな時代の幕開けになるのは間違いない。

ニッサン IMk

Photo:小林 司
ニッサン IMk▲日産のもう1台のコンセプトカーは軽EV。プレミアム性を高め、従来の軽とは一線を画す存在であることを示唆している

日産が公開したもう1台のコンセプトカーが、「ニッサン IMk」だ。

2017年に発表した中期計画「Nissan M.O.V.E. to 2022」の一環で、2018年3月に「2022年度までにグローバルで新たなEVを8車種開発し、日本では軽自動車のEVを投入する」ことを公表している。

ニッサン IMkが、そのモデルへとつながるコンセプトカーなのは間違いないだろう。

特徴はサイズこそ日本の軽自動車枠に収まるが、プレミアム性が高められた小型EVに仕上げられていることだ。

運転支援技術は新型スカイライン、そしてニッサン アリア コンセプトに搭載されるプロパイロット2.0がさらに進化し、主要幹線道路での使用も可能になる。

他にもプロパイロット リモートパーキングや、無人状態で車が自分で空いている駐車スペースを探し、スマホで呼べば車がドライバーの元まで自分で移動してくるドライバーレスバレーパーキング機能が搭載される。

さらに、スマホを使ってドライバーを認識し、家族と共有する場合でも車に乗るとシートポジションや好みの香りをドライバーのセッティングに自動変更する。

そして、乗る前からエアコンやステアリングヒーター、シートヒーターが作動し、車内が快適な状態でドライバーを迎えるという。

また、運転中は友人などがアバターとなって車内に出現。離れた場所にいる友人との会話を楽しみながらドライブすることも可能に。

パワートレーンがモーターになることで、これまでの軽自動車では体感できなかった力強くて上質な走り、高い静粛性も味わえるようになる。

エクステリアは、シンプルかつミニマルなデザインに。ボディサイドはドアミラーやドアハンドルがなく、シームレスに面がリアへと流れている。

ボディカラーは日本古来より使われ、日本文化にゆかりのある金属「アカガネ(銅)」を採用。バンパーやオイール、テールランプなどに水引模様からヒントを得たスリットパターンが施された。フロントグリルやリアコンビランプには、木組みを模したような格子パターンが施されている。

軽の域を超えた上質感を最も感じるのが、インテリアだ。

インパネ上部にはプリズムディスプレイが設置され、まるで空中に浮かびあがるように様々な情報が映し出される。プリズムディスプレイには日本家屋の縁側や障子のように、手前と奥を視覚的に連続させる役割もあるという。

室内は運転するための空間ではなく、快適な時間を過ごすための部屋であることを意識。足元に暗い色、そしてインテリア全体に淡い色を配色することで、軽自動車という限られたスペースの中に広がりをもたせている。

インテリアの下側には、縁側を意識。欄干をイメージさせる木組みが安らぎ感を演出し、ドアからインパネにかけて乗員を包み込むように、ボディカラーと同じ「アカガネ」のアクセントが配置されている。

セレナ e-POWER

セレナ e-POWER▲先進安全性能が大きく向上したセレナe-POWER

2019年8月にマイナーチェンジされた、セレナe-POWERを展示。

今回のマイナーチェンジで、フロントグリルを一新して押し出しの強さが強調された。

そして、車両周囲360°の安全をサポートする全方位運転支援システムが全グレード標準装備となった。

スカイライン

スカイライン▲ビッグマイナーチェンジを受けたスカイライン

2019年7月にビッグマイナーチェンジが行われた、スカイライン。日産のエンブレムやスカイライン伝統の丸型テールランプが復活したことが話題になっている。

スカイラインは初代以来、常に時代の最先端の技術を採用して進化し続けてきたモデル。新型にも高速道路の複数車線をナビと連動して設定したルートを走行し、同一車線内でハンズオフドライブも可能にした先進運転支援システムプロパイロット2.0を搭載した。

リーフe+

日産 リーフe+▲60kWhの大容量バッテリーを搭載するリーフe+

2010年に初代が発売されてから、世界で累計43万台以上販売されている電気自動車のリーフ。e+は2019年1月に追加されたモデルで、バッテリー容量を従来の40kWhから62kWhに拡大。航続距離が458km(WLTCモード)まで延びている。

リーフは、蓄電池としてバッテリーに蓄えた電気を専用機器を介して様々な電気製品に使うことができるため、災害時の非常用電源、太陽光の電力固定価格買い取り制度の終了(After FIT)を迎えた後のエネルギー自家消費にも対応できる。

リーフ NISMO RC

日産 リーフ NISMO RC▲NISMOが手がけるEVレーシングカー

日産のモータースポーツ部門であるNISMOがコンピュータチューニング、空力性能の向上、足回りのセッティングなどを行い、EVならでスポーツ性能に磨きをかけたリーフのスペシャルモデル。

空力デザインにはスーパーGT仕様のGT-Rで培ったノウハウを投入。そこに専用車速感応式電動パワーステアリング、専用サスペンション、専用インテリジェントトレースコントロール、225/45R18 95Yタイヤ&専用18インチアルミホイール、専用電動型制御ブレーキなどの専用装備を多数搭載。

パワーはリーフと同等の出力、トルクながら、加速度を強めにセッティングして、俊敏で力強い走りが可能になっている。

デイズ ハイウェイスター

日産 デイズ▲高級感が高められたエクステリアが特徴の、デイズ ハイウェイスター

2019年3月に発表された軽トールワゴンのデイズ。

ハイウェイスターは、LEDライトや大型のメッキグリルで上質さと高級感が高められたモデルだ。

高速道路の同一車線内で渋滞から巡航走行まで車線中央をキープしながら、先行車との車間距離をキープして追従走行する運転支援技術“プロパイロット”搭載グレードも設定される。

ノート e-POWER NISMO

日産 ノート▲NISMOの専用チューンを施され、胸のすくような新感覚の加速性能を手にした

エンジンから発電した電気を使って、モーターの力のみで走行するe-POWERシステム(シリーズハイブリッド)を搭載。

発進時から一気に最大トルクを発生するモーターならではの瞬発力により、ガソリンモデルとは全く異なる走りを味わうことができる。

電力に余裕があるときは発電用エンジンが休止するので、走行中もいたって静か。FFに加え、後輪もモーターで駆動するe-POWER 4WD搭載車も用意される。

GT-R(※一般公開日より展示予定)

究極のドライビングプレジャーを追求した、日産を象徴するスーパースポーツであるGT-R。

東京モーターショー2019には、2020年モデルの中からGT-Rの50周年を記念した特別仕様車「GT-R 50thアニバーサリー」と「GT-R NISMO」を展示。

GT-R 50thアニバーサリーは、GT-Rプレミアムエディションをベースに、往年の日産ワークスカラーをイメージした特別なツートーンカラーや専用ステッカーなどの専用アイテムを内外装に装備した、2020年3月までの期間限定車だ。

GT-R NISMOは、2018年のGT3レーシングカーから使用されている新型ターボチャージャーを採用。

そして、新開発の超高性能カーボンセラミックブレーキにより、世界トップクラスの制動性能、サーキットにおける高Gでの効きのよさ、一般道など低Gでのコントロール性を両立した。

車両全体で約30kgの軽量化を実現して、コーナリング性能も大きく向上している。

日産のお姉さん
文/高橋 満(BRIDGE MAN)、写真/尾形和美
高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、 音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、 心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。 愛車はフィアット 500C by DIESEL