築50年ほどの民家を海の秘密基地へとリフォーム【EDGE HOUSE】
2022/07/28
ガレージは愛車を止めるためだけの場所でなく、1人でこもれる最高の秘密基地。そう考える男性も多いだろう。築50年以上の民家のリフォームで、そんな秘密基地作りを叶えた例を紹介。海の近くにあるこの秘密基地は、自宅からは離れた場所にあるが、むしろそこまでのドライブが気分転換になり、平日の仕事の励みになっている。
築50年ほどの民家を海の秘密基地へとリフォーム
テラスから見下ろすと、瑞々しい芝生の上を愛犬が縦横無尽に走り回っている。目の前は煌めく太平洋。海風が心地よい。ここは7年前に起業して忙しい毎日を過ごす施主が、仕事の疲れを癒すために求めた秘密基地だ。
芝生部分はもともと施主の父がかなり昔に手に入れていた更地。前面道路が私道のため、今の法律では建物を建てることができない。そこで隣の土地の、廃屋になっていた民家に注目した。
ここも前面道路が私道のため、建て替えのできない、いわゆる再建築不可物件だが、リフォームはできる。隣の民家を購入して、敷地を広げリフォームすれば、週末を愛犬と過ごす秘密基地にできそうだ。そう考えた施主が頼ったのが、ガレージ雑誌で探した建築家、松永基さんだった。
「残念ながら自宅はインナーガレージではないのですが、スーパーカー世代ですから(笑)。いつかはガレージハウスを建てたいと思って、よく雑誌を見ていたんです」と施主。
隣にあった民家は、もともと1階は車庫と倉庫のみだった。設計を依頼された松永さんは車庫をそのままガレージとして整備し、倉庫部分を秘密基地のような居住スペースにした。「コンクリートの床はそのまま活用しました。施主はメルセデス・ベンツ Vクラスもお持ちですので、それが入るように照明は吊り下げではなく、レールに取り付けるタイプにして天井高を確保しました」。
壁には、用途に応じて棚を取り付けたりしやすいよう、不燃性ベニアパネルが張られた。その活用方法は写真を見てもらったほうがわかりやすいが、おかげで秘密基地感が強まった。
2階へ上がる階段はもとから建物内になく、外にあった。松永さんはその外階段を傾斜の緩やかな木製階段に替えて、2階の玄関に当たる部分をウッドデッキとした。そこから中に入ると床には無垢の杉板が敷かれ、海側の壁には大きな窓が備えられている。
この窓は一見ガラスをはめただけのように見えるが、実は引き戸。絶景をサッシの枠で損なわず、しかもウッドデッキへすぐ出られるようにしたのだ。屋上にもウッドデッキのテラスが設けられた。
「僕の中ではビーチハウスがコンセプト。施主はサーフィンをしませんが、サーファーだったら飛びつきたくなるようなガレージハウスを作りました」。施主は「特に屋上テラスからの眺めは筆舌に尽くしがたいほどです。ガレージの秘密基地感も好きだけれど、ここで飲むビールも最高です」と語る。
こうして完成した海の秘密基地+ビーチハウス。今では週末だけでなく、経営者として思案したいときにも訪れるそうだ。「ここに来るまでのアクアラインや房総スカイラインを走ること自体も最高の気分転換になります」。
ただ一つだけ想定外のことが。秘密基地というだけあり、本来は施主が個人で楽しむ場所にするはずだったが、奥さまも気に入り、夫婦と愛犬でよく訪れるようになったのだとか。「妻は洗濯機まで置きましたから(笑)。私以上に気に入っているようです」。
■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:350㎡
■建築面積:49.68㎡
■延床面積:138.42㎡
■設計・監理:エムズワークス
■TEL:045-680-5339
※カーセンサーEDGE 2022年9月号(2022年7月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています