愛情を注ぎ込んだ趣味も実用も叶える理想の1台 GMC ラリーSTX
2024/04/01
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんな車と、どんな時間を?
4年かけて仕上げた2台目のラリーSTX
「10代の頃、先輩に“欲しいものがなければ作っちゃえばいいんだよ”って教えられてから、軽いノリでなんでも作ってきた」というWAKAさん。公私にわたるパートナーであるANEGOさんとデザイナーズユニット「CielBleu.」として活動し、アウトドアファニチャー製作からカーカスタム、またイベントプロデュースも手がけ、モノもコトも生み出すクリエイターだ。
そんな彼らの愛車は、丁寧に仕上げられた、バンライフ仕様の1979年型GMCラリーSTXだ。この車の前も1992年型ラリーSTXをカスタムして乗っていたが、「でもやっぱり古いの欲しいよね」と探していたところ、希望どおりの物件を見つけた。決め手はこの年式ならではのビンテージ感のあるエンブレムだった。
「それこそカーセンサーだったけど、僕が探してたまんまが出てた。これくらいの年式で、フロントシートがぐるっと回転するSTXっていう最上級グレード。集中ドアロックも付いてるんだよ。でも全然違う名前で出てたんだよね」とWAKAさんがいうと、「そうそう、バンデューラって出てたね」とANEGOさんがおもしろがるように答える。2人の会話はリズミカルで、何かが起こりそうなわくわくするグルーブがある。
見つけるとすぐにショップに電話をかけ、物件の程度も確認せずに購入を決定、愛知まで買いに走った。行きの足はそのとき乗っていた92年型のラリーSTX。愛知で79年型ラリーSTXを買い、2台のラリーSTXで滋賀に向かった。
「滋賀のNANGAって寝袋屋さんが、僕らが乗ってた92年型を欲しいって言ってくれたんで納車して」、新たに手に入れた古いラリーSTXで帰ってきた。
その古くて新しいラリーSTXは、購入時はANEGOさんが「ドン引きした」ほどボロボロで、まともに走ることすらできなかったそうだ。「ブレーキ踏んだら左にヨレるし、高速乗ったら雨が降ってきて、ワイパー動かしたら止まっちゃうし。ボディは凹みまくってて、内装だけめっちゃきれいだった……けど全部外しちゃったけど」とWAKAさんがあきれたように思い返し、「絶望しながら帰ってきたよね。前の車も大変な思いして作ったから、また最初からかと……」とANEGOさんが苦笑いして顔を見合わせる。
「でもさ、俺生まれてこの方レッカー呼んだことないんだよ。絶対直して帰ってくる」と胸を張るWAKAさん。愛車の車名だけでなく、乗り方どころか生き方までラリーのようだが、それが可能なのもかつてアメリカ滞在中にメカニックをしていたという経歴ゆえだ。
「アメリカって文化が違うよね。車検制度がない代わりに近所のおばちゃんでも自分でエンジン載せ替えたりしてるから」と、WAKAさんはいい、だからアフターパーツが豊富で、古い車も長く乗り続けられるのだという。そのノウハウとクリエイティビティは、現在出演中のシェビーバンをバンライフ仕様にセルフカスタムしていくBSTV番組『国分太一のTHE CRAFTSMEN』でも披露されている。
そんな2人が、4年の月日と手間をかけまくってここまでようやく仕上げた。どこを取っても丁寧な仕事が見られるが、特に前から後ろまで1枚の木板を曲げ加工してピシッと埋め込んだシーリングの美しさは圧巻だ。
この愛車1台で、近所の買い物から家族でのキャンプ、イベントでは仕事道具を満載して九州や東北へも走る。
「何台も愛情かけられないから、趣味も実用も全部引き受けてくれる理想の1台に乗りたいよね。車も家族だと思ってるから。もうこれ、ずっと乗るよ」 ラリーSTXも、この極東の国で理想の家族に巡り合えたようだ。
WAKAさんANEGOさんのマイカーレビュー
GMC ラリーSTX(1979年式)
●年間走行距離/約1.5万km
●マイカーの好きなところ/エンブレム
●マイカーの愛すべきダメなところ/消耗品の数が多い(足回りとかも全部消耗品)、何年かに一度は重整備やらなきゃいけない
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/定期的な重整備もいとわないアメリカンな車文化が好きな人
ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。