立体駐車場▲都市部のマンションなどでよく見られる立体駐車場。平面駐車場と比べた際のメリットとは?

車のサイズや重さなど制限が設けられている一方で、メリットも多い立体駐車場。この記事では、立体駐車場の種類や借りる際のポイントなどを解説。併せて、注意点や効率的な探し方も紹介する。
 

 

立体駐車場とは?

駐車場は立体駐車場と平面駐車場に大別できるが、立体駐車場とは駐車スペースを建築あるいは機械で多層化・立体化した駐車場のこと。さらに立体駐車場は、「機械式」と「自走式」の2種類に分けられる。
 

駐車場のイメージ図▲機械式の立体駐車場のイメージ。多層化し立体的であることが特徴だ

機械式はその名のとおり、機械装置で車を入出庫する駐車場。都市部のマンションなどで採用される傾向がある。自走式はスロープなどで各階層の駐車スペースまで自分で車を運ぶ駐車場。大規模商業施設などでよく見られるタイプだ。

対する平面駐車場は、地上・地下の平らなスペースや建物の1階にある駐車場。広い敷地を有する郊外のマンションや、コインパーキングなどで導入されていることが多い。
 

駐車場のイメージ図▲平面駐車場のイメージ。屋外にある、いわゆる“青空駐車場”も平面式に当たる
 

立体駐車場を借りるメリット

立体駐車場には“ならでは”のメリットがある。機械式と自走式それぞれのメリットを整理していこう。

機械式立体駐車場の4つのメリット

メリット1:車の劣化を防げる
メリット2:セキュリティ面で安心感が高い
メリット3:都心部でも自走式や平面と比べて賃料が安いことが多い
メリット4:都心部でも探しやすい


機械式立体駐車場は屋内に駐車しておけるため、風雨や紫外線から車のボディを守れる。利用者以外が機械を操作するケースが稀なので、いたずらや車上荒らしなどの被害にも遭いにくい。また、限られた土地でも多くの駐車スペースを提供できるため、平面や自走式よりも賃料が低く、空き駐車場を探しやすいのも利点だ。

自走式駐車場の3つのメリット

メリット1:機械式に比べると入出庫が短時間で済む
メリット2:機械式に比べると重量や車両サイズの制限は緩やか
メリット3:車の劣化を防げる


自走式駐車場は入出庫の際に機械操作をする手間がないので、待ち時間が少ない。加えて、機械式より車重やサイズが大きい車でも駐車できるケースが多い。駐車場所が屋内なら機械式同様、風雨や紫外線から愛車を守ってくれる。
 

立体駐車場▲メリットを理解したところで、次に具体的なポイントを紹介しよう!
 

【立体駐車場選びのポイント1】高さと幅の制限に注意する

ここからは、立体駐車場を選ぶときのチェックポイントを解説していく。

1つ目のポイントは、入庫する車のサイズ・重量制限。高さや幅、重さを制限している立体駐車場が多い。機械式でも自走式でも、駐車場を借りる際は駐車可能な車のサイズや重量を確認しておくのが鉄則だ。

機械式立体駐車場の場合

機械式立体駐車場のサイズ制限は場所によってまちまち。入庫できる車のサイズが自走式より制限されることが少なくない。例えば、全長5m以下×全幅1.8m以下×全高1.55m以下としている駐車場が都市部では散見される。

もちろん、新設された機械式駐車場だともう少し広いこともある。ただ、背の高い車だと高さ制限によって入庫できない事例は少なくない。また、タイヤ幅にも要注意。タイヤ幅が広い車だと、駐車場に収まらなかったり、タイヤやホイールを傷つけてしまったりするケースがある。
 

自走式立体駐車場の場合

自走式立体駐車場の高さ制限は2m~2.5mであることが多く、一部の車種を除き大型のミニバンやSUVも駐車できる。しかし、古くからある駐車場などでは、高さを1.79mで制限している自走式駐車場もある。この場合、軽自動車でも背の高いスーパーハイトワゴンなどは駐車できない。
 

自走式駐車場の高さ制限▲自走式の高さ制限も駐車場によって異なるので、入庫時は注意しよう

自走式は積載荷重も制限されており、国土交通省の定めで車量総重量が2トンまたは2.5トンまでとなっている。乗用車の車両総重量は「車両重量+乗員1名につき55kg×乗車定員数」で計算できるので、契約を検討しているなら事前に計算しておこう。
 

 

【立体駐車場選びのポイント2】機械式は種類・仕組みに注目する

機械式の駐車場は、採用される装置や仕組みによって5つに分類できる。それぞれのメリット・デメリットと合わせて、上層と下層に駐車する場合の一長一短を知り、自分に合ったタイプを見極めよう。

種類1.地上二段式

地上二段式のイラスト図▲地上二段式のイラスト(出典:国土交通省『「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き』)

パレット(台)を用いて車を上下二段に収納するタイプの駐車場。

メリットは、上段ならいたずらや盗難の危険性が低く、下段なら紫外線によるボディへのダメージを減らせること。駐車料の料金が他の機械式より安い傾向にあるのも利点だ。特に、車を2台所有しているなら上下の駐車スペースを借りることで、料金を抑えやすい。デメリットは下段の車を出庫しないと、上段の車の出し入れができないことだ。

種類2.ピット二段式

ピット二段式のイラスト図▲ピット二段式のイラスト(出典:国土交通省『「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き』)

ピット二段式は、地上二段式と同様に車を上下に配置するが、下段を地下に収納するタイプの駐車場。ピットは穴という意味で、ピットに駐車スペースが2段設置され、3層となっている駐車場もある。

メリットは下段に車が駐車されていても、上段の車を出庫できること。上段の車は出し入れしやすく、下段の車は紫外線のダメージを減らせるといった利点もある。デメリットは下段に駐車する場合、出庫時に機械を動かさなくてはならず、時間がかかること。地下に駐車されるため、大雨などに浸水被害に遭うリスクが高いこともネックだ。

種類3.昇降横行式(パズル式)

昇降横行式(パズル式)のイラスト図▲昇降横行式(パズル式)のイラスト(出典:国土交通省『「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き』)

昇降機横行式は、あらかじめ1台分の空きスペースを確保して、パレットを上下左右に動かせるタイプの駐車場。パズル式とも呼ばれる。すべての段を地上に設置するタイプに加え、下段を地下に設置するピット方式と合わせたものもある。

メリットは、駐車位置に関係なく車の入出庫が可能なこと。また、ピット式との複合型の場合、地下に収納されている車はいたずらや盗難のリスク、紫外線ダメージを軽減できる。デメリットは、パレットを上下左右に動かすため、駐車位置によっては入出庫に時間がかかること。地下に駐車している場合は、浸水被害の危険性も高まる。

種類4.垂直循環方式

垂直循環方式のイラスト図▲垂直循環方式のイラスト(出典:国土交通省『「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き』)

垂直循環方式は、タワー式駐車場の一種。観覧車のようにパレットを円形に配置し、垂直に循環させて車を出入口まで移動させるタイプの駐車場だ。

メリットはいたずらや盗難の危険性、紫外線や風雨による車へのダメージを軽減できること。デメリットは出庫するまで時間がかかり、稼働時の騒音が大きいこと。また、部品点数が多く制御が複雑なタワー式駐車場は、細かな保守点検が必須。保守点検のタイミングによっては、入出庫の時間をずらすなど配慮が求められる。

種類5.エレベーター方式

エレベーター方式のイラスト図▲エレベーター方式のイラスト(出典:国土交通省『「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き』)

エレベーター方式も、タワー式駐車場の一種。駐車室と自動昇降装置を組み合わせて、立体的に駐車できる。

メリットは、屋内駐車であるため、いたずらや盗難の危険性、紫外線や風雨によるダメージを低減できること。加えて、垂直循環方式と比べ、一般的に入出庫の時間が早く、騒音が小さいのも利点だ。デメリットは、タワー式駐車場なので、保守点検のタイミングに配慮が必要なことだ。
 

 

【立体駐車場選びのポイント3】事故・災害のリスクを確認する

立体駐車場では、事故が発生したり災害時に被害を被ったりする例もある。借りる前にリスクも念頭に置いておきたい。

機械式の事故は機械による事故に要注意
国土交通省の『「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き』によると、機械式駐車場では1997年~2016年6月末までに少なくとも32件の死亡・重症事故が発生。そのうち12件が死亡事故になっている。

機械式駐車場の事故発生状況は下記のとおりだ。
 

装置内に人がいる状態で機械が作動 12件
人の乗降・歩行時の転倒・落下 6件
作動中の装置に侵入・接触 7件
車両の入出庫時の衝突 6件
装置の非常停止 1件
装置内に人がいる状態で機械が作動 12件
人の乗降・歩行時の転倒・落下 6件
作動中の装置に侵入・接触 7件
車両の入出庫時の衝突 6件
装置の非常停止 1件

機械操作に関連する事故が全体の6割以上を占めている。機械式駐車場は「動く機械」そのもの。子供にとっては興味を引かれるものであるため、子供のいる家庭はより留意しておきたい。

■機械式駐車場の具体的な事故例
・稼働中の装置内に子供が立ち入って挟まれる
・入庫後、運転者が外から装置操作をした際に残されていた同乗者が機械に挟まれる
・駐車場の前面ゲートの上昇時に、乗降のためのチェーンに同乗者の手が挟まれる

なお、自走式立体駐車場でも下記のような事故例が発生している。万が一の際を避けるためにも、細心の注意を払おう。

■自走式駐車場の具体的な事故例
・駐車場内での人身事故 ・他の車との接触 ・スロープの勾配で車の下側を擦ってしまう

災害に備えて管理体制や耐震性を確認

自走式・機械式に関わらず、地下の駐車場は排水ポンプの限界を超えると浸水する恐れがある。管理者が機械を操作して地下の車を一時的に地上に上げてくれる機械式駐車場もあるが、こうした緊急措置は契約や管理・運用体制による。

最近では、台風だけでなく豪雨発生の頻度が高まっているので、機械式駐車場を借りる前には管理会社の体制や、各自治体の洪水ハザードマップはチェックしておこう。

また、耐震性にも注意が必要だ。東日本大震災ではエレベーター式立体駐車場で、駐車室からパレットが落下する事故が起きた。これを受けて、最近では耐震性を高めた機械式立体駐車場も登場しているので、注目すると良いだろう。
 

 

【立体駐車場選びのポイント4】料金や出し入れのしやすさなどを確かめる

駐車場選びでは当然、コストや日常での使い勝手も忘れずにチェックしよう。自分のライフスタイルに合っているか、不便なく利用できるかを確かめておきたい。

■駐車場の契約前に確認すべき主なポイント
・駐車料金
・出し入れのしやすさ
・両隣との間隔
・目的地や自宅からの距離
・駐車場の立地
 

 

立体駐車場を効率的に探すコツ

実際に立体駐車場を探し始めるなら、どういった探し方があるのかを知っておこう。自分のニーズにマッチした駐車場と出合える可能性が高まるはず。

月極駐車場を借りる際は「ネット検索」「不動産仲介業者への問い合わせ」「現地で自分で探す」といった3つの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがある。
 

方法 メリット デメリット
ネット検索 あまり手間がかからない 掲載情報が古い可能性がある
不動産会社への問い合わせ ネットに出ていない情報を入手可能 ネットより情報が少ないこともある
現地で自分の足で探す 個人運営の駐車場も見つかる 非常に手間がかかる
方法 メリット デメリット
ネット検索 あまり手間がかからない 掲載情報が古い可能性がある
不動産会社への問い合わせ ネットに出ていない情報を入手可能 ネットより情報が少ないこともある
現地で自分の足で探す 個人運営の駐車場も見つかる 非常に手間がかかる

駐車場が空いたらメールなどで紹介してくれるサービスもあるので、そういったサービスを利用するのも一つの手だ。

ただ、いずれの探し方でも月極駐車場を借りる際は、必ず現地に出向くこと。入出庫はスムーズに行えるか、両隣との間隔が狭すぎないか、夜間を含めてセキュリティ状況はどうかなど、現地を見ないと分からないことが多いからだ。
 

 

立体駐車場に関するQ&A

Q.立体駐車場を契約する流れは?
A.月極立体駐車場を借りる場合には、駐車場のオーナーと契約する必要がある。一般的な流れとしては「利用申込書提出→審査→契約手続き→初期費用の支払い→駐車場利用開始」となる。

Q.立体駐車場の契約に必要なものは?
A.一般的には「車検証」「免許証のコピー」「印鑑」「緊急連絡先」「初期費用」「銀行の通帳・実印、またはクレジットカード」が必要。駐車場によっては「印鑑証明のコピー」「任意保険証のコピー」「収入証明のコピー」などを求められることも。これは平面駐車場でも、ほとんど変わらない。

Q.立体駐車場を借りるための初期費用は?
A.平面でも立体でも月極駐車場の初期費用は賃料の3~4ヵ月程度が相場といわれている。内訳は前家賃1ヵ月分、敷金1~2ヵ月分、仲介手数料1ヵ月分。仲介手数料がない場合や、オーナーへの礼金が発生する場合もある。

Q.立体駐車場の使い方は?
A.自走式立体駐車場の場合は、平面駐車場と変わらず駐車スペースまで自分で運転する。機械式立体駐車場の場合は、まずパレット(台)まで車を移動させる。次にサイドミラーをたたみ、荷物を取り出す。最後に、周囲や車内に人がいないことを確認してから、装置を自分で操作する。商業施設などの場合は、装置操作を係員が行う場合が多い。

Q.立体駐車場のサイズがギリギリでも問題ない?
A.車のサイズが駐車場の制限ギリギリなのは、なるべく避けた方が良い。入出庫が難しくなるし、駐車の際にタイヤホイールを傷つけるリスクなどが増加するためだ。
 

文/綱島剛(DOCUMENT) 写真/Adobe Stock

※記事内の情報は2023年2月28日時点のものです。