「ぶるぶる」「がちゃがちゃ」しながら、10年間ファミリーカーとして活躍するパオ
2022/11/29
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
息子の成長を見守ってきたファミリーカー
島崎広史さんがスマホで見せてくれた写真の中のパオは、家族の一員だった。河原にバーベキューに行った時に撮ったというその写真は、青空を頂くタープの下に島崎家の親子3人、その奥にパオがいる。
「なかなか似合うんですよ」と、島崎さんがうれしそうに言った。
アウトドアとも相性がいいという意味だったようだが、島崎家とパオの似合いっぷりに、大いにうなずいた。これぞ真のファミリーカーだ。
パオは10年前から島崎家の一員なので、9歳になる息子の道唯くんは生まれた時からパオと一緒だ。
ゴトゴトぶんぶんいう中で、ハンドルをクルクル回して上げ下げする窓や、レバーをグイッと押して開ける三角窓を通して景色を見たり風を浴びたりして大きくなってきた。
飛行機で熊本旅行した際にはレンタカーで今どきのコンパクトカーに乗ったものの、「ちょっと酔っちゃったみたいなんですよね」と広史さんが教えてくれた。「乗りづらかった。パオの方がいい」と、道唯くんがいとおしそうにパオを見やる。
お父さんの広史さんもまた「最近の新しい車はちょっと怖い」と笑う。「走ってる感じもよくわかんないんですよね。ぶるぶるっていうのが伝わってきて、がちゃがちゃっていうのがないと」と、左手でマニュアルシフトの動作をしてみせた。
聞けばこれまでの愛車もみなMTだったそうだ。
日常の道具としても活躍
友人から安く譲ってもらって仕事の足としていたダイハツ ミラが壊れてしまい、次の車を探したのが10年ほど前のこと。当時デビューしたてのホンダ N-BOXなどを検討するも、まったくテンションが上がらない。
そんな時、ふと気になったのがパオだ。じつはミラの前にはクラシックミニのスタンダードモデル、メイフェアを気に入って乗っていたが、故障が多かったために仕事で使うのは難しいと断念した経緯もある。
その点、国産車ならば安心なのではないかと踏んだ。近所にパイクカー専門店を見つけ、実車を見たら即決だった。
アイボリーの一番シンプルなモデルのMT車。ミニもミラもマニュアルだったから、慣れたものの方がいいと思った。
広史さんの趣味は、ロードバイクにDIYにキャンプ。それらにまつわる道具も好きだというから、ちょっと古い車ならではの手応えを心地よく感じるのもなるほど合点がいく。
パオのダッシュボードは広史さんの手できれいに張り替えられていて、目下キャンプ道具を積むルーフキャリアも作成中だそうだ。
そう、パオは大切にされていると同時に、しまい込まれることなくしっかり仕事をしている。このあたりも広史さんの「使ってこそ道具」という感覚が生きているのかもしれない。
あまり遠出ができなかった時期には、個人間カーシェアリング「エニカ」にも登録して、大切に乗ってもらえそうな人に乗ってもらってきた。古い車だけにパーツの供給が気がかりだという。
「もう何かない限り、最後までずっと乗っていきたいと思ってます」
島崎家とパオのますますの健康と活躍を祈りたい。
▼検索条件
日産 パオ(初代) × 全国島崎さんのマイカーレビュー
日産 パオ
●購入金額/約70万円
●年式/1989年
●年間走行距離/6000km
●マイカーの好きなところ/愛くるしい見た目
●マイカーの愛すべきダメなところ/燃費が悪いところ、荷物が積めないところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/かわいい車が好きな人
ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してから次期愛車を物色しつつ、近年は1馬力(乗馬)に夢中。