唯一無二のトヨタ MRスパイダーを手に入れ、自分自身が大きく変わった!
2022/09/20
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
唯一無二の車が人生を変えた!
「じつはお母さん、昔MR2乗ってたのよ」
それは小学生の糸川少年が母親から聞かされた、いわばMR2沼の入り口を開く呪文だった。
日本初の量販型ミッドシップとして知られるトヨタ MR2。その初代はAW型、2代目はSW型と呼ばれるが、お母さんはAWの自然吸気エンジン車とスーパーチャージャー付きエンジン車の2台を乗り継いだのだという。
「MR2 !? うわあ、まじか!」
小さな頃から車好きだった糸川少年に衝撃が走った。その時からずっと、いつかきっとMR2に乗るんだと心に決めてきた。
大学生になって初めての愛車としたのはSW。初代AWに強い憧れがあったものの、すでに値上がりが始まっており、維持費も学生の身にはハードルが高かったためだ。
その後就職して1年目に手に入れたのがこのMRスパイダー。
SWをベースにトヨタテクノクラフトがオープン仕様にした特装車で、試作車を含めた総生産台数は92台という希少車だ。
中でも糸川さんの愛車は8台だけ生産されたV型ベースで、しかもV型専用色のベージュマイカメタリック。まさに世界に1台しか存在しない唯一無二の車だ。
「なんといってもスタイリング。とくに斜め後ろから見たスタイリングは、もう本当に大好き。それに屋根を開けて走ったときの開放感と、真後ろから響くエンジン音! 最高に気持ちがいいです」
この車に乗っているのは糸川さんだけということもあり、街中で「糸川さんですよね、ツイッター見てます」などと話しかけられることもよくあるそうだ。
そんなわけで、このMRスパイダーに乗るようになってから、「何もかもが変わりました。人間関係も広がったし、自分そのものが広がった」という。
目の前の社交的な印象の糸川さんが、以前は内気で初対面の人と話せなかったというのが信じられない。
週末は決まって、背中から響くエンジン音と音楽を聴きながら、オープンエアドライブを楽しむ。
今したいことは愛車のために家を建てること
そんなMRスパイダーとの生活には大満足しているのだが、その一方で、なんと4年前には念願のAWも手に入れ、着々とレストアを進めてきたのだという。
やっと完成したところだというピカピカのAWは、これまためずらしいワインレッドをまとっている。
聞けばSAABのオプションカラーである「メルローレッド」をセレクトしたオールペンだそうで、「エッジが際立つボディカラーにしたくてこの色にたどり着いたんですが、狙いどおりでした。ホイールも含めて、この見た目は僕の“好き”が詰まってる」とうれしそうに語った。
エンジンもきっちりチューンナップが施され、「加速感はスパイダーよりも断然軽やかで、ちょっと手に余るくらい」の仕上がり。
ゆくゆくは内装にも手を入れて、タンカラーにしたいともくろんでいる。純正を貫いているMRスパイダーとは対照的に、徹底的に自分好みのAWを追求しているようだ。
子供の頃からの夢を、かつて夢見た以上の大きさでかなえてしまった今、これからしたいことは?と聞いてみた。
「この車たちを納める家を建てようと思って、土地を探してます。そりゃ結婚できないよなって思いながら」と言いつつ、まんざらでもない様子でうれしそうな笑顔を見せた。
糸川さんのMR2沼人生は、どこまでも深く楽しそうだ。
糸川將人さんのマイカーレビュー
トヨタ MRスパイダー(初代)
●購入金額/約240万円
●年式/1998年
●年間走行距離/約10,000km
●マイカーの好きなところ/すべて好きですが、特に開放感とスタイル、後ろから聞こえてくるエンジンの吸気音
●マイカーの愛すべきダメなところ/強いて挙げるなら雨漏り、剛性の低さ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/運転そのものを楽しみたい人、人と違った鋭い感性を持った人
ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してから次期愛車を物色しつつ、近年は1馬力(乗馬)に夢中。