愛車は古材で仕上げたトヨタ ライトエースバン。サーフィンをこよなく愛する自由なサラリーマン
2022/09/21
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
働き方が変わったことがきっかけ
このところよく耳にするのが「バンライフ」という言葉。車(バン)に生活道具一式を積み込み、放浪しながら暮らすミニマルなライフスタイルのことだ。
ルーツは1960~70年代のヒッピーカルチャーと思われるが、近年、こうした車中泊生活を現代的でスマートな生き方として発信するインフルエンサーが数多く現れ、世界中の人々に影響を与えている。
もっともバカンス文化のない日本でバンライフを実践できる人はそう多くなく、どちらかというとおしゃれな自作キャンピングカーといった意味合いが強い。
だが、大手アウトドア用品メーカーに勤める太田さんは、そんな数少ないバンライフの実践者だ。
それも会社員として働きながらだというから興味深い。
約3年前に購入したライトエースは外観こそノーマルのままだが、内部はウッドを多用する今どきのバンライフ仕様にカスタマイズされていた。
「サーフィン用品の営業をしている関係で、日本全国のサーフショップへ行く必要があるんです。お店の多くは郊外の海沿いに立地しているので、それだったら車で寝泊りしつつ、現地でそのままデスクワークができると便利だなと思って、この車を手に入れました。コロナ禍以降、会社がリモートワークを推奨するなど、働き方が変わったことも大きかったですね」
定番のハイエースではなくライトエースにした理由は、コンパクトで狭い道でも取り回しやすいのにサーフボードを悠々と中積みできるから。
営業先のショップのスタッフと一緒にサーフィンを楽しみながらコミュニケーションを図ることも多く、サーフボードは業務上のマストアイテムなのだとか。
アンティークな雰囲気で統一されたインテリアはサスティナビリティを意識し、古材で家具などを制作している友人に依頼したという。
例えば、天井に張ってある板はもともと体育館の床に使われていたもの。木材だけではなく金属部品も表面にさびが浮いた古材が用いられている。
独特の「枯れた」風合いは、ビジネスホテルのような市販のキャンピングカーの意匠とはまったく異なり、海岸の風景に違和感なく溶け込む。
大容量のモバイルバッテリーやポータブル冷蔵庫、カセットコンロなど、生活に必要なものはひと通り常備されているので、1年を通してバンライフが可能だという。
見た目が完全ノーマルなのには理由が
ちなみに、外観にまったく手を入れていないのには理由が。
「旅先では仕事と趣味を兼ねてサーフィンをすることも多いのですが、ポイントを探して海岸沿いを回ったり、良い波を待って車内で待機したりすることも。もちろんルールは守っていますが、悪目立ちして地元の人に不安を与えないよう心がけています」
ボディにはステッカー1枚すら貼っておらず、さびやへこみもそのまま。まったくの業務用にしか見えない完璧なステルス性である。
「内装や家具は海外のバンライファー(バンで生活している人)を参考にしつつ、一から作ってもらいました。調理もできるよう収納式のキッチンテーブルなどもオーダーしてしまったので結構な手間がかかったと思います」
一見するとラフなイメージだが、細部をよく見るとダボを使ってビスの頭を隠してあるなど、素人のDIYとは一線を画す丁寧な仕上がり。
さらに外装はもとのシルバーのままなのに、車内の鉄板はペイントが施され、雰囲気を壊さないよう配慮されている。
セカンドシートは外さずに残してあり、仕事以外の日は2人のお子さんを乗せて出かけるファミリーカーとしても活躍しているという。
「今では高知や宮崎あたりもこの車で行きます。コロナ禍で会社の就業スタイルがかなりフレキシブルになったので、朝イチでオンラインミーティングをこなしたら、一度海に入ってそれからデスクワークを始めるみたいなこともよくありますね(笑)」
なんとも自由で羨ましい働き方である。他の社員の皆さんも同様の働き方をされているのか聞いてみたところ「いや、僕は特殊な部類だと思います」と太田さんは苦笑交じりに返答してくれた。
太田知宏さんのマイカーレビュー
トヨタ ライトエースバン(6代目)
●購入金額/約80万円+カスタム費約40万円
●年式/2012年
●年間走行距離/約30,000km
●マイカーの好きなところ/小回りが利くのに、サーフボードもしっかり車内に積み込むことができる収納力の高さ
●マイカーの愛すべきダメなところ/商用車なのでシートの座り心地は……(笑)
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/僕のようなサーファーの方はもちろん、アウトドアが好きな人にはオススメです!
ライター
佐藤旅宇
オートバイ専門誌と自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30と日産 ラルゴの他、バイク(トライアンフ)とたくさんの自転車。